【体験取材】(上)

目次
 
生来の適当な性格で、大学4年の12月中旬になって「君、論文がまだ出てないんだけど」と指導教官から言われ「論文って何ですか?」と訊いて絶句された。
僕はそれから必死で卒論を書き、お情けで3月卒業にしてもらったが、最後の方はそんなことやっていたので、当然就活なんてできなかった。
 
3月下旬に卒業式を終えてから「あ、仕事見付けなきゃ」と思う。学生課で尋ねて呆れられる。こちらではもう来年の卒業生の分しか紹介できないので職安に行きなさいと言われて職安に行くが、文学部卒なのに英検も4級しか無いし、TOEICなんて受けたこともないし、簿記もできないし、運転免許さえ持ってないというので職安の人も悩む。
 
「ここ行ってみる?」
と言われて老人福祉施設の介護の仕事に行ってみたが3ヶ月で退職した。自分には無理だと思った。
 
若い男ということで、腕力を要する仕事に期待された感じがあったが、老人どもの腕力がハンパ無いのである。70歳を過ぎていると思われる認知症+統合失調症の女が自分には制御できなかった。凄まじい力で暴れるので何度も殴られたし数回気を失って他のヘルパーさんに介抱されたこともある。ひっかかれるのは日常茶飯事で生傷が絶えなかった。これはこちらが身体壊すか(相手を制御するのに暴力を使ったと言われて)逮捕されるかの択一だと思って、強引に辞めさせてもらった。
 

「このあとどうすっかなあ」
と思い、電車の棚に載ってたスポーツ新聞を取って何気なく見ていたら「社員募集」
という広告がある。それで、その新聞社に電話してみたら「取り敢えず来てみて」
というので行ってみる。
 
後から考えたらスーツでも着て行きゃ良かったと思うのだが、僕は何も考えずにポロシャツとジーンズという格好で行ってしまった。面接してくれた部長さんにも 
「ラフな格好ですね」
と言われたものの、僕が「済みません。移動中に新聞を見て気づいて連絡したもので」
と言うと「通勤の時はちゃんと背広着てくださいよね」
 
とだけ言って、後は色々会話した上で簡単なペーパーテスト(現在日本の首相は誰ですか?とか、愛知県の県庁所在地は何市?とか、水を作る元素は何と何?などといった常識的な問題)を受けさせられてから 
「じゃ仮採用で。3ヶ月試用期間のあと良ければ本採用」
と言ってもらえた。
 

それで僕はスーツ持っていなかったのを安売り店で8000円のスーツを買って、そのスポーツ新聞社に勤めることになった。8月初旬のことである。
 
基本的に使いっ走り、記事の入力、校正(一応文学部卒というのを期待された感じ)、それに後は電話受付やお茶くみ・食器洗いなどである。お茶くみは女子社員たちもしているが、元々女子の少ない職場(採用しても多くがすぐ辞めてしまうらしい)なので、おかげでお茶・コーヒー・紅茶を入れるのが随分うまくなった気もする。
 
しかしスポーツ新聞なんて、あまり見たことが無かったのだが、すげーといつも思っていたのが、セックス面の記事である。
 
エロ小説とか、際どい写真なども載っているが、風俗店などに「体験取材」した記事は「ひゃー」と思って見ていた。「愚息も昇天」って、つまりあれがああなるってこと?そんなの堂々とこんな所に書いていい訳〜? 
「これ仕事で、女の子と気持ちいいことしてるんですか?」
と僕は先輩の田島さんに訊いてみた。
 
「まあ仕事半分、趣味半分じゃね?」
と田島さんは答える。
 
「契約記者の記事が大半だけど、俺も体験取材何度かしたことあるよ」
「へー!」
 
「最近は直接タッチせずに女の子が着衣のまま男に馬乗りになって股間をすり付けるとか、服の上から触るだけとか、生殺し的なのが多いけどさ。俺が一度行ってきたのでは、ちゃんと口に咥えて逝かせてくれたよ。ゴム付きだけどね」
 
「くわえるって・・・」
「まさか、お前フェラティオって知らないの?」
「調べてみます!」
 
それで僕はネットで調べてフェラティオの意味を知って愕然とした。あそこを女の子が口に咥えて舌で舐めるなんて、そんなのがありなの!?と驚いた。
僕は高校時代も大学時代も恋愛なんてしたことなかったし、そういうのには全く無知だったのである。そもそも風俗とソープの違いもよく分からずに当時は仕事をしていたのであった。
 

10月になって、最近けっこう新しいスタッフが増えたから新入社員歓迎会をしようなどという話になる。
 
どうも僕もその「新入社員」の中にカウントされていたみたいで、新入社員はみんな何か芸をしなければならないと言われる。
 
畑山君・川原君・山田君はバンドをやると言った。僕も誘われたのだが、「ごめーん。僕、ギターも弾けないし、歌も下手だし」
と言って断る。
 
桜井さんと柿沼さんは漫才をやるという話だった。森本君は手品を披露、林君はサッカー選手で、サッカーのボールを使った何か芸をするらしい。金崎君は民謡を習っているとかで三味線の弾き語り、木立君は絵が得意ということで当日はスケッチブックとサインペンで皆さんの似顔絵を即興で描きます、などと言っていた。
 
僕は何も芸が無いので悩む。
 
学校の成績は体育も音楽も図工(美術)もいつも1だった。高校では音楽を選択したがお情けで赤点ギリギリの点数で単位をもらっていた。
 
僕が悩んでいると、田島先輩が「うーん。じゃお前、これやれ」
と言ってセーラー服を渡された。
 
「何するんですか?」
「コスプレだよ」
「コスプレって?」
「お前、これ着て女子中生に扮して、みんなに酌して回れ」
「ひぇー!」
 

それで社内の会議室を借りてちょっと着てみたものの、鏡に映った姿を見て気持ち悪くなる。何このできそこないのオカマみたいなのは〜? と思うがチェックしてくれた田島さんは 
「まあ、こういうオカマは時々いるよ。取り敢えずお前、足の毛は剃った方がいい」
 
