【△・葉月救済大作戦】(2)

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ところで戸籍上も学籍簿上も男子ではあるもののセーラー服を着て中学に通学している門脇真悠であるが、来年は高校に進学するので、女子制服を着ての通学を認めてくれそうな高校がないか模索していた。
 
龍虎(アクア)は彼がヴァイオリンを結構弾くことから、自分の高校・C学園に入れてもらえないか先生に尋ねてみた。それで真悠と保護者が学校を訪問して予備面接(ついでにヴァイオリンとピアノの実技披露)を受けた。演奏は「ピアノもヴァイオリンも充分うまいですねと言ってもらえた。
 
そして真悠が***ヴァイオリンコンクールで昨年優勝(上位の国際コンクールでは残念ながら5位)していると聞き、その実績があるなら芸術科で受け入れていいと言ってもらった。このコンクールは有名音楽家とかの弟子とかでなくても出場できるので、正規のコース外からの出場者も多い。実は龍虎のクラスメイトの田中成美もこのコンテストで準優勝(上位の国際コンクールで3位)したことがあり、ローズ+リリーのケイは優勝経験(上位の国際コンクールでは3位)がある。
 
それで真悠は来年春からC学園の生徒になることが内々定した。実際には1月に推薦入試を受けてもらうが、よほどの問題がない限りは通してもらえるはずである。むろん女子制服を着て通学するのは全く問題無いということであった。
 
そういう訳で、門脇真悠は“男子の女子中学生”から“男子の女子高生”になることになった。
 

ところで2018年の春、上島雷太関係のCDの大量回収騒ぎが起きた時に、その回収された、あるいは発売がキャンセルされたCDについて、ワンティスのメンバーが立ち上がった。彼らはそれらのCDを発売元に「製造原価程度」で買い取ることを打診した。廃棄すれば廃棄費用も掛かるので、多くの発売元がそれに同意し、ワンティスのメンバーを中心に設立した《CD回収保管財団》(CD collect & stock foundation - CCSF) で買い取った。買い取ったCDは1000万枚(日本国内の年間CD発売枚数の約5%)、段ボール箱12万箱に及んだ。買い取り価格は原則シングル300円、アルバム1000円で、平均700円、合計70億円ほどである。これには上島と同様に無期限謹慎になった水上信次の作品も含まれている。
 
ワンティスのメンバーはこの回収したCDを収納するのに、栃木県の廃校になった小学校の体育館を自治体から借りてそこに運び込んだ。100枚入りの段ボールがだいたいW50×D25×H15cm程度なので、これは30m×30mの体育館に並べると60×120=7200個並ぶ計算になる。それでCCSFではこの体育館にスティール製の“中二階・中三階”を設置し、1階・中二階・中三階の各々に段ボール箱を6段重ねにして何とか収納した。
 
この体育館の(1年間の)借り賃と搬入費は3億円程度で、CDの買い取り費に比べれば大したことはない。
 
この財団については、実際には雨宮先生が半分近い30億円、下川先生が5億円、春風アルトさんの父親代わりを自称する紅川さんも5億円、ケイと千里が10億円ずつ、アクアが父・高岡猛獅の代わりとして3億円、三宅先生とマリも3億円ずつ、AYAと松浦紗雪が2億円ずつ、海原先生が1億円、∞∞プロの鈴木社長とΘΘプロの春吉社長が「長年の友情」と言ってやはり1億円ずつ、山根先生・長野支香・中村将春(以上ワンティスのメンバー)、鈴懸くれあ・百瀬みゆき・大西典香・篠田その歌(以上上島ファミリー)、ワンティス初代担当の太荷馬武、といったメンツが3000万円ずつ出資している。加藤次長などレコード会社関係者からも協力の打診があったが、レコード会社には多大な迷惑を掛けたのでと下川先生が言い、名義書換問題で迷惑を掛けたのでそのお詫びも兼ねてと言った太荷馬武以外は、お気持ちだけで充分としてお断りした。
 
“上島先生の一番弟子”を自称する山折大二郎は「すみません。俺、金無いので労働奉仕します」と言って友人のトラックを借りて回収するCDの運搬をやってくれたが、これが充分助かった。また彼を中心とする、演歌歌手グループが
「取り敢えず歌える歌も無いし」
と言って、全国のCDショップから回収されてきたCDをアーティスト別に分類する作業をボランティアでやってくれた。これも、物凄く助かった。彼らには雨宮先生に頼まれた橘由利香・恵利香姉妹がお弁当と飲み物(ノンアルコール)を配っていた。この2人も「私たちも出資できないから労働奉仕」と言っていた。現在まだ小学生の橘美晴もお茶配りなどを手伝っていた。
 
そして、本来は費用を掛けて廃棄せざるを得なかったはずのCDを取り敢えず製造原価程度でも買い取ってもらったことで、各プロダクション・レコード会社は物凄く助かったのである。
 
これらのCDは1年後、その9割程度がそのまま販売されることになる。各プロダクションまたはレコード会社はCD回収保存財団から2018年春に売った時と同額で買い取り、それを市場に投入した。どこのファンも喜んで買ったので、ほとんどが売り切れてしまい、慌てて追加プレスする所もあった。一部、その歌手が不祥事を起こして発売不能になった、などの理由で買い取られなかったCDもあったし、体育館の借り賃(中二階の設置で傷んだフロアについては自治体側はそのままにして補修しなくてよいと言ってくれた)などもあったので20億くらいの赤になるかなとも思われたのだが、一部のレコード会社で「昨年買い取ってくれたので物凄く助かったので御礼」と言って買取価格に少し上乗せした価格で買い取ってくれた所もあった。それで最終的に5億円の赤字に留まり、これを1億円以上の出資者13人で、出資比率に応じて負担することにして、2019年夏に財団は解散する。
 
1億円未満の出資者には全額ペイパックされたので、鈴懸くれあなどは「臨時収入・臨時収入」と言って喜んでいた。なお労働奉仕してくれた人たちには記念品を配った。
 

上島雷太は請求された多額の賠償金を払うことができず、2018年7月に自己破産を申請したのだが、預貯金・株式・自宅以外にはほとんど資産が無かった(任命された管財人が驚いた)ため破産の処理はすぐ終わり、2018年12月には廃止(手続き終了のこと)に至り、2019年2月には免責が確定した。2019年3月29日の謹慎解除は、この免責確定を受けてのものでもあった。
 
(実際問題としてほとんどの損害賠償請求は根拠が無いとして却下または過去にさんざん上島にお世話になっていたからとして取り下げられ、借入金・未払金や、実体を伴う損害のみが弁済された。だいたい7-8割が弁済されたので債権者も概ねそれでいいことにしてくれた。しかしその程度で収まったのはCD回収保管財団の活動も背景にあった)
 
この手続きの中で、★★情報サービスの所有株式については、適正価格での他の株主からの買い取りということで雨宮先生が管財人と交渉し、結局上島が出資した分について千里!が出資額と同じ金額で買い取った。雨宮先生が買い取るんじゃないんですか?と千里が尋ねたら「私お金無いもん」と雨宮先生は言ったらしい。これに伴い上島は同社の会長を辞任。千里が会長を引き継いだ。ただし会社の代表印は冬子が管理することにした。千里なら即紛失する!
 
