【ボクが女子高生になった理由(わけ)】(中)

前頁次頁目次

1  2  3  4 
 
真也は受験勉強でかなり色々勉強したおかげで、中三の時に比べると少しは勉強のことが分かるようになっていた。しかも進学した春菜学院の先生は、授業をかなり懇切丁寧に教えてくれる。中学時代は宿題など一度もやったことなく、先生達にも諦められていたのに、高校に入ってからはなんとか頑張って宿題はしていた。間違いは多かったが。
 
その日も出された宿題をやっていたら母が部屋に入ってきた。「あら頑張って勉強してるわね。偉い偉い。あら、でも部屋がけっこう散らかってるじゃない。それ一息付いてからでいいから、ちゃんと部屋の整理をしなさいね」「はい」
真也は最近ちょっと素直になっていた。自分自身でも少し不思議なのだが、以前ほど他人に逆らったりするような気持ちがなくなってきていたのである。
 
真也はきちんと宿題を片づけて、明日の授業用の教科書・ノートをカバンに入れてから、部屋の整理をはじめた。「明日は家庭科か。中学の時は男子の家庭科なかったからな。裁縫なんて小学校以来だ」
 
中学では男子は「技術」、女子は「家庭」を習っていた。その中学時代にチラっと聞いていたのでは高校では女子は家庭科があるが男子はその分、柔道とか剣道をやるという話だった。しかし真也は人を投げ飛ばしたりとか竹刀で相手を打ったりとかいうのは、なんだか嫌だなと思っていた。ところが春菜学院に進学してみると、やはり男子が少なくてほとんどが女子だからだろうか。全員家庭科を受けるようになっていたのである。
 
部屋の片づけが終わってからパジャマに着替えて寝る。しかしこのパジャマも問題だ。母が買ってきてくれたパジャマは赤い花柄模様で、まるで女の子のパジャマみたいだ。しかもボタンも右前袷せなのである。そのパジャマを着ようとしていて、胸の付近がちょっときゅうくつな感じがした。そういえばこれも不思議なのだが、真也の胸が最近ちょっと大きくなっているのである。「ブラジャーしてるせいかな」そう思ってくびをかしげると、ふと今日は晩ご飯の後であの薬を飲んでいないことに気付き、机の引き出しからその「Ethinyl Estradior」と書かれた薬を3粒飲んで、ベッドの中に入った。
 
翌日、学校に行って朝のホームルームの時、中林先生が突然「今日は健康診断をします」と言った。あちこちから「えー!?」という声がする。近くで「今日の下着はヤバイのに」などという声もした。健康診断か。。。さすがにこれは男子と女子は別だよな、と思ったが結局分けられることはなかった。
 
保健室に行き、下着だけになって列に並ぶ。女の子たちの下着姿は体育の時の着替えでも経験済みなので、もう気にならない。これも最初はかなり刺激的だった。はじめての体育の時間の時、自分はどこで着替えればいいのかな?と思ったのだが、真琴につかまって「なにやってんの。早く脱ぎなさいよ」
と無理矢理脱がされたのであった。ただその時に思ったのだが、女の子の下着姿など現実に見たら、あそこが興奮して大きくなりそうなものだという気もしたのだが、この時(少なくとも小学校の高学年以降、同世代の女の子たちの下着姿を見るのはこの時が初体験だった)特に反応しなかったのである。『エッチなこととか変に想像しないかぎり大丈夫なんだろう』真也はそう思っていた。
 
「でもマヤってほんと胸無いよね」と保健室の中で後ろに並んだ美知が真也にブラジャーの上から触りながら言う。「きゃっ」と思わず短い悲鳴をあげながら『男の胸がこれ以上膨らんでたら、それも変だと思うけど』と思ったが、いきなり触られたのがさすがに恥ずかしかったので、何も言えなかった。
 
やがて真也の番になる。身長と体重、胸囲を測ってから校医の先生の診察を受ける。「うーん。君はまだバストが未発達だね」「そうですか」自分では最近胸がけっこう大きくなっている気がしていたのだが、以前が痩せてガラガラで、あばら骨が見えていた状態だったから、結局は男子の標準より小さいのかも知れない、と真也は思った。
 