それでカミソリを買って帰って、自宅アパートで剃ろうとしたのだが、全然剃れない! これどうやったら剃れる訳〜? と困る。カミソリで体毛を剃るのは結構要領がいるのだが、当時そんなことは知らなかったのである。かなり悩んだ末に、毛をハサミで切った上で、最後は電動ヒゲ剃りを使って剃ってしまったが、剃る時刃に毛が引っかかって凄く痛かった。
 
それで出て行って当日、会場の居酒屋のトイレ(むろん男子トイレ)で背広とズボンを脱ぎ、セーラー服を着て、渡されたカツラ(付け方がよく分からないので取り敢えず頭に乗っけた)を付ける。
 
ちょうどそこに知らない男性客が入ってきてこちらを見るとギョッとした感じ。
 
「ごめん!」
と言って飛びだしていくと、少しして「キャー!」
という女の子数人の悲鳴が聞こえた。
 
何かあったのかなと思いつつ男子トイレから出て行くと、桜井さんが居る。
 
「田島さんからちょっと手伝ってやってと言われたのよ」
と言い、お化粧されることになる。
 
「眉毛が太いんだよね。これで女に見えないから細くしていい?」
と訊かれる。
「うん。いいけど」
それで桜井さんは僕の眉毛をハサミで切り、少しカミソリで剃ったようである。
そのあと、化粧水・乳液を付けられ、リキッドファンデーションを塗られた上でアイカラーを施される。これが何種類ものパレットのようなもので入れていくので、女の子たちはよくこんな面倒なことやってるなあと思った。そのあとアイライナーを入れられるが、これが目の縁ギリギリに入れられるので凄く怖い! マスカラを塗られて、ビューラーでカールを付けるのだが、これがけっこうまた怖いし少し痛い感じである。
 
その後チークだが、これもまた2種類のチークカラーを使って大きな筆ではたくように付けられる。最後は口紅だが、最初に細い筆で縁取りして、中を塗っていくようだ。
「イーとして」
「イー」
という感じで口を細くして、口角にしっかりと塗られる。こんな所にまで色を塗られるとは思わなかったので結構ドキドキしている。
 
「うーん。こんなものかな。あ、円山君、ウィッグがきちんとハマってない」
と言って桜井さんはカツラの留め金をきちんと付けてくれた。ちょっときつい。
たぶん女性用だから僕の頭には小さいのかもという気がした。
 
「でも可愛くなったよ。ちょっとそこの洗面台の鏡で見てごらんよ」
と桜井さんが言うので見てみる。
 
うっそー! 
そこには可愛らしい女子高生みたいな顔が映っていたのである。
 
「田島さんから円山君が女装すると聞いて、あ、似合うかもと思ったよ。女装したことなかった?」
などと聞かれる。
 
「一度も」
「このセーラー服は持ってていいらしいし、この化粧品は円山君用に買ったものだから、このままあげるね。少しお化粧、自分でも練習してみるといいと思うよ」
などと彼女は言う。
 
「さすがにセーラー服で出歩いていたら逮捕されそう」
「まあ職質くらいはされるかもね」
 
などという会話をしてから宴会会場に桜井さんと一緒に入った。
 

会場では畑山君たちがバンド演奏をしていた。音楽もあまり聴かないので誰の曲かは分からないけど、確か有名な曲だと思った。桜井さんに促されてビールを持ち、会場を回って酌をしていく。
 
最初は端に座っている部長だが、部長は「あ、ありがとう」
と言って、黙ってコップを差し出し、僕がビールを注ぐとステージの演奏を見ながら無言でビールを口に運ぶ。
 
次の課長も同様である。3人目の主任の所に来た時「君誰だったっけ?」
と訊かれる。
 
「新人の円山です。よろしくお願いします」
と笑顔で言った。
 
「円山君って男じゃなかったっけ? 女の円山も居たっけ?」
と主任。
「円山君は今日から女として勤めることになったんですよ」
と桜井さんが横から言う。
 
「へー。可愛いからそれでもいいかもね」
などと言って主任は笑っている。
 
その会話を聞いて、今酌をしてもらった部長と課長も「え?円山君だったのか。全然気づかなかった!」
と言って驚いている。
 
「こんな可愛い子、うちの部にいたっけとか思ってたよ」
などと課長。
 
「私も充分可愛いと思いますけど」
と桜井さんが主張する。
 
「うんうん。桜井さんも美人だよ」
と課長さんもフォローが大変だ。
 
「私、全然芸が無くて歌も楽器も絵もできないから何しよう?と言っていたら、これしなさいと言われて」
と僕が言うと「ちゃんとゲイができるじゃん」
などと課長さんが言っていた。
 
「課長、ゲイとトランスジェンダーは違いますよ」
と桜井さん。
 
「ごめん、ごめん。その辺は一応理解しているつもりだけど。じゃ明日からはこの格好で出てくるの?」
などと課長さんから訊かれる。
 
「22歳でセーラー服はさすがにまずいでしょうから、ふつうのブラウスにスカートかな」
などと桜井さん。
 
「うんうん。頑張ってね」
などと課長さんは言っていた。
 
えーっと、これ冗談だよね?と僕は内心少し焦っていた。
 

それで僕は桜井さんに付いてもらいながら全員に酌をして回ったのだが、何だか僕の女装は好評だったようである。みんなから「可愛い」とか「似合ってる」とか言ってもらい「明日からそれで出て来いよ」というのも何人かから言われた。
 