上島の自宅の土地は競売に掛けられて不動産会社が2億円で落札。その跡地にはマンションが建った。所有していたレクサスもやはり競売に掛けられ、これは卍卍プロの三ノ輪会長が800万円で落札している。実は∞∞プロの鈴木社長が500万円で落札するつもりだったのだが
 
「まさか800万も出す奴がいるとは」
 
と鈴木さんは呆れていた(レクサスGS450hは新車が600万円で買える)。三ノ輪さんは人を乗せると「これ上島雷太が乗ってた車なんだよ」と喧伝しているらしい。まあそういう自慢をするための投資なのだろう。
 
自宅の楽器類(グランドピアノを含む)・CDや書籍などは雨宮先生が合計2000万円で破産財団から買い取り、茨城県内の倉庫に置いたが、“かさばる”グランドピアノは山折大二郎の自宅に“置かせてもらった”。山折は感激して毎日そのグランドピアノの下で寝ているらしい。CDの類い(約1万枚)はアクアが「聴いて勉強したいです」と言ったので、上島本人にも確認して雨宮先生がアクアに100万円で売った(実質無償譲渡に近いが贈与税を取られないように売却にした)。書籍類(膨大な楽譜集を含む)は海原先生が500万円で買い取った。それで雨宮先生の手元には高岡ゆかりのヴァイオリン(元々はケイが小学4年生の時に送料込み1710円でヤフオクで落としたものだが、そのあたりの経緯は、雨宮先生たちは知らない)を含む楽器群が残り、これは雨宮先生が自分の家に移した。それで茨城県の倉庫は2ヶ月程度しか借りなかった。
 
なお上島が持っていた多数の楽曲の著作権はUDPが10億円で破産財団から買い取っている。この著作権は2018年度だけでも5億円、謹慎が解除された2019年度には20億円の収入をUDPにもたらし、UDPの運営に大きく貢献することになる。UDPを立ち上げた響原部長は2018年の秋くらいまではUDPが深刻な赤字を出していて◇◇テレビ社内で責任を追及され、首になってもおかしくない状況だったのだが、2019年4月以降この著作権のおかげで大きな収入をもたらしたので、首がつながった。
 

貴司は2018年1月21日に阿倍子と離婚し、2月3日に美映と結婚したのだが、3月18日には千里とデートをしている。
 
ここで阿倍子と離婚した時に阿倍子が実家に帰るため荷物をまとめるのに最初貴司が手伝っていたものの喧嘩になってしまう。しかし阿倍子には頼れるような親族も友人も居ない。そこで貴司は千里に連絡し荷造りの手伝いをしてくれないかと言った、ここで貴司が連絡したのは千里1で、千里1は貴司がまた別の女性と結婚すると聞いて激怒し、ありったけの罵声で貴司をなじったものの、とにかく大阪に行き、阿倍子の手伝いをしてあげた。
 
その後で、千里2は貴司に連絡して、阿倍子に支払った慰謝料の肩代わりをしたいと伝えた。貴司は千里が自分を許してくれたのかなと思い、その申し出を受けた。この時点で貴司は最近給与がカットにつぐカットになり、経済的な余裕が無くなっていて、慰謝料も銀行から借りて支払っていたのでとても助かったのである。
 
それで3月18日に千里とデートした時、貴司は自分の離婚再婚問題には決着がついていると思い、安心していたのだが、ここでデートしたのは千里3である。千里3はこの時初めて貴司の離婚と再婚を聞いて激怒し、部屋にあるものを手当たり次第投げつけて貴司を非難した。貴司としてはなぜまた千里が怒るのか理解不能であるが、千里にひたすら謝る。しかし千里の怒りは収まらず、千里(千里3)は貴司の男性器を取り上げてしまった。
 
それで貴司はこの後、男性器無しで美映との結婚生活を送るハメになるのだが、この時点では美映は妊娠中なので、セックスを求められることは無かった。
 

貴司は美映と結婚中も、しばしば市川ラボで深夜の練習をしていたが、ここに貴司が来たときは、千里2が“貴司の前に姿を見せないまま”食事の支度をしてくれたり、洗濯物をしてくれたりして、しばしばベッドで添い寝もしてくれた。(「目を開けたら消えるからね」と千里2が言うので、貴司はずっと目を瞑っていて身体をあちこち撫でてもらい自分も千里の身体を撫で、あそこを刺激して千里を逝かせてあげたりしても、千里の姿は見ていない)
 
ここで千里2としては貴司を手で逝かせてあげるくらいはしてもいい気分なのだが、男性器を千里3が取り上げてしまっているので、それはできなかった。
 
こうちゃんの場合は“男性能力”を千里2に奪われただけなので千里3が男性能力を復活させてあげることができた。しかし貴司は“男性器”そのものを千里3に奪われたので、千里2にも手の打ちようがなかった。
 
2018年8月貴司は千里とアジア大会で起きたバスケット日本代表選手の買春事件のことで電話で話していて、千里がわりとご機嫌なようなので、そろそろ自分の男性器を返してくれないかと訊いてみた。この時電話していたのは偶然にも千里3だったのだが、実は千里3は貴司から男性器を取り上げたことをきれいに忘れていた。
 
「ごめん忘れてた!返してあげるね」
と言って返してあげることにした。これが8月18日のことである。
 
8.16 バスケ日本代表買春事件(18日に報道)
8.18 貴司と千里3が電話で話す。
8.20 貴司の男性器が復活
8.23 緩菜が生まれる。千里1が誕生の現場に立ち会う。
8.30 緩菜のDNA鑑定が出て男の子であるということになったので医師が出生証明書を書く。出生届けを“理歌”が提出する。
9.03 緩菜と美映が退院
 

千里(千里3)は貴司にテンガも送ってきてくれたので、美映が入院中であるのをいいことに、復活した男性器でテンガを使って5ヶ月ぶりの快楽をむさぼった。その後、23日には緩菜が生まれる時に千里(千里1)が来てくれて、生まれるまでの1時間ほど病院の廊下でずっと千里と話していたので、貴司は千里がだいぶ機嫌がいいようだなと思っていた。
 