「生理はちゃんと来てる?」「えっと」「生理はいつあった?」「整理ですか?」真也は昨夜部屋の整理をしたことを思い出した。でも、どうして、お医者さんにそんなこと聞かれるんだろう。「昨日です」「あっそう。その前の生理は?」うーん。部屋の整理っていつ頃したろうか。「ちょうど一月くらい前です」「じゃ順調に来てるんだね。じゃあまり心配することないでしょう。そのうちもっと発達するだろうから。お風呂に入った時によく胸のまわりをマッサージして、それから腕立て伏せをたくさんするといいよ」
「はい、分かりました」校医の先生はそう言って、診断書に『問題なし』と書き込んだ。真也は席を立ちながら、腕立て伏せか。そうだよな。自分はやっぱりもっと身体を鍛えなきゃ、と思った。
 
その日の授業が終わってから、真也は体育館に行った。チアガールの練習である。これも最初にその衣装を見た時にはほんとに「参った」と思った。母の気まぐれでスカートを履かされるようになってから2ヶ月、たしかにスカートを履くのには慣れていたが、チアガールの衣装はそんな生やさしいものではなかった。それはほとんど裸同然という気がした。ただ、軽犯罪法でつかまらない程度に必要な場所を布で覆っているという感じである。
 
応援のリーダーと聞いて、最初詰襟姿などを想像してしまったのだが、正直な話、詰襟の応援団だったら真也はとてもやれる自信はなかった。元々おとなしい性格なので、そういう「おとこっぽい」ことが似合わない。といって男がチアガールしてもいいんだろうか、という気もするのだがもともと男子の少ない学校だし、そういうことになってしまうのだろう。チアガールの中に自分以外にも男子はいないかな?と思って見たが、よく分からなかった。女の子に見える男の子はいるだろうし。
 
その日は高体連が近づくので練習に熱が入り、けっこう汗をかいた。そこで家に帰るとすぐにお風呂に入る。「あっそうだ。胸のまわりをマッサージしておけと言われたっけ」真也は湯船の中で乳首から数cm離れたあたりを指でよく揉んだ。『それから腕立て伏せか』真也は浴槽からあがると洗い場で腕立て伏せを10回くらいしようとしたが....2回でつぶれてしまった。「だめだー、これ。よし、これから毎日練習しよう」真也はそう闘志を燃やすのであった。
 
その日もしっかり宿題をしてから、パジャマに着替えて寝ようとして、その前にトイレに行くことにした。最近スカートをいつも履いているので座ってトイレをするのが習慣になってしまった。「そういえばもう随分立ってしてないな」と思って自分が立っておしっこをするところを想像してみたらなんだか違和感を感じた。「もう立ってできなかったりして」などとつぶやいて小さく笑う。しずくを拭きながら「あれ、そういえば、アレも最近してないな」と思った。というより全然したいと思わないのである。中学時代は3日に1度はしていたのに。久しぶりにしてみようかなと思って少しいじってみたが、あまり気乗りしない感じもして、すぐにやめてしまった。
 
いつもの薬を3粒飲んでからベッドに入る。「そういえば結構自分も最近女っぽくなってる気もするな」とふと思った。やはりスカート履いて、毎日女の子たちの中で暮らしているからだろうか。いっそ、本当に女の子になれないものかな、って無理だよな。あれ?でもなんか中学の時に誰か言ってたな。男を女に変える手術があるとか。何て言ったっけ?性変換手術?? うーんなにか違ってるような気もするけど、まぁいいか。どんな手術なんだろう。何とかを切って何とかに変えるとか言ってたような気がしたけど、何を切るのかな。。。でも女の子になったら、赤ちゃんとかも産むようになっちゃうんだろうか。それは面倒くさそう。赤ちゃんは産まなくてもいいんだけどな。
 