みんなの似顔絵を描いて回っていた木立君にはセーラー服姿の上半身の絵を描いてもらったが、サービス?で巨乳に描いてあり、僕はちょっと楽しい気分になった。
 
酌をしながら回っているとこちらも結構ビールを飲むことになる。それでトイレに行きたくなった。桜井さんにひとこと言ってトイレに行こうとしたのだが 
「ね、それでトイレ、どちらに入るの?」
と訊かれる。
 
「どっちって?」
「男子トイレ?女子トイレ?」
「僕は男だから男子トイレだけど」
「でも今は女だもん。その格好で男子トイレに入ったら他の人がパニックになるよ。私が付いてってあげるから女子トイレ行こう」
「え〜?それはさすがにまずいのでは?」
「大丈夫、大丈夫。円山君、女にしか見えないから」
 
それで桜井さんに連れられてトイレに行き、赤いスカートを穿いた女性のマークが付いたドアを開けられ、手を握られて引っ張り込まれてしまう。きゃー。僕、女子トイレに入っちゃったよ!! 
女子トイレなどというものに入ったのは初めてだ。見ると個室のドアが2つ並んでいる。小便器が無いのが凄く不思議な気がした。
 
「私、こちらでするから、円山ちゃん、そちらでするといいよ」
「うん」
 
それで個室のひとつに入りドアをロックする。まあ男子トイレにも個室はあるし大はそちらでするから個室というもの自体は分かるものの、このあとどうすればいいんだ?と思う。
 
スカートをめくって、あれをトランクスのスリットから出してしようとしたものの、それだとスカートにおしっこが掛かりそうな気がする。やはり座ってしないとダメかな?それでスカートをめくり、トランクスを下げて座ってみた。
 
うーん・・・・。
 
どうやったら出るんだ? 
いつも大をするついでに小も出る感じなので、大はせずに小だけする要領がよく分からない。いっそ大も一緒にしちゃおうかと思ったものの、今は出る感じではない。
 
うむむむ。
 
しかし小はしたい。しないまま戻る訳にはいかない。
 
かなり悩んだ末に、後ろの方は引き締めたまま、前の方だけ緊張を緩めればいいのではということに思い至る。
 
出た! この感じかぁ! 
それでホッとしたものの、最後した後をどうすればいいのか考える。立ってやる時は振って残液を飛ばすのだが・・・振ってみてもけっこう濡れたままのような気がするのである。いつもは気になってなかったのだが、ここでふと「女の子は拭くのでは」ということに思い至った。それでトイレットペーパーを少し取って拭いてみた。
 
あ、これいいね。
 
でも小便器だと、拭いたあとの紙の始末に困るからできないワザだ。
 
とにかくもそれでやっと小用を済ませ、僕は立ち上がってトランクスをあげ水を流して、個室を出た。
 

「何か時間がかかったね。大も?」
「いや、大をせずに小だけする要領が分からなくて苦労した」
「へー。個室で座ってしたことなかった?」
「無かった。立ってやるのとは全然要領が違う」
「ふーん。私は立ってしたことないから分からないな」
「女の子はそうだろうね!」
 
「あ、スカートの後ろが乱れてる」
と言って桜井さんが直してくれる。
 
「わ、ありがとう」
「スカートの後ろって気づきにくいから、次女装した時からはトイレした後は確認した方がいいよ」
「次の女装って、あまりしたくないんだけど」
「でも円山君、明日から女装で会社に出てくるんでしょ?」
「あれ冗談だよね?」
「みんなマジに取ってたりして」
「うそ〜?」
 

その後も、僕はセーラー服姿で。みんなに酌をしたり、軽い会話をしたりしてその新入社員歓迎会を過ごした。
 
終わった後、僕が着替えて来ようとしたら「円山ちゃん、そのまま帰ればいいよ」
などと言われる。
「え〜? 捕まりますよ」
「大丈夫、大丈夫」
「私たちと一緒に帰ろうよ」
などと桜井さんと柿沼さんに言われ、結局僕は彼女たちと一緒に深夜の町で一緒にアイスクリームを食べながらおしゃべりした後、タクシーで帰ることになった。僕がセーラー服を着ているのでアイスクリーム屋さんでは 
「未成年の方はこの時間は困るのですが」
と言われたものの「この子、コスプレしているだけで実際は22歳なんですよ」
と桜井さんが言ってくれて、それでOKしてもらえた。
 
「円山ちゃん、わりと童顔だから女子高生に見えたのかもね」
などと柿沼さんが言う。
 
宴会の最初のころは「円山君」だったのがいつの間にか「円山ちゃん」になっていた。
 
「今日は女の子同士ということで名前呼びしてもいいかも」
「円山ちゃん、下の名前は何だったっけ?」
「行雄(ゆきお)なんですけど」
「じゃ『ゆきちゃん』でいいんじゃない?」
「あ、結構子供の頃はそう呼ばれていたかな」
「やはり子供の頃は女の子に準じて扱われていたの?」
「違いますよー。ほんとに女装は初めてなんですよ」
「でも凄く似合ってるのに」
「これからはきっと宴会の度に女装させられるね」
「え〜?やだー」
「その内本人も女装にハマって」
「5年後には性転換して女性記者になってるかも」
「あははは」
「会社の規則に性転換を禁じる規則は無かったはずだし」
「そんなの、普通わざわざ禁止しませんよ!」
 