美映は8月22日に産気づいて入院し、9月3日に退院した。それで8月24日(金)から9月2日(日)までは、貴司は病院に見舞いに行くほかはマンションで1人で過ごしている。事件は8月31日(金)に起きた。
 

病院の面会時間が20時で終わるので、貴司は美映に
「また明日ね」
と言って病院を出た。マンションに帰ろうと思いモノレールの駅に行きかけたのだが、居酒屋の看板を見て
「あ、ごはん食べてから帰ろうかな」
と思った。それで中に入り適当な席に座る。ビールを頼み食事をしていたら、隣に30歳くらいの女性が座って、チューハイと焼き鳥を頼んだ。
 
「あれ?もしかして元日本代表の細川選手ですか?」
「はい、そうです。日本代表から遠ざかって久しいですけど」
「細川選手も、まだ若いし、代表復活もあると思うけどなあ。東京オリンピック目指して頑張りましょうよ」
「ありがとうございます」
「あの握手していいですか」
「いいですよ」
 
それで貴司はその女性と握手した。そしてそのままお互いビールとチューハイをあけながらバスケのことで2時間以上、盛り上がって話をした。
 
やがて22時半で「オーダーストップですが、ご注文ありませんか?」とお店の人から言われてついつい長話してしまったことに気がつく。
 
「ごめん。こんなに長く引き留めてしまって。電車ですか?」
「モノレールなんですよ」
「だったら駅まで一緒に行きましょうか」
「ええ」
 

それで一緒にお店を出る。勘定はもうオーダーが混然としていたので貴司がまとめて払ってあげた。
 
「すみません。おごってもらって」
「いや僕もバスケの話をたくさんして楽しかったし」
 
それで貴司は彼女と一緒に歩いてモノレールの駅に向かう。この時、彼女は貴司に腕を絡めてきた。ドキッとするが、千里も美映も見てないし、このくらいはいいかな、などと思った。
 
そして駅の登り口まで来たのだが、彼女が唐突に言った。
 
「ねぇ、タクシーの相乗りで帰りません?私、ちょっと足下が怪しくて」
「ああ。ごめんね。調子に乗って飲ませちゃって。君、おうちはどこ?」
「**駅の近くなの」
「だったら僕のうちに行く途中だね。じゃ一緒に行こうか」
 
それで貴司は駅の近くに停まっていたタクシーの傍に寄るとドアを開けてもらい彼女と一緒に乗り込んだ。
 
「**駅の近く経由で千里中央まで」
と運転手に告げる。
 

「**駅の近くのどのあたりですか?」
と運転手さんが尋ねる。
 
すると彼女は運転手さんに、○○の近くと言い、近所まで来ると、そこを右に曲がってとか左にとか行って道案内をする。そしてやがて
 
「ここでお願いします」
と言うのでタクシーは停まった。
 
「え!?」
と貴司は声をあげた。
 
「一緒に降りましょうよ。私、足下が不確かで途中で倒れちゃいそうなの。“おうち”まで送ってくれない?」
と彼女が言う。
 
貴司は彼女と一緒にタクシーを降りた。
 

「いいでしょ?一晩くらい。後腐れ無しで」
と彼女は言う。貴司は迷った。
 
でも・・・バレないよね。後腐れ無しと言っているし、と考える。それで2人は腕を組んで、そのファッションホテルの玄関に入ろうとした。
 
ところがそこに怒った顔の人物が腕を組んで立っている。
 
え〜〜〜〜!?
 
「あなた帰ってくれない?これあげるから」
と言って、千里は女にタクシーチケットを差し出した。
 
「あのぉ・・・まさか」
「私、この人の妻なんですけど」
「ごめんなさい!帰ります」
と言って、彼女は千里が差し出したタクシーチケットを受けとると、小走りに去って行った。
 

「千里、なんでここに居るの?」
と貴司は焦ったように言う。
 
「それはこちらが聞きたいよ。信じられない。美映さんがお産で入院している最中に他の女と浮気なんて」
 
「いや、そういうつもりは無かったんだ」
「そういうつもり無い人が女とラブホテルに来る訳?もう少しまともな言い訳したら?貴司にちんちん返したのは間違いだった」
と千里は言うと
「貴司が私とちゃんと結婚する日までもうこれは預かっておくから」
と言って、貴司の男性器を再び取り上げてしまった。
 
貴司の男性器はわずか11日の命だった。
 
そしてついでに自宅マンションに転送する。
 
貴司は突然マンションに来てしまったのでびっくりする。そしておそるおそるズボンを下げ、トランクスを下げてみて
 
「また無くなってる!勘弁してよぉ!」
と叫んだ。そしてこの後、貴司は2020年の秋まで2年間、男性器の無いまま過ごすはめになるのである。でもその間わりと真面目に練習したのでバスケ技術は向上してプロチームに入れるレベルまで戻ることになる。
 
その期間の内、美映が出産してから緩菜の1歳の誕生日が来る2019年8月頃までは美映もセックスを求めなかったのでそのまま股間に何もないまま過ごしているが、その後は、以前も使用していた精巧なフェイクペニス(ボール・袋付き)で誤魔化している。ハーネス無しで接着剤で取り付けられるタイプである。
 
(日常生活だけなら接着剤なしでも陰唇に挟むだけで使用でき(パンティで脱落を防止する:従ってその場合は女性用パンティかほぼ同形のビキニブリーフなどを穿く必要がある)、そのまま立っての排尿も可能だが、接着していないと性行為中に外れる危険がある。クリトリスのある人なら疑似ペニスの刺激で本物のクリトリスが刺激されて快感なのだが、あいにく貴司にはクリトリスもヴァギナも無いので性的快楽は得られない。もっとも睾丸も無いから性欲も弱い。なお、貴司にはバストが無いし喉仏があって、肩の張った男性体型なので女湯に入るのは不可能)。
 
美映は貴司の“ちんちん”を触って刺激してあげても、それが一向に大きくならないので、そういえば緩菜を妊娠することになった最初のホテルデートの時も貴司のちんちんは立たなかったなというのを思い出し、貴司はEDなのだろうと解釈して、無理に求めないようにした。まさかペニスが無いとは思いも寄らない。(美映は恋愛はたくさんしていてもセックスの経験が無いので男性器についても無知で作り物であることに気づかなかった−美映は実はヴァージンマザーである)またこの緩菜の誕生日が来る少し前の2019年7月29日に貴司たちは姫路の一軒家に引っ越しており、ここでは貴司の部屋と美映の部屋を別々に確保したので、2人は別の部屋で日常的に寝るようになり、性的な関係は持たなかった。
 
