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■春洪(1)
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(C) Eriko Kawaguchi 2023-02-10
6月14日(火).
ハンガリー国内の地方都市、ホードメゼーヴァーシャールヘイ (Hódmezővásárhely) での水泳日本代表の合宿は終了した。
選手たちは、バスでブダペストに移動して、選手宿舎または市内のホテルに宿泊する。
世界選手権に出ない選手は日本水連が押さえた観客席で世界水泳を見学する。
但し、見学しないで帰国して練習したい!という選手、また所属クラブから感染危険回避のため見学せずに帰るよう指令が出ている選手は後述のルートで帰国する。
6月15日(水).
分離合宿組の移動が行われた。移動は、ムーランが元々ドイツで登録して、ヨーロッパで運用していた Cessna Citation Jet C14 (乗客定員8名)と Canadair CRJ700 (乗客定員70名)を使用して行われた。
LBG->VIE パリ組 (CRJ700)
GRX->VIE グラナダ組 (C14)
世界水泳に出る選手が合宿しているこの2ヶ所から、CRJ700とC14でメンバーをウィーン空港に運んだ。
パリ組13名(コーチを含む)は「こんな大きな飛行機に俺たちだけ?」と落ち着かない様子だった。
一方のグラナダ組は定員に近い。
「ホンダジェットより少しだけ広いね」
「でも定員はほぼ同じ!」
「まあホンダジェットの7名というのはコーパイ席とトイレ席にも人を乗せた場合だから」
「これはキャビン席6と補助席2か」
(コーパイ席にも客を乗せると実は9人乗る:この飛行機は通常クルー2名で運航するが、1名でも飛ばせる。ムーランは念のため副操縦士も乗せて2名運航にした)
「でもトイレ自体はホンダジェットの方が広い」
「その代わり、こちらは洗面台が付いてる」
補助席には(選手ではない)南野里美が座る予定だったが、筒石が
「女性をそんな所に載せられない」
と言って自分が補助席に座ったので、座席はこのような配置になった。
後ろ向きの席:川上・南野
それと向かい合う席:金堂・竹下
その後ろの席:山先・星田
向かい合う4席に女性4人が座る形になった。補助席の筒石の横には空席がある。青葉は多分そこにマラが乗ったなと思った(そのために筒石は補助席を選んだのでは??)。
ウィーンに移動した20名は、ウィーン郊外にあるZZ社の友好企業が所有するプールで練習することができる。実はウィーンは国境をまたぐものの、ブダペストに、とても近い場所にある。道のり240kmほどで約3時間で移動できるので、ここでギリギリまで待機するのである。
(国境は跨ぐが、万一コロナか戦争で国境が閉鎖される事態が起きたら、きっと大会も中止されているし、その時はどう考えてもブダペストよりウィーンが安全)
ここのプールは短水路10レーンで、これをグラナダ組6人とパリ組12人の合計18人の選手が共用することになる。24時間使用できるようにしているが、9人ずつ3時間交替で使用することにした。
なお、青葉は“マラ”に
「筒石さんに、絶対宿舎を汚させないようにさせて」
と厳命した。
「グラナダの宿舎ごめんねー。掃除できる?」
「あれは修復不能だから、ユニットまるごと交換する」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
人間のマソのほうはきちんとした性格だが、幽霊のマラはわりと適当な性格である。だから筒石と合うのだろうが。
マソは筒石には全く興味無いし、別の男と結婚すると宣言している。ただ自分の子供を産んだ後なら、筒石の子供をマラの代わりに人工授精で産んであげてもいいと言っている。
しかしどうしたらベッドの脚が折れるのか理解できない!床には焼け焦げもあったし、カップ麺のお湯を床にそのまま流していたっぽくて、匂いが酷く清掃不能と思われた。
ま、最初からユニット交換するつもりだったけどね!
ユニット交換作業は世界水泳の後、7月くらいにやると千里姉は言っていた。
一方、マルセイユ組とフランクフルト組で、世界水泳を見学する選手(2名+6名)は6月12日に、C14をマルセイユ(MRS)→フランクフルト(QEF)→ウィーン(VIE)と運航してウィーンに運び、そこからムーランが手配したバスでブダペストに入って、水連が手配しているホテルに泊まった。
なお QEF はフランクフルト・エーゲルスバッハ空港である。フランクフルト近郊にある小さな空港で滑走路も1400mしかないが、C14は離陸滑走路長が1039mで済む(*34) ので利用できる。
(*34) 民間航空機の離陸に必要な滑走路長は、着陸に必要な滑走路長より長い。これは離陸のための滑走をしている最中に何かのトラブルで離陸を中止しなければならなくなった時に、安全に停止できる距離が必要であるため。だから航空機のスペックでは通常、離陸に必要な滑走路長のみが記載されている。ちなみにC14の着陸滑走路長は896mである。この長さのある飛行場になら着陸できるが、離陸する時はバクチになる!