ともかくもその日、僕は桜井さんを『じゅんちゃん』、柿沼さんを『えみちゃん』とと呼んで《女の子3人》のおしゃべりは結局深夜2時頃まで続いたのであった。
 
結局自宅に戻ったのは3時近くである。僕はあらためてセーラー服姿の自分を鏡に映して、ちょっと可愛いかもと思ってしまった。そのまま寝る訳にもいかないからパジャマに着替えたものの、セーラー服をハンガーに掛けて壁に掛け、また木立君に描いてもらったセーラー服姿の似顔絵、そしてもらった化粧品のセットを見ていて、僕は何かこみあげてくるものがあって、ふっと大きく息をした。
 

翌日、僕はふつうに男物のスーツを着て会社に出て行ったが、みんなから 
「あれ?今日からは女子として勤務するんじゃなかったの?」
 
などと言われ、僕は笑って誤魔化しておいた。しかしこの後、僕は桜井さんと柿沼さん、それに他の数人の女子社員とも、壁が無くなったような感じがあり、気軽に声を掛け合う雰囲気になった。仕事場でも応接室にお茶を出したり、オフィス内の食器を夕方に片付けたりする作業をしている時など、けっこう「円山君」ではなく「ゆきちゃん」と呼ばれることがあった。またしばしば女子会に誘われて出て行くこともあった。
 
「ゆきちゃん、女子制服作らない?」
「要りません!」
「作るだけでも作れば?」
「そうそう。それで時々着てお茶出しとかするといいのよ」
「勘弁してくださいよぉ」
 
しかし結局彼女たちは女子数人でお金を出し合って、僕の身体に合うサイズの女子制服を作ってプレゼントしてくれた! 
そして僕は忘年会と新年会でもまた女装させられるハメになった。忘年会ではナースの衣装、新年会ではフライトアテンダントのコスプレ衣装をもらい、僕の部屋のビニールロッカーには、セーラー服と一緒にそういう衣装が並び、ほんとにこんなの着て歩いてみたいという誘惑にかられることもあった。
 
何度かちょっと誘惑に負けて部屋の中で身につけたりしたものの、さすがにそれで出歩く勇気は無かったが。
 
新年会ではお化粧を自分でやってみてと言われたので年末年始にたくさん練習して頑張ってみたが「上出来上出来」と言われた。アイカラーの付近だけ桜井さんに修正してもらい、ビューラーがうまく使えないのでそれもやってもらった。
 
たくさん練習したので買ってもらっていたDAISOのリキッドファンデが無くなってしまった。それで桜井さんに相談すると「ドラッグストアかコンビニで自分の好みのを買うといいよ」と言われたので、結局ドラッグストアで手に試供品を塗って確認した上、マックスファクターの3000円ほどするファンデを買ってしまった。ボーナスが出たあとで気分が良かったのもあるが、化粧品って高いんだなあ。女の子は大変だ、などと僕は思った。ついでに口紅もカネボウの4000円ほどのを買ってしまった。
 
この時期実は口紅を塗った時の唇の感触に少しハマりつつあったのである。
それまでやはりDAISOの口紅を塗っていたのだが、さすがカネボウのは発色が良いので、これ結構いいなと思い、自分で口紅を塗った顔を鏡に映してみてドキドキとしていた。
 

僕たちの年に入った社員で翌年春まで残ったのは、4月に入社した佐藤君・渡辺君・田中君と、途中入社の畑山君・木立君、そして僕と桜井さんの7人であった。辞めた人は20人以上である。やはり女子は定着率が悪く1週間で出て来なくなった子もいた。柿沼さんは3月末で退職し、女子社員だけ集まって送別会をしたが、僕はその席に呼ばれた。
 
「だってゆきちゃん、けっこうえみちゃんと絡んでたでしょ?」
と1年先輩の竹越さんから言われる。
 
「うん。僕も送別会に出たい気分だったから呼んでもらって嬉しかった」
と僕は言った。
 
「好きだったわけじゃないよね?」
と訊かれる。
「ごめん。僕は友だちのつもりだったけど」
と僕。
「うん。こちらも友だちのつもりで付き合ってたよ」
と柿沼さん。
 
「ゆきちゃん、恋愛対象はやはり男の人?」
「うーん。そういうのって考えたことない。僕恋愛はしたことないし」
「憧れたりすることはあるんでしょ?」
「学生時代はアイドルに夢中になってたから、現実の恋愛は無いかなあ」
「アイドルってジャニーズとか?」
「女の子アイドルだよ!AKBとかスパガとか」
「でもゆきちゃん、キスマイのメンバーを言える」
「そのくらい誰でも言えるのでは?」
「男の子たちは嵐のメンバーでさえ言えないよね?」
「そうそう。もう嵐もNEWSもKAT-TUNもごっちゃという感じ」
「へー。そういうもんかなあ」
 
「やはり、ゆきちゃんって隠れ女性指向なのでは」
「実はプライベートでは女の子してて、会社で男を装っている二重生活とか」
「いや、全然女装はしないよ」
と言いつつ、実は最近お化粧にハマりつつあるのが少し後ろめたい。
 
「そもそも面接受けに来た時もジーンズだったでしょ?もしかしたら男物のスーツとか着たくなかったからああいう格好だったのでは?って後から考えたんだよね」
などと竹越さんが言う。
 
「それは考えすぎです。あの時、なーんにも考えてなかったんですよ。会社の面接にスーツ着ていかないといけないなんて全然知らなくて。実はスーツも持ってなかったんです」
「なるほど。やはり男物はあまり持ってなかったのね」
「いや、そういう意味では・・・」
 
「でもうちの女子制服とか、セーラー服やフライトアテンダントの服とか、自分で着てみたりしなかった?」
「ちょっとだけ」
「やはりね〜」
 
「女性ホルモンは飲んでないの?」
「そんなの飲まないよ〜?」
 

しかしそれでも女の子たち、そしてどうも男子社員の間でも僕の性別は疑問視されていた感じもあった。そして4月の新入社員歓迎会でも、僕はまたまた女装させられる。今回はレディススーツを着せられた。
 