そんなことを考えながら寝たせいだろうか。その日、夢の中で真也は女の子になって、白いワンピースを着て、誰か知らない男の子とデートをしていた。
 
---------------
 
高体連の応援はハードだった。バスケットの試合とバレーの試合は別々の会場になっているので、その間の移動でけっこう疲れる。そして試合があっている最中はずっと声をあげ、手を振り足を振り上げの応援。これって、ひょっとして選手よりきついんじゃなかろうかとさえ思った。更には、今年は思いがけずソフトボールもいいピッチャーが1年に入ったせいで1回戦を突破。2回戦からは応援を頼むといわれ、それも加わってたいへんなことになった。いくつかどうしても時間帯が重なるところは2チームに分けて、OGの応援も得て乗り切った。結局、バスケットとバレーは
準優勝、ソフトボールはなんと優勝し、夏の全国大会への出場権を得たのである(*1)。
 
夏が近づいてきて、体育の時間にプールで水泳があることになった。来週水泳だと体育の先生から聞かされ、購買部に学校指定の水着を買いに行く。真也は男子用を買うつもりだったのだが、身長とバストを聞かれ、それに答えると自動的に女子用のそのサイズの水着を渡されてしまった。
 
まぁいいかと思って家に帰ってから付けてみる。女子用の水着なんて付けられるだろうかと思ったが、特に着てみて変な感じはしなかった。これでもいいかもな、と思って少し身体を動かしてみたら、ぽろっとアレがこぼれてしまった。「うーん、やはり無理があるんじゃ」と思い、そのことを母に言ったら「あら、ちゃんとアンダーショーツは付けた?」と聞かれる。何それ?と聞くと、じゃ買ってきてあげるといい、母が黒い水泳用アンダーショーツとスイムカップを買ってきてくれた。
 
アンダーショーツに慎重にアレを収めてから学校指定の水着を着てみる。すると身体を動かしてもこぼれたりしない。これはすばらしい。ついでにショーツの中に収めているので、盛り上がりが無く、まるで女の子みたいだ。「これも付けなさい」といわれてスイムカップを渡された。
たしかに最近バストが大きくなってきていて、特に乳首も大きくなっているので、そのままだと乳首が水着に擦れる感じで痛かった。スイムカップを入れるとそれが擦れずに楽になった。
 
「ねえ、お母さん。最近ちょっと胸がかなり大きくなってきてるんだけどブラジャーしてるせいかな」と真也は聞く。「そうかもね。しっかりブラジャーでおさえて肉がよそに流れるの防いでるから。問題ないわよ。あら、でも今のブラは少しきつくない?」と聞かれた。確かに今付けているAカップのブラジャーだと、胸の付近の肉を完全におさめきれない感じもある。母にそういうと「じゃ今度Bカップ買ってきてあげるから」と母は言った。
 
水泳の授業の日はアンダーショーツは面倒なので家からもう普通のショーツの下に履いて出かけた。そして下着を全部脱いで水着に着替えていると、やはり触られた。基本的には水着に着替えると時はドア付きの仕切りのある所に入って着替えるのだが、みんな勝手に他人の着替え中に侵入してきて触られるのである。真也はちょうど全部脱いでアンダーショーツだけになっていた所に侵入されてしっかりヌードを見られた。真也は向こうも笑いながら触っているので思い切って触り返してやった。すると「きゃー」
とか言いながらやはり顔は笑顔である。真也は少しずつ女の子同士の
「裸の付き合い」??の感覚が分かりだしていた。
 
女子用の水着を付けて泳ぐのは初めてなので少し不安があったが、実際に水の中で動いてみると、かえって男子用の下だけの水着より動きやすい気がした。これいいなと思う。市民プールとかに行く時もこれで行こうかなと思った。それに考えてみると胸がけっこう大きく、一見すると
女の子のバストみたいに見えないこともないので、男子用の水着で泳いでいたら騒がれるかも知れないという気がする。しかしその場合、更衣室も女子更衣室だろうか、と考える。そこでターン。くるっと水中で身体を回してから泳ぎながら思うに、やはり女子更衣室に入っていいような
気がしてきた。最近外を歩くときいつもスカートなのでトイレなども
女子トイレに入るのが普通になっていた。初めの頃は男子トイレに入っていたのだが「お前女子トイレに行けよ」と何度か言われ、おそるおそる女子トイレに入ると誰にも何ともいわれないので、それに慣れてきていた。
 

 
夏休みになってソフトボールの全国大会があり、真也たちはチアリーダーとして応援のため、今年の大会がある静岡県のとある町までバスで行った。さすがに全国大会なのでOGも含