この2018年8月31日の浮気未遂を美映は知らなかったので、美映は千里とのことを除けば、貴司は自分だけを愛してくれていて浮気などは一切していないと思っていたし、貴司はセックスはしなくてもいつも優しくしてくれるので、充分満足した結婚生活を送った(ここが頻繁な浮気で精神的に疲れ果てた阿倍子とは違うところ)。それでも美映が貴司と離婚することにしたのは、何といっても関東での生活に耐えられなかったからである。
 
そういう訳で貴司は美映と離婚するまで彼女には、男性器が無いことがバレずに済むのである。
 

アクアと西湖は、(2018年)11月2日(金)は『少年探偵団II』の初回撮影があったのだが、11月3日(土)-4日(日)は、(時代劇セットのある)ワープステーション江戸(つくばみらい市)に行き、『ほのぼの奉行所物語』のスペシャル版の制作をした。
 
『ほのぼの奉行所物語』は2018年度の放送が好評だったので2019年度に『ほのぼの奉行所物語II』を制作することが決定しているが、放送が始まる4月に先行して、1月に2時間スペシャルを制作することになったのである。その撮影を3-4日にやろうということになった。ちなみに11月3日は祝日だが、土曜日に祝日が重なっても振替休日は発生しないので11月5日は平日である。
 
撮影は3日朝から始まり、あらかじめ定められた手順にそって撮影が進む。3日は予定より早く進行し、本来なら4日午前中に撮影する予定だったシーンの大半まで撮影完了してしまった。
 
「じゃ明日は午前10時から始めますのでよろしく」
といって解散になる。
 

バス2台に分乗して、10分ほど走った所にあるホテルに移動する。あまり大きなホテルではないので今日は撮影の一行で貸し切りになっている。客室のカードキーが配られる。主演の片原元祐さんは最上階の露天風呂付きスイートで、他の主な役者さんたちもだいたい個室が当てられている。アクアもバスルーム付きの洋室シングル(ベッドはダブルベッド)を当ててもらっていた(アクアは個室でないと3人寝ることができない)。しかし端役の人たちは5-6人単位で14畳の和室に放り込まれている。
 
葉月は比較的年齢の近い女子ということで、米本愛心(高2) 岡原襟花(高3) 馬仲敦美(20歳) 佐藤ゆか(高2) と一緒に5人である。
 
ここで米本愛心は2013年夏のフレッシュガールコンテストで3位(優勝は明智ヒバリ)になり§§プロの研修生になるも「3年してもデビューできなかったら辞める」という親との約束にもとづき2017年3月で§§プロを退所。その後Cold Fly20のオーディションに合格して同グループの結成に参加した。佐藤ゆかは2015年のロックギャルコンテストで8位に入り研修生になった。ちなみに愛心とゆかは部屋が隣同士だった。そういう訳で、この2人は葉月を古くから知っている。愛心は葉月が“男の子だった頃”を知っているので、最初同じ部屋と知って「あれ?」という顔をしたものの、佐藤ゆかが普通にしているので「まあ、いいのかな」と思い、何も言わなかった。
 
この中でお姉さん格になる馬仲敦美が、明治BEST3(チョコ33枚入り)の大袋を持ち込んでいたので、それを広げると歓声があがり、みんなでシェアして食べた。5×6=30なので、余った3枚はジャンケンで愛心・襟花・ゆかの3人が取った。
 
「昔から葉月はジャンケンが弱かった」
と愛心が言うと、襟花が
「あれ?昔からの知り合い?」
と尋ねる。
 
「私は元§§プロの研修生で、アクアちゃんがオーディションに合格した時や葉月ちゃんがあの子のボディダブルとして契約したのとかもずっと見てたから」
 
「ああ、そうだったんだ?」
「当時の寮はお風呂が共同だったからお互いに裸を見てるね」
と愛心が言うと、葉月は恥ずかしそうにうつむく。
 
「可愛い!」
と襟花が声を挙げた。
 

葉月は寮に住んでいた訳ではないが、寮は研修所を兼ねているので、葉月は頻繁にあそこを訪れ、様々なレッスンを受けているし、遅くまでレッスンがあった時、葉月や門脇真悠(大崎志乃舞)は寮の空き部屋に泊まることもあった。ちなみにどんなに遅くなっても西宮ネオンは決して寮には泊まっていない。タクシーに乗せて帰している。しかしネオンは泊めずに、葉月や真悠は泊めることに誰も疑問は感じていなかった。
 
お風呂が共同だったのは新しい寮に建て変わった2015年12月までなので(新しい寮にも来客用のシャワールームはあるか定員1名のものが3つである)、2016年のロックギャルコンテストで3位になって研修生になった真悠は個室のお風呂にしか入っていない。しかし2014年12月に§§プロと実質的に契約した葉月(きちんと契約の文書を交わしたのは2015年5月)の場合はかなり寮の共同浴場に入っている。
 
葉月が入浴する場合は、むろん1人だけで、寮長の山下ルンバが《男子入浴中。覗くな》という札をお風呂場の戸に掛けている。
 
でも無視される!
 
「男子って誰が入っているんだっけ?」
「西湖ちゃんじゃないの?」
「あの子ならいいよね」
 
などと言って、そのまま入っちゃうのが、愛心・ゆかたちである。
 
西湖は女の子たちが入って来たのに気づいて慌ててあがったものの、裸を彼女たちにしっかり見られた(西湖は愛心たちの下着姿までしか見ていない)。
 

さてこの日は部屋でしばらくおしゃべりした後、夕食の案内があるのでレストランに行こうとしたのだが、西湖がうとうとしていたので
「少し寝てから食事行くといいよ。ちゃんと取っておいてくれるように言っておくから」
と、ゆかが言うので、西湖も布団を1枚端のほうに敷いて眠ってしまった。
 
それで愛心たちは食堂に行った。
 
しかし5分もすると“西湖”はやってきた。実際には西湖と入れ替わった《かぶちゃん》である。食事と聞いて「行きたい」と言ったので《わっちゃん》も行かせたのだが「普通の女子並みの分しか食べてはいけない」と厳命している。たぶん西湖本人はこのまま朝まで眠ってしまうだろうと《わっちゃん》も思った。
 
西湖の代わりに食堂に来た“西湖B”こと《かぶちゃん》は
「大丈夫?」
と訊かれるので
「少し寝たらすっきりした」
と言って、愛心たちと同じテーブルにつき食事をした。たくさん食べたかったが、身代わりがバレてはいけないので我慢した。
 
(後で千里さんからもらった焼肉屋さんの食事券でたくさん食べよう、などと思っている)
 

食事の後はお風呂に行こうということになる。このホテルはシングルルームには部屋にお風呂がついているが、14畳和室などには付いていない。実際1部屋に5−6人も泊まっていたら個室風呂では入浴に時間がかかりすぎる。
 
それでわいわいおしゃべりしながら大浴場に向かう。廊下の突き当たりに男湯の暖簾と女湯の暖簾が並んでいる。“葉月”はここでみんなに
「じゃまた後で」
と言って、男湯の暖簾を通ろうとした。
 