しかも今回は「女装はまず下着から」などと言われて、パンティとブラジャーにキャミソールまで着けさせられた。
 
「この下着やブラウスもあげるね」
と桜井さんが言う。
「パンティは3枚セットの、ブラは2枚セットのを買ってるから、これ洗い替えもあるし。まあパンティやブラくらい持ってるだろうけど」
「持ってないよ!」
と僕は言っておく。実はダイソーで旅行用の紙製使い捨てショーツのセットを買ってしまったのは取り敢えず内緒だ。
 
「このスーツはマジでそのまま通勤に使える服だよ」
などと竹越さんも言っていた。
 

僕は入社して1年たち、やっと取材を任せられたり、記事を書いたりすることも出てきた。僕は芸能関係の取材が多く、こちらの地域にやってきたアイドルとか歌手・バンドなどの楽屋にお邪魔してインタビューしたり、ライブのレポート記事なども書いた。音痴で楽器もできない僕がこんな取材してていいのか?と疑問を感じることはあったものの、そういう仕事をしているお陰で、何とかジャズとロックの違いくらいは分かるようになった!(最初の頃、分かっていなかったので、やはり芸能関係の取材が多い竹越さんに呆れられていた) 
佐藤君は野球、渡辺君はサッカー、田中君は政治や経済関係、畑山君は犯罪や事故などの社会関係、木立君はネットで小ネタを集める仕事、そして桜井さんは趣味関係の取材が多かった。
 

そんな中、ある日渡辺君が何だかボーっとしているので 
「渡辺君、どうしたの?」
と声を掛けると「良かったぁ」
などと言っている。目が半分うつろだ。
 
「いや、今度中州に出来た新型風俗店の体験取材に行ってきたんだよ」
「へー!」
「これ書いた記事」
と言って、ノートパソコンの画面を見せてくれる。
 
「なんかこれ過激ですね!」
「そう。体力を要するんだ。たいていの男がクタクタになって最後まで到達できない」
「あははは」
「そんで俺が行くことになったんだよ」
 
渡辺君は学生時代はラグビーをしていて体格もいいし体力もありそうである。
 
「ちゃんと決まり文句で終えることができた」
 
と彼は言っている。確かに記事の最後は『愚息も昇天』
ということばで締められている。
 
「これってホントに出しちゃうんですか?」
「当然当然。実はラストまで行くまでに先に射精しちゃうとまずいと思って最後のほうはかなり我慢してた。でもおかげで出した時は凄く気持ち良かった。
高くなかったらまた個人的に行きたいくらいだよ。ふつうの男なら体力のある奴でも最後のプレイに行く前に放出してしまうかもね」
 
「へー」
 
「円山も行ってみる?」
「いや、僕は風俗はちょっと」
「ああ。いっそ女性向け風俗の体験取材をするとかは?」
「それはまた無茶です」
 
「いや、女性向け風俗の体験取材ができる契約記者が今1人しかいないけどあのおばちゃん、もう46なんだよなあ」
「その年で頑張りますね!」
「うん。年齢隠してるけど、随分前から名前が出ているから、昔からの読者にはたいていバレてる」
「へー」
「さすがにうちの女子社員には風俗行ってこいとは言えんし」
「確かにね〜」
 
その後、佐藤君、畑山君も一度風俗の体験取材をしたようである。どちらもふだんの記事とは違う名前で署名していた。
 

そんなある日のことだった。僕は公演に来たロックバンドのライブを取材し、記事を送信してから帰ろうとしていた。もう時間が遅いので直帰していいよと課長からは言われたので、タクシー乗り場の方に歩いて行っていた時、 
「すみません」
と言って若い女性に呼び止められる。
 
年の頃は20歳前後であろうか。しかしいやにどぎつい化粧をしている。あまり化粧に慣れてないのかなあと僕は思った。僕ならこのチークはもっとボカシを入れるのに。アイライナーも厚すぎるし、などと思う。
 
「あの。良かったらちょっと付き合ってもらえませんか?お金は私が払いますから」
「へ?何ですか?」
「一緒に行ってもらえるだけでいいんです。ノルマが厳しくて」
 
それで僕は曖昧なまま彼女に同意してしまった感じになった。彼女がタクシーを呼び止めて、僕は彼女と一緒に何だかケバケバしい装飾の怪しげな店に来てしまう。
 
げっ、ここもしかして風俗店? 
と思ったものの、今更断るのは彼女に悪いような気がして、結局一緒に店内に入ってしまう。彼女はタクシーの中で僕に1万札を1枚渡して「これで払ってください」と言った。
 
それでお店のフロントで僕は1万円札を出す。すると2000円のお釣りをくれた。
そしてその女の子と一緒に個室に入ってしまう。僕はお釣りの2000円を彼女に返した。
 
「えっとどうすればいいんだろう?」
と僕は訊く。
 
「こういうお店は初めてですか?」
「うん。お店を見てびっくりした。今更逃げるわけにも行かないしと思ったから」
「ありがとうございます。同伴出勤のノルマが厳しいんですよ」
「大変ですね!」
 
僕もスポーツ新聞の記事を日々見ているせいで、そのあたりのシステムの知識だけはこの1年でできたものの、自腹切ってまで同伴出勤するとか、大変なんだろうなと僕は思った。
 