帰国する選手・スタッフたちの移動はこのように行われた。
6月7日、カネ・タン・ルシヨン組の多くがブダペストに移動する日、帰国する予定の選手・スタッフはバスで3時間ほど掛けて、マルセイユに移動。市内のホテルに宿泊した。
アンドラ組は世界水泳出場者のみである(マルセイユに移動した場合、3時間で行ける)。
6月11日、フランクフルト組で帰国する選手・スタッフ7名は、フランクフルト・エーゲルスバッハ空港からC14でマルセイユに移動し、ホテルに入った。
6月12日、マルセイユ組で帰国する、津幡組の福山と広島、ZZスポーツクラブの永井・七剣、STスイミングクラブの田口の5名は、千里自身が運転するマイクロバスでマルセイユ空港に移動した。そして前日までにマルセイユに集まっていた帰国組とともに、ムーランのA330に乗って帰国した。
「あ、千里さんも一緒にご帰国ですか?」
「そうそう。国内の仕事が溜まってるみたいだから」
「大変ですねー」
などと話していたが、この“千里”は実はヨーロッパで本物の千里(2B)をサポートしていた朱雀(すーちゃん)である。帰国したら半月ほど休みをもらえることになっている。「この1ヶ月ほど大変だったなあ」と彼女は思っていた。
「でも私たちフランスまで来て、何も観光しないでひたすら泳いでいたって、ストイックね」
などと永井たちは言っていた。
「グラナダは男女半々だったらしいけど、マルセイユは女ばかりだから気兼ねも無かったしね」
「なんかそれをいいことに、裸で歩き回ってた子がいたけど」
「裸で泳いでいる子もいた」
「夏鈴、入出国審査の時に係員が少し悩んでたね」
「男に見えるのにSEX:Fと書かれているからね」
「でも最近そういう人多いし」
「パスポートの写真も丸坊主だから問題無い」
夏鈴が頭を丸刈りにしているのは男になりたい訳ではなく、水泳のスピードアップのためである。
「夏鈴、美容師さんに髪を切ってもらう時も、美容師さん、最初はてっきり男の子と思ってて、途中で女と気づいて『なんで丸刈りなの〜?』と驚いてたね」
「それは日本でも日常茶飯事」
「でも夏鈴のロングヘアとかを想像できない」
「私、中学の時からこれやってるから、競技引退した後、ちゃんと女に戻れるか自信が無い」
「何ふざけてセーラー服とか着てるの?ちゃんと男子制服に着替えなさいと先生から言われてたとか」
「ごく普通の日常風景」
「女子トイレ使ってて警察に逮捕されたことも何度かあるという噂が」
「女と分かったら解放してくれたよ」
「オナベバーに勧誘されたという噂も」
「水泳の練習してたいから断った」
「夏鈴、女の子と結婚すればいいよ。奧さんになりたいという女の子はたくさん居るよ」
「私、女の子からのファンメールばかり」
選手を集める場所にマルセイユが使われたのは、フランクフルトのような大空港を避けたのと、数の多いカネ組が短時間で来られるからである。そしてフランクフルト組はエーゲルスバッハ空港が使えた。大都市の近くで小さくプライベート機が使いやすい空港はほんとに便利である。
Flight Schedule
6.07 A330 PGF -> BUD (カネ組)
6.10 CRJ700 BCN -> BUD (アンドラ組)
6.11 C14 QEF -> MRS (フランクフルト帰国者)
6.12 A330 MRS -> HND (帰国)
6.12 C14 MRS -> QEF -> VIE (フランクフルト・マルセイユの見学者)
6.15 CRJ700 LBG -> VIE (パリ組選手等)
6.15 C14 GRX -> VIE (グラナダ組選手等)
ハンガリーは、中央ヨーロッパの共和国である。
漢字では「洪牙利」と表記され、「洪」と略される。
北にスロバキア、北東にウクライナ、東にルーマニア、南にセルビアとクロアティア、南西にスロベニア、西にオーストリアと国境を接している。
かつてはハプスブルク家の支配を受け“オーストリア・ハンガリー二重帝国”となっていたが、第一次世界大戦後、ハンガリー人民共和国、ハンガリー・ソビエト共和国などという混乱の時期を経てトリアノン条約により、ほぼ現在の国境が画定した。この時、領土が随分狭くなり、ハンガリー人の半数が“海外”に取り残される結果となって、かなりのパニックが起きている。
“ハンガリー王国”という国王の居ない不思議な王国の時代を経て、第二次世界大戦後は、ハンガリー共和国(第二共和国)となってソビエト連邦の衛星国に。ソ連崩壊後、1989年に民主主義が回復され、ハンガリー共和国(第三共和国)となる。1999年NATOに加盟、2004年にEU加盟、2007年にはにシェンゲン圏に入った。2011年に国名をハンガリー共和国からハンガリーに変更している。
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