「こら待て」
と言って、ゆかに捕まる。
 
「どこに行こうとする?」
「え?男湯に」
 
「君は女の子だろ?ちゃんと女湯に入らなきゃだめ」
と言って、ゆかに強引に手を引かれて女湯の方に引き込まれた。
 
襟花などは
「葉月ちゃん、何やってんのよ?酔ってる?」
などと言って笑っているが、以前、葉月のお股を見たことのある愛心などはどうなるのかな?と思って見ている感じである。
 
“葉月”は焦った。
『やばいよ。女湯に入ったら痴漢で捕まっちゃう。わっちゃんさん、交換お願い』
と呼びかけた。
 
交換される。
 
葉月は眠っていた所をいきなり脱衣場に放り込まれたので、くずれるように床に横たわってしまい、結果的に倒れたように見えたので
「大丈夫?」
と心配される。
 
「あれ?ここは?」
とさすがに目を覚ました葉月が訊く。
 
「お風呂だけど」
「え〜?お風呂なの?」
「まさか忘れたとか」
「部屋で寝ていたような気がした」
「やはり、かなり疲れてる」
「葉月ちゃん、部屋で寝てると言ったけど、すぐ食事に出て来て、その後一度部屋に戻ってから一緒にお風呂まで来たじゃん」
「嘘?私、食事した?」
「それも覚えてないというのは、やはり相当疲れている」
とみんなから呆れられている。
 
「お風呂入ったら、もう寝なよ」
「あ。うん」
 
それで葉月は服を脱ごうとするが
「あれ?もしかしてここ女湯?」
と尋ねる。
 
「女子が男湯に入る訳が無い」
 
葉月は一瞬どうしよう?と悩んだものの、まあいいかと思う。それで服を脱いで他の子と一緒に浴室に移動した。
 
葉月に結構なサイズのバストがあり、お股には何もぶら下がっていないのを見て愛心は「もしかして性転換手術しちゃったのかな?」と思った。ゆかが葉月の裸を見ても平然としているので、自分も気にしないことにして一緒に入る。
 

それで各自身体や髪を洗ってから、浴槽に入った。それで普通におしゃべりしている内に、愛心も葉月が男の子だったかもということは、きれいに忘れてしまった。葉月もさんざん女子高で女の子たちの輪に入っているし、10月には高校の合宿研修でクラスメイトの女子たちと一緒にお風呂に入っているしで、緊張せずにおしゃべりに参加することができた。
 
葉月の女湯体験はこれが4回目である(安曇野の温泉宿、TDLそばの舞浜ユーラシア、10月の合宿、そして今回。但し安曇野では水着を着けている)。葉月としても女湯にかなり慣れてきたという感覚があった。
 

葉月はお風呂から上がるとそのまま部屋に帰り、ゆかにも言われてひとり先に布団に潜り込んで眠らせてもらった。一方西湖と交替した《かぶちゃん》の方は(男物の服が無いので)女装のまま焼肉屋さんに行き、たっぷり食べて満足した。お店には千里に言われた通り御食事券を3枚渡した。
 
当店は食べ放題なので1枚でいいですよと言っていたお店の人も彼が物凄い量食べるので、最終的に食事券を3枚受けとってくれた。
 
「お客さん、フードファイターとしてデビューできますよ」
などとお店の中年のウェイトレスさんが言っていた。
 
「また来てもいいですか?」
「どうぞどうぞ」
「じゃまた食事券3枚で」
「ええ。そうしてくださると助かります」
 

夜中にふと目を覚ました愛心は、ゆかが起き上がって外に出て行くのに気づき自分も起きだして彼女の後についていった。エレベータホールの所にある自販機で、ゆかが十六茶を買っている。愛心はコーヒーを買った。
 
「眠れなくなるよ」
「私、コーヒーを飲むと眠ってしまう体質」
「面白いね!」
 
「だけど、葉月ちゃんって、性転換しちゃったの?」
と、愛心は尋ねた。
「それだけどさあ。あの子、今年の春に女子高のS学園に入学したんだよね」
と、ゆか。
 
「そうだったんだ!」
 
「女子高が入れてくれたということは、戸籍は20歳まで変更できないけど、少なくとも身体は女の子になっちゃったんだろうね、と研修生の間では噂してた」
 
「へー。確かにちんちん付いてる子を女子高に入れるのはさすがに問題あるよね」
 
「高校入学前、去年の1月下旬から3月まではずっと仕事休んでいたから、多分その時にタイにでも行って性転換手術を受けてきたんだと思うよ」
 
「なるほどぉ。高校入学前に性転換して男子中学生から女子高生になったわけか。大胆なことするな」
 
「アクアについては、多分ちんちんの付いてない男の子なんだろうけど、葉月ちゃんは、ちんちんは付いてても、それを取って女の子になりたいんじゃないかなという噂はあったもんね」
 
「そんな話はそういえばしてたね。でもやはりアクアはちんちん無いんだ?」
「お股に何も無いのはアイちゃんだって見てるじゃん」
「見た。でも本人は小さくて目立たないだけと言ってた」
「そういう言い訳で、やはり病気治療のために取っちゃったんだと思うよ。だから声変わりもしないけど、アクア本人は意識としては男の子の意識なんだと思う。でもちんちん付いてないから女湯に引きずり込んだりもされてるみたいだけど」
 
「あの子、実は男湯に入ったことないのではという説もあるよね」
「あるある。だってアクアが男湯の脱衣場に居たら、絶対スタッフさんから摘まみ出されるよ」
「だよねー。それで女湯に入っても大きな問題は無い」
「さすがにおっぱいは無いだろうけど、ちんちん付いてないなら、女湯に居ても大きな問題は起きない」
 
「うんうん。しかし葉月ちゃん、性転換手術しちゃったのか」
「多分そうだろうと思ってたけど、今日のお風呂で見て確信した。おっぱいも割と大きかったし」
「おっぱいあったよね。あれは女性ホルモンかな」
「だと思うよ。ネオン君も葉月ちゃんは女の子の香りがすると言ってたから、多分ずっと女性ホルモン飲んでいるんだと思う」
 
「なるほどねえ」
 
こんな感じで、男の子時代を知っている子たちにも、葉月はどうやら性転換手術を受けて女の子になったらしいという噂が広がっていくのである。
 

『ほのぼの奉行所物語』スペシャル版の撮影は4日も順調に進み、夕方には予備の場面まで含めて撮影が完了した。葉月はぐっすり寝たおかげで4日も元気に頑張った。《わっちゃん》は、やはり一週間に1度は完全休養させるのがいいんだろうなと考えた。
 