「ふつうにプレイしましょう」
と彼女は笑顔で言う。
 
「いや何もせずにお茶でも飲んで、おしゃべりだけでいいですよ」
と僕は言う。
 
「すみません。もしかしてゲイの方ですか? 声を掛けた時、ちょっと普通の男の方とは違う感じがしたんですけど」
「いや、そのつもりはないですよ。一応ノーマルかなあ」
 
「じゃ、普通通りに」
と彼女は言って、僕のズボンのファスナーに手を掛けた。
 

彼女は僕のズボンとトランクスを脱がせた上で自分はビキニの水着姿になり、僕のに避妊具を付けてくれた上で、手で揉んでくれる。彼女のビキニで全く隠れきれない胸の谷間に僕はドキドキした。しかし、他人の手でこんなことをしてもらったことがないので、あっという間に大きくなる。しかし他人の手でされているというのは「ペースが違う」のでなかなか逝けない。
 
「少し逝きにくいのかな」
「ごめん。これ自分でしていい?」
と言って僕はセルフサービスで一回逝かせてしまう。
 
「女性ホルモンとかしてて逝きにくいのかと思ったらそういう訳ではないみたいね」
「女性ホルモンはしてないですよ!」
 
「ここは手や口で逝かせるお店ですか?」
「そうですよー。オプションでAとか逆AとかソフトS・ソフトM・セーラー服・ブルマ・ナース・女装レズ・逆フェラ・オナニー鑑賞とかもありますけど。私、聖水はお断りしてます。何か抵抗があって」
 
セーラー服とかナースというのにちょっと内心苦笑する。しかし彼女の言葉にちょっと気になることばがあった。
 
「逆A? Aは分かるけど逆Aって何を入れるんですか?それに逆フェラって・・・」
「私のおちんちん」
「君、おちんちんあるの〜?」
「ごめんなさい。言ってなかったかしら。うちニューハーフ店だから」
「君、ニューハーフなの?」
「ごめんなさい。女の子と思った?」
「女の子としか思わなかった!」
 
「あの、よかったら、何かオプションさせてもらえません?」
「オプション料金は幾ら?」
「セーラー服・ブルマ・ナースは3000円、ソフトSは2000円、ソフトMは3000円、オナニー鑑賞は2000円、女装レズは8000円、逆フェラは2000円、Aは5000円、逆Aは3000円」
 
と言ってから、「お客さん、むだ毛を剃ってるのって、最初ゲイかなと思ったけど、もしかして女装趣味ですか?」
などと訊く。
 
「うーん。まあ女装しないこともないかな」
「だったら逆A試してみません?」
「え〜?」
「パートナーさんとしません?」
「いや恋人いないから」
「彼氏を作った時に、体験しておくと受け入れやすいですよ。私の細いからふつうの男の人に入れられるよりはきつくないし」
 
と彼女が言うので、僕はそれにちょっとだけ興味を持ってしまった。
 
「じゃやってみようかな。オプション料金は僕が払うよ」
「すみませーん」
 
それで彼女に3000円渡して逆Aを体験してみることにした。彼女がビキニのパンティを脱ぐと、ほんとに小さなおちんちんが付いていた。サイズは10cmあるか無いかくらいである。一応立っている感じだがあまり固く無さそう。
ほんとうに挿入可能なのだろうかと少し疑問を感じるくらいだ。
 
「まずはリラックスしましょうね」
と言って彼女は最初指に避妊具を付けた。
 

それから10分後、僕は放心状態で横たわっていた。
 
最初大量の液体が出てきた時、僕は再度射精したのかなと思った。でも普通の精液とは違う気がした。
 
「あ、潮吹きしましたね」
と彼女が言った。
 
「潮吹き?」
「男の人でも潮吹きできるってこと知らない人が多いですよね」
「へー!これ潮吹きだったのか」
「気持ちいいでしょ?」
「物凄く気持ちいい!」
「これハマっちゃう人いるんですよ」
「ハマるかも〜」
 
結局僕は時間延長料金4000円も払って、ゆっくりと彼女とのプレイを楽しんだ。
もっとも最後の方はおしゃべりばかりしていた気もする。おしゃべりしている間、彼女は僕の乳首をずいぶんいじっていたが、それも最初は何でもなかったものの次第に気持ち良いような気がしてきた。
 
こうして僕は風俗というものを初体験してしまったのである。
 

そしてその事件が起きたのは7月も中旬の頃だった。
 
その日僕がアイドル歌手の取材を終えて帰社すると、向こうで田島さんと竹越さんが何か話している。竹越さんがチラっとこちらを見たので 
「どうかしました?」
と言って寄って行く。
 
「あ、いや、ちょっと過激な風俗ができたんだけど、さすがにこれは体験取材できないなあ、なんて言ってたのよ」
 
「ああ、風俗ですか」
 
と言って僕は先日初体験してしまったニューハーフ・ヘルスのことを思い出してしまう。あの入れられるのって気持ち良かったなあ。
 
「いや、むしろ円山君向けかも」
などと田島さんは言う。
 
「どんな風俗なんですか?」
「セイテンの館って言って、男性客を女装させて快楽の極致を味わわせるというシステム」
「はあ」
「オプション料金を払うと、去勢手術や豊胸手術・性転換手術まで体験できるという」
「いいんですか〜?」
「提携している病院で手術してくれるみたいね」
「無茶な」
「うん。無茶苦茶だと思う」
 
「内容的には裸にして剃毛して女体のボディスキンを装着した上で、女物の下着を付け、OL風の服を着せ、お化粧させて、逆フェラ・逆アナル・逆オナニー・レズプレイに言葉責め、ソフトS」
 
「逆オナニーって何でしたっけ?」
「ふつうは嬢がオナニーするのを見る。逆オナニーは客がオナニーするのを嬢が見てあげる」
「ふつうの射精とは違うんですか?」
「女のボディスキンを付けた状態でやるから、男型のオナニーができないんだな。
つまり女と同様に指でおさえて回転運動で逝くようにする」
「逝けるもんなんですか?」
「まあ時間がかかるだろうね」
「時間はたっぷりあるから」
「12時間コースだもんね」
 
「12時間!?」
「体力無いと無理だよね」
「渡辺君に声掛けたけど、逆アナルなんて嫌だと逃げた」
「あはは」
 
「ゆきちゃんはAされた経験あるよね?」
などと竹越さんから訊かれる。
「えーっと、すみません。企業秘密で」
と言ったが「ほほお」
「やはりね〜」
とふたりから言われる。YESと取られたようである。
 
「円山君、行ってみる?」
「料金が高いから支払いは会社のクレカ使ってもらうから」
「高いんですか?」
「12時間のノーマルコースで20万円」
「20万円!? そんなので商売成立するんですか?」
「一応ショートコース6時間で10万円、ミニコース3時間で5万円というのもある。ショートコースではボディスキンを使わない。3時間は女装させて逆Aと逆フェラだけ」
 
「でも体験取材するとしたら円山君くらいしかできないかも」
「女装の記念写真撮るからね。それが可愛い女の子になる人でないと記事として成立しないもんね」
「うちの契約記者で風俗ライターしている人たちの中にも女装して映えそうな人がいないんだよね」
 
何か引っかかりを感じるなあ。
 
「でも僕、風俗はちょっと」
「ああ、恋愛関係にない男性と性的なプレイすることに抵抗あるのかな」
「僕、男性には興味無いですけど」
「あれ?円山君ってレスビアンだったっけ?」
「僕ノーマルですよぉ」
 

そういう訳で僕は結局うまく乗せられて、会社のカードを持ってその風俗に行くことになってしまった。
 
12時間コースなので、何と朝からである。朝10時から始めて夜10時までという長丁場。僕はその12時間の体験を6枚のレポートにして新聞にはシリーズで掲載することになった。
 
僕が受付で申し込むとクレカの提示を求められる。高額なので決済はクレカのみということになっているようだ。
 
「どのコースになさいますか?」
「あ、えっとフルコースで」
と言うと受付の人一瞬「え?」という顔をした。何か後ろの方に入って行って誰かと話している。それで何か偉そうな感じの人が出てきて 
「お客様、ほんとうにフルコースでよろしいのでしょうか?」
と尋ねる。
「はい」
と僕が答えると「それでは念のためこちらの承諾書をよく読んで、ご同意頂けましたら署名捺印してください」
などと言われる。
 
風俗ごときで署名捺印が必要なのか〜〜!? 
僕は驚いたものの、承諾書の中身はあまり読まないまま円山行雄と署名し、印鑑を押した。
 
「女性名もお訊きしてよろしいですか?」
「あ、はい。円山ゆき、で。ゆきはひらがなです」
「分かりました。それでは料金はこちらのカードでよろしいですね?」
「はい。お願いします」
 

それで少し待合室で待った後、きれいなドレスを着た女性が出てきて「ゆき様、こちらへ」
と言われるので付いていき、個室に入る。がびっくりする。風俗の個室なんて殺風景なものを想像していたのに、ここは豪華な調度で飾られている。まるでヨーロッパの貴族の居室かと思わんばかりである。
 
「どうぞ、座って楽になさってください」
と言われるので座るが、リンダと名乗った担当の女性はサイフォン!でコーヒーを入れてくれた。
 
「お砂糖は?」
「いりません。ブラックで」
 
というのでそのままもらう。コーヒーカップも凄くデザインの良い品である。
これ1個5000円はしそうと思う。そして飲んでみると物凄く美味しい。
 
「美味しいですね!」
「インドネシア産のブルーマウンテンです」
「ブルーマウンテンってジャマイカじゃないんだっけ?」
「そちらが有名ですが、実は若干ニューギニアでも栽培されているんですよ」
「へー。知らなかった」
 
「フルコースの最初の2時間は男性として最後の時間をゆっくりと楽しんで頂こうということで、男の喜びの極致を体験して頂くことになっています」
 
なるほどー。性転の館で、後半はもう女として扱われるからその前に男の快楽を味わわせる訳か、と僕は納得する。
 
「ドライビングゲームとか、フライトシミュレーターとか、囲碁や将棋なども選択できますが。一応私、囲碁も将棋もアマ初段なので、ある程度はお相手できると思いますが」
 
「囲碁も将棋も全然分かりません! オセロくらいなら」
と言うので、彼女とオセロを楽しんだ。
 
が、風俗でこんなことしてていいのか!? 
もっとも彼女はオセロをしながら「ゆきおさんって格好いいわあ」
「女の子にもてるでしょ?」
「仕事もできそう」
などと随分僕を褒めてくれた。言葉責めの逆だなと僕は思った。
 
「でもこういうのやってて、お客さんによっては早くやらせろ、なんて言う人はいませんか?」
「おられますよ。その時はそれなりに応じます。むろんうちはソープではないのでセックスはNGですけどね」
「なるほどー」
「AならOKですよ。します?」
「いや、いいです」
 
「そうですね。フルコースはゆきおさんが3人目ですけど、前の2人の方も入れるのは好みじゃないとおっしゃって。おひとりの方は全く立たなかったし」
 
「なるほどー。女装プレイをしにくる人ですもんね。そもそもそういう傾向があるんでしょうね」
「まあ、それでなかったらフルコースに来る訳がないですよね。ひとりの方は最初から女装で来店なさいましたよ」
「やはり、そういう客層なのか」
 

結局2時間近くおしゃべりした後、10分間の休憩となるので、僕は早めに休憩に入らせてもらって記事を書き上げ、メールで会社に送っておいた。
 
次の2時間はいよいよ女装させられることになる。最初にリンダの手で服を脱がされて裸にされるが、 
「男の服を着ておられるから、少し不安でしたけど、ちゃんと下着は女物ですね」
と言われる。
「そうですね」
 