11月頃からは年末年始の特別番組の撮影が多数入り、アクアも葉月もかなり多忙になるが、アクアは3人で分担しているし、葉月も原則として週1回《かぶちゃん》が代わって葉月を休ませたので、アクアも葉月も倒れたりすることなく、何とか年末年始を乗り切っていく。
 
年末は12月29日から紅白のリハーサルが始まる。アクアは多忙でとても長時間拘束されるリハーサルなど出ていられないので、29-30日,31日の午前中まで葉月が代行することになっていた。
 
しかしそれでなくてもアクアの忙しさに比例して葉月の忙しさもピークに達している。彼は29日の夕方にはダウンしてしまったので、そろそろ危ないなと感じていた《わっちゃん》の指示で待機していた《かぶちゃん》と入れ替えた。
 
その後《かぶちゃん》は31日の昼までリハーサル役を務めた。彼は体力は充分あるので、このくらいの長時間稼働は平気である。ついでに歌もわりと上手い。但しアクアや葉月ほどは高い音が出ないが、その程度は元々リハーサル役ということで大目に見てもらえる。
 
葉月は例によって31日の夕方目を覚まして焦ったものの、自分が小浜に来ていることに気づいて「あれ〜?」と思う。ワルツに訊いてみると、ちゃんと自分は紅白のリハーサルをやって、桜野みちるのライブにも顔を出した後、新幹線・しらさぎの乗り継ぎで敦賀まで来て、更にチャーターしているバスで小浜まで来たということだったので、もうそれでいいことにした。
 

1月1日は朝から九州の福岡に移動して、アクアの新年ツアーのリハーサル役を務め、ライブの後は§§ミュージックの新年会に出席する。そして1月6日までツアーに帯同した。しかし葉月の疲れがピークに達しているようだったので、1月6日のツアーの打ち上げは、ゆりこ副社長が葉月には「君はもう寝なさい」と言って早めに離脱させてくれたので、都内のホテルでぐっすりと眠った。
 
そして1月7日からは学校が始まり、西湖はまた朝から女子制服を身につけて学校に通い、夕方からはアクアの代理をするという生活に戻った。
 

門脇真悠は2019年1月22日(火)C学園高校のに推薦入試を受け、あらためてピアノとヴァイオリンの演奏に歌唱をして面接を受け、無事合格者として発表された。これで真悠は4月から女子高生になることが確定した。
 
真悠は通学に便利なように、これまで住んでいたマンションから、赤羽駅近くのマンション(アクアが住んでいる所より、学校へは遠いが家賃がもっと安い所)に引っ越した。引越はわざわざ高松から出て来てくれた両親や姉の晶(あきら)、4つ下の弟・瀬那(せな)、仲の良い姫路スピカや山口暢香なども手伝ってくれた。父が荷物を見て
 
「お前、男物とか全然持ってないんだな」
と言うと
「だってボク女の子だから」
と言っていた。
 
もっとも姉からは
「女の子を主張するなら“ボク”はやめたら?」
と言われていた。
 

「だけど弟さんも美少年だね」
「ああ、こいつ可愛いよね」
「セナ君、女装とかしないの?」
「しません」
「でもスカートくらい穿くんでしょ?」
「穿きませんよぉ」
「でも女の子に間違えられることあるでしょ?」
などとスピカが言うと、瀬那は恥ずかしそうにしている。
 
「あまり唆さないでよ。この子がその気になったら、父ちゃんが悲しむから」
と真悠。
 
「確かに男の子を2人も作ったはずがどちらも女の子になっちゃったら辛いね」
「でもセナ君、女の子になりたいと思ったら、声変わりか来る前に女性ホルモンを真悠お姉ちゃんからもらって飲むといいよ」
などとスピカと暢香は言い、彼は悩むような顔をしていた。真悠の姉・晶は
 
「三姉妹というのもいいよね」
などと言っていたが。
 
真悠は高校進学の書類を書いてもらうのに1月に高松に帰省した時は、昔自分が使用していた地元の中学の女子制服を瀬那の部屋に置いてきた(男子制服も置いて来た)。瀬那がその女子制服をどうするかまでは真悠は関知しない。
 
その時に真悠はついでに新品の女の子用ショーツ10枚と自分が昔穿いていた普段着のスカート3着(実は姉・晶のお下がり)に、ダイアン35まで6箱(6ヶ月分)置いて来た。瀬那は4月から小学6年生であるが、まだ声変わりは来ていない。ダイアン35は男性化を抑える作用があり、タイのレディボーイさんたちには、この薬から始めたという人も多い。むろん長期間服用すると男性機能そのものを不可逆的に阻害する。
 

真悠自身は小学5年生の時からDian35を飲んでいて、中学生になってからプレマリン(エストロゲン・卵胞ホルモン)に切り換え、中2になってからはそれにプロベラ(プロゲステロン・黄体ホルモン)も加えた。エストロゲンは女性的な身体を作る作用、プロゲステロンはエストロゲンを摂っている前提でバストを大きくする作用がある。真悠のバストは中1の頃は微かに膨らみかけくらいの感じだったが、中2の終わり頃にはAカップ程度まで膨らんで来た。今はBカップのブラジャーをつけている。
 
なお女性ホルモン剤は概して血糖値をあげるので、これを飲む人はカロリーのコントロールをしっかりやらないと糖尿病を引き起こす危険がある。真悠は姉に言われて食事のカロリー計算をきちんと行い、血糖値を自分で測定しながら摂取していた。
 
真悠のおちんちんはDian35を飲み始めて半年ほどしたあたりで立たなくなって男の子型オナニーができなくなったが、その時点ではまだ立たないながらも(指で押さえてグリグリする女の子型オナニーすることで)射精可能だった。しかし飲み始めて1年もすると透明な液だけが出るようになり、やがてそれも出なくなった(でも逝く感覚だけはある)。Dian35を飲み始める以前は、すまいと思っていても毎日(男の子型)オナニーをしてしまっていたが、中学に入る頃には女の子型オナニーは週に1回程度で済む程度に性欲が弱くなった。
 
真悠は小学4年生の時に自分はもうパンツの前の開きは使用しないと決め、最初はパンツの上から出してしていたが、Dian35を飲み始めてからは、立っておしっこはしないと決め、必ず個室に入って座ってするようにした。この頃からパンツも女の子用を使用するようにした(姉のお古を譲ってもらった。ついでにスカートの小さくなったものももらった)。
 
そしてちんちんが立たなくなってからはタックしておくようにしたので、そもそもちんちんに触ることができず、オナニーもしなくて済むようになった。ちんちんというのは、お股でぶらぶらしているとつい触ってしまうが、触(さわ)れないと意外に触らないまま済むものである。週に1-2回タックを解除してメンテするので、その時つい男の人に抱かれるような妄想をして(女の子型)オナニーをしてしまう。
 
(普段の日はお風呂で、アクアのマネージャー山村さんが渡してくれた、筒型で皮むき機能まである自動洗浄機をタック内に挿入して洗っている。皮が剥かれる時は少し痛いし、グランズ部分が洗われる時は刺激が強すぎてとても辛く、まるでレイプでもされている気分になるが我慢である。山村さんによるとアクアはもっと小さい直径のものを使っているということで、自分のだって小さいと思うのにこれ以上小さいって、どんなちんちんなんだと思う。そんなに小さいなら声変わりが来るわけないと納得してしまうが、そんなに小さいというのは絶対女性ホルモン飲んでると確信している)
 
また真悠は、ちんちんのサイズ自体以前より小さくなっている。小学5年生の時に計ったら(大きくなった状態で)7cmあったのが、現在は(手で引っ張って伸ばしても)5cmくらいしか無い。多分睾丸も小さくなっているんじゃないかなと思う。
 
真悠は他人には「ボクは男の子ですよ」と言っているものの、本当はあまり男の意識は無い。恋愛対象は男性であるが、自分はゲイではないと思っている。要するにNon-Binary に近い。実際「自分はMTXです」と発言したこともある。まだ「自分は女です」と主張する自信が無いだけで本当は自分は男ではない気がしている。その内、性転換手術とか受けちゃうかも知れないなと思う(コスモス社長には性転換手術する時は3ヶ月お休みあげるよと言われた)。
 
真悠は中学に入った頃は男子制服で通学しつつ、女子制服も所有していて、昼休みや放課後にはそれに着替え、部活のコーラス部でも女子制服でソプラノの列に並んでいた。しかし§§ミュージックの研修生になり東京に出て来てからはこちらの中学校では一貫して女子制服で通学しており、男子制服は買っていない。
 
真悠が事務所と交わした契約書(B契約)では、24歳になるまでは“男性との”交際・婚約・結婚、“妊娠・出産”が禁止されている。つまり女性との交際や結婚は禁止されていない!が、むろん真悠は女性と恋愛したり結婚したりする気は全く無い。妊娠・出産は、あまりできる自信が無い。
 

2019年2月16-17日、アクアと葉月はアクアの新譜『白い霧の中で』のPV撮影のため、長野県までやってきた。この町は霧がよく発生することで有名である。撮影クルーは朝東京を出て。お昼頃に現地に着き、最初は共演する信濃町ガールズの三田雪代・南田容子(2人とも葉月と同じく高1)と一緒に霧が晴れているシーンの撮影をする。
 
そして日が落ちて霧が出始めた所で、霧の中の撮影をした。この日の撮影は21時までおこなって、ホテルに引き上げる。明日は早朝また撮影しますということで明日は午前4時ホテルのロビーに集合なので、葉月はすぐ寝なきゃと思い、お風呂に向かった。ホテルの部屋は、アクアはバス付きシングルで、葉月は三田雪代・南田容子と一緒に3人で4人用和室である。お風呂は大浴場に行くのだが、雪代は
 
「疲れたから取り敢えず寝る。お風呂は明日の朝入る」
と言って眠ってしまった。
 
それで葉月は容子と2人で着替えとタオルを持ち、ホテルの浴衣を着たまま地下の大浴場に向かった。
 
殿様・姫様と書かれた暖簾がある所まで来る。一瞬立ち止まるが、容子に
「何悩んでるの?男湯に突撃する?」
と言われ
「さすがに無茶だよねぇ」
と言って、一緒に姫様と染め抜かれた方の暖簾をくぐる。入口の所に居た40代の女性従業員がバスタオルを渡してくれた。
 
一礼して受けとり、中に入る。
 
これで女湯5回目か、と思う。
 

服を脱ぎかけた時
「あれ?セイちゃん?」
という声が掛かる。驚いてそちらを見ると従姉の紅良々(くらら)だ。
 
「あ、クラちゃん」
「やはりセイちゃんだよね。なんであんた女湯に居るの?」
と彼女は言う。
 
ちょっとヤバい所でヤバい人に会ったなと西湖は思った。紅良々の言葉を聞きつけて入口の所にいたおばちゃんがこちらに来る。
 
「お客さん、どうかしましたか?」
「いや、この子、男の子なのになんで女湯に入ってきたんだろうと思って」
 
と紅良々。紅良々は自分がヤバい発言をしていることを認識していない。
 
「お客さん、男なんですか?」
とおばちゃんは西湖に厳しい顔で訊く。男なら痴漢として警察に突き出すぞ、という感じだ。
 
西湖は何とかなるような気はしたものの、どうすればいいのか瞬間的には思いつかなくて
 
「えーっと・・・」
と言った。
 

その時、隣にいた容子が言った。
「脱いでみれば分かる」
 
それで西湖も
「そうだよね」
と言って、浴衣を脱いだ。キャミソールも脱ぐと、大きな胸を保持するブラジャーと、何も盛り上がりの無いショーツのラインが露わになる。紅良々が「えー!?」という顔をしている。
 
西湖は後ろ手でブラのホックを外すとそれを取り外す。Bカップのバストが露わになる。乳輪も発達している。ショーツを脱ぐと、何もぶらさがってないお股が露わになる。毛の向こうに縦の線も見える。
 
「女の子だね!」
とおばちゃんが言う。
 
「女湯に入っていいでしょうか?」
「もちろん!あんたを男湯に入れたら、うちのホテルが摘発されちゃう」
それでおばちゃんは
「疑ってごめんねー」
と言って入口の所のカウンターに戻った。
 
紅良々が
「変なこと言っちゃってごめんね。でもセイちゃん、女の子になっちゃったの?」
と小さな声で言う。
 
「西湖ちゃん、去年の春に女子高に進学したんですよ」
と容子が言った。
 
「そうだったんだ!」
 
「進学前の3ヶ月くらいお仕事休んで、あの時、性転換手術を受けたんだよね?」
と最後の方は西湖に確認するように言うが、西湖は何も答えない。えーっと、うちの事務所の中では、ひょっとしてそういう話になっているんだろうか、などと考えている。
 
「すごーい。でもセイちゃんは女の子にしてあげたいと思うくらい、女の子らしかったよ。舞台でもいつも女の子役だったし」
 
と紅良々は感心するように言った。黒部座では紅良々も西湖もしばしば子役として舞台に立っていたが、どらちも女の子役としてであり、男の子役は別の従兄の渚君がすることが多かった。実は紅良々でさえ男役をしたことがあるのに、西湖は男役の経験が無い!
 
「でもだったら、一緒に入って中でおしゃべりしようよ」
と紅良々は言い、紅良々も容子もさっと服を脱いで、3人で一緒に浴室へ移動した。
 

2019年2月27日(水)-3月1日(金).
 