実は最近かなり女物の下着の感触にハマっていたのである。結構ブラやパンティを付けたまま会社に出てきていたのだが、今日は風俗というのでまずいかなという気もした。でもまあいいかと思って、そのまま来てしまったのである。
 
更に僕の裸を見て 
「ああ。ちゃんとムダ毛は剃ってますね」
とリンダは言う。
 
「ええ。ちょっと色々事情があって」
「ここで剃毛することになっているのですが、実際には以前来られたおふた方もきちんと手足のムダ毛、脇毛、剃ってありましたよ」
 
「なるほど、なるほど」
 
やはりこういう風俗に来る人って女装趣味の元々ある人なんだろうなと想像する。
 
「じゃ陰毛を剃りますね」
と言って彼女はあの付近の毛を最初ハサミであらかた切った上で、櫛刃の電動カミソリで剃り、更に回転刃の電動カミソリで剃ってきれいにしてしまった。
なるほどー。櫛刃で最初に剃ると痛くないのか、と僕は新しい発見をした気分であった。
 
「毛が無いと、まるで子供のおちんちんみたい」
と僕は言った。
 
「そうですね。でも元気なんですね」
 
と言って彼女は僕のものの先に軽くキスをしてくれた。僕のは毛を剃られている最中ずっと立っていた。特にハサミを使われた時は、このハサミでおちんちんまで切られたりしないよね?などと変な想像をしてドキドキしていた。子供の頃、母親に何かで叱られて「おちんちん切っちゃうよ」と言われて大きなハサミを見せられた記憶が蘇る。あれ何で叱られたんだったかなあ。おちんちん切られちゃったら女の子にならないといけないのかな、なんて想像したっけ。まあ、女の子になっちゃうのも悪くない気もするけど。でも性転換手術って100万円くらいするらしいし。最近手術しちゃう人増えてる気がするけど、よくみんなお金があるよね? 

ここでお昼御飯になるが、裸のまま食事をしながらガールズトークになる。
 
ここでガールズトークするというのがプレイの一部でリンダは「○○ちゃんがこないだね」などとよくある感じの女の子同士の噂話や、ジャニーズなど男性アイドルの話、またファッションの話などをする。
 
「さすがちゃんとガールズトークに付いてきますね」
「僕、結構会社の女子社員たちと一緒にお昼食べたり、会社が終わった後でおやつ食べに行ったりしてるんですよ」
「ああ、やはりそうですよね」
 
うーん。何がやはりなんだろう。
 
食事が終わってからお茶を飲みながら少し休憩する。30分ほどした所で彼女は一度トイレに行ってくるよう言い、その後僕をベッドに寝かせた。そして何か大きな玉子のようなものを出してきた。
 
「それ何ですか?」
「ご存じありません?テンガエッグですよ」
「へー!それが!名前は聞いてたけど初めて見た」
「私もたまに使うけど気持ちいいですよ」
とリンダは言う。
 
たまに「使う」ってどうやって使うんだ?と思ったものの、彼女がそれを僕のものに入れて、いや逆か。僕のものをその玉子に入れて動かすと僕は極上の気持ちよさを感じた。すごーい! 気持ちいい! 
彼女の動かし方は絶妙で僕が逝きそうになると勢いを緩める。そしてじらしていたかと思うと結構強く動かす。それで僕は逝きそうで逝かない状態でかなり長時間、快楽を感じ続け、こんなにここに血液が集まったいたら脳貧血になりそうなどという気もしてきた。
 
結局30分くらいも掛けて、僕はようやく逝くことができた。
 
「待って。これレポートに書くから」
と言って僕がノートパソコンを開いて記事を書き出すと 
「何ですか?」
と尋ねられる。
「体験取材なんですよ」
「すごーい。取材でフルコースやっちゃうんだ?」
「みんな断ったとかで。僕はまあ女の子になるのはいいかなと思ったし」
「うん。可愛い女の子になれると思いますよ」
とリンダは笑顔で言った。
 
僕の記事は「愚息もついに昇天」という決め文句で締めくくった。うん、これ一度使ってみたかったんだよね〜。
 

記事をメールで送ってからプレイの続きをする。
 
お部屋の隣にお風呂が付いている。ドアを開けてそちらに案内されたがこれがまた豪華なお風呂である。バスタブも広い。リンダはバブルバスを入れてお湯を貯め始める。そしてこちらではリンダが服を脱いで水着姿になり、スマタ・プレイをした。
 
「どちらが上がいいですか?」
と尋ねられ「下の方がいいかな」
と言うと「前来られた2人も下を選択しましたよ」
と言い、バスマットの上に横たわらせて僕のを股にはさんでリンダが腰を動かす。
ひー。これもまた気持ちいい! 
「女の子とのセックスをした経験は?」
「無いです」
「ですよねー」
 
どういう意味で「ですよねー」なんだろう。
 
「だと逝けないでしょ?」
「逝けそうなのに逝けません」
「ふつうの男の人ならこれ数分で逝くんですよ」
「そうなんですか?」
 
結局10分以上やっていたものの僕は逝けなかった。しかしこんな長時間腰を動かすのって大変そうと、僕は嬢に同情した。
 
そのうちバスタブに泡がたまるので、僕はその中に入れられ、柔らかいスポンジで身体を洗ってもらう。
 
「なんか気持ちいいです」
「まあ原始的な快楽ですよね」
と言って彼女は笑っている。
 
あの付近はより丁寧に洗ってもらった感じだが、これもまた気持ち良かった。
女の子になるのもいいなと思わないこともないけど、こういうおちんちんの快楽って簡単には捨てられないよなあと僕は思った。
 
 
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