西湖の高校では2学期の期末テストが行われた。実は1学期の時は西湖は多くの科目で赤点を取り、追試を受けてやっと通してもらったのだが、結果的にかなり仕事を休むはめになった。今の時期は『少年探偵団』の撮影も大詰めに近づき、スケジュールが立て込んでいるので、追試にならないよう頑張らなきゃと思って西湖は車で移動中なども教科書を読み、深夜に帰宅した後も問題集などをやったりして頑張って勉強していた。
 
「ねえ、西湖ちゃん、どのくらいの成績取れると思う?」
「平均点で10点くらいじゃない?」
 
と西湖のアパートに頻繁に訪れるおキツネさんたちは話していた。
 
「だいたい周期律表も覚えてないし。水兵リード祖父の船とか言ってたよ」
「どういう原子記号なんだ?」
 
「不規則動詞の変化がほとんど分かってない。I goed to school. なんて言ってた」
「だいたい三人称単数のsをすぐ忘れる」
 
「連立方程式のタスキ掛け法を全く理解していない」
「連立どころか、こないだ 5x = 3x + 2 を解けなかった。 x=2 と答えてたよ」
「変格活用どころか、下二段活用も分かってない」
 
「やばくない?」
「この高校は留年させることはないけど、3−4回追試を受けないといけないかも」
「でも西湖ちゃん、仕事も忙しいんでしょう」
「だったら私たちで何とかしてあげようよ」
 

それで2月27日の朝、彼女たちはここの主である京平を呼んできて、彼の力で西湖を眠ったままにして、代わりにわりと頭のいいタキチという名前の男の子!のおキツネさんが、西湖の振りをして、西湖の女子制服を着て学校に登校し、代わりに試験を受けた。タキチは女の子下着に、女の子の制服を着て嬉しそうにしていた。
 
「タキちゃん、いっそ女の子に変えてもらう?」
「京平さんのお母さんなら男の子を女の子に変えたりできるよ」
「西湖ちゃんもそれで女の子にしてもらったからね」
「女の子になるのは嫌だけど、ボク時々この服着たい」
「まあいいんじゃない?でも男だとバレないようにしろよ」
 
と女の子キツネたちから言われる。
 
タキチは、あまり良い点数を取ると不正を疑われると考え、全科目、ギリギリで赤点を免れる点数になるように解答を書いた。
 
西湖は27日は夕方近くになって起きて「ぎゃっ!期末試験なのに学校休んじゃった」と思い、取り敢えず無断欠席のお詫びを大月先生に電話して言ったのだが、大月先生は
 
「何言ってんの?天月さん、ちゃんと出て来てたじゃん。テストの内容も結構しっかりしてたよ。今日の試験は現国が32点、生物が21点、グラマーが35点、数Iが19点。この数Iはおまけで20点ということにしてあげるって森田先生言ってたよ」
などと言う。
 
(実態は追試を受けさせるのが面倒なのでこの程度はおまけする。この学校はそもそも100点満点の20点未満が赤点という、とてもゆるい学校である)
 
「ありがとうございます!」
「忙しいのによく勉強も頑張ってるね。明日のテストも頑張ってね」
「はい。頑張ります」
 
それで電話を切ったものの、西湖は「あれ〜〜?」と思った。
 
「またいつもので、ボク学校に出て行って試験を受けたこと忘れちゃったのかな」
などと思い、取り敢えず買物に行ってきて夕飯に豚汁を作って食べると、また眠ってしまった。
 
次に西湖が起きたのは2月28日の夕方だった。
 
そういう訳で、2月27日から3月1日までの3日間、西湖は自分では全く記憶が無いのに学校で試験を受けたことになっていて、全科目ギリギリで赤点を免れ、追試は受けずに済んだのであった(但し数Iと化学Iはおまけで20点にしてもらった)。
 
ちなみにこの3日間はさすがに仕事は免除してもらっていたのだが、西湖が追試を受けなくて済んだと聞いたコスモスは、代役の手配に悩まなくて済むのでホッとするとともに西湖には
「あんたよく頑張ったね」
と褒めてあげた。
 
京平は毎朝こちらに来て西湖に関する“操作”をしたが、
「全く世話が焼ける。でも西湖さん、とても気持ちのいいボクの巫女長さんだよ」
などと呟いた。
 

2018年12月29日(土)、大田区総合体育館でWリーグ・オールスターが行われた。千里は東軍のメンバーとして出場したが、試合は97-87で西軍が勝った。一応千里はスリーポイント女王になり、ベスト5にも選出されたが、試合に負けたので、大きな不満が残った。
 
2019年1月10-13日、さいたまスーパーアリーナで全日本バスケットボール選手権が行われた。千里たちのレッドインパルスは準決勝でサンフラワーズに敗れ、ベスト4に留まった。この大会でも千里はスリーポイント女王とベスト5を獲得したものの、決勝戦にも進出できなかったことで大いに不満が残った。
 
Wリーグのレギュラーシーズンでレッドインパルスは6位という極めて不本意な成績で終わった。更にプレイオフでは2月16日に行われたセミクォーター・ファイナルで8位のフリューゲル・ローストに、まさかの敗戦。
 
早々にトーナメントから消えてしまった。
 
今季はワールドカップにしても、Wリーグにしても千里にとっては極めて不本意なシーズンとなった。
 

《きーちゃん》は3番に言った。
 
「今シーズンは実は2番(千里2)も調子が良くない。たぶん1番が絶不調になっているのが、2人にも影響しているのだと思う」
 
「やはり影響するんだ?」
 
「結局は同一人物だからね。だから今年これから1番が精神的に回復してくれば、2人とも調子が上がってくると思うよ」
 
「それなら1番には早く復活してもらいたいね」
 

2019年3月11日、和実は仙台市内の病院で帝王切開により“奇跡の子”明香里を出産した。当日、千里3が病院に詰めていて、青葉と一緒に出産をサポートしたが、千里2も何かあった時のために病院内の別室で待機していた。
 
ひとつ間違えば母子共に死亡の可能性もあるという緊張の出産現場に千里2と3が詰めていたので、《きーちゃん》は出産後数時間したところで、その2人を休ませ(青葉も休む)、千里1に和実と赤ちゃんのメンテをさせた。
 
千里1は病室に入ってくると
「和実よく頑張ったね。私出産の時に付いててあげられなくてこめんね。今青葉も休んでいるし、この後は私が夜まで付いているね」
と言った。
 
和実は分娩室の中に千里も居た気がするけど、とは思ったものの、自分の記憶が混乱しているのかもと思った。
 
それで和実は千里と“握手”した。
 
 
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【△・葉月救済大作戦】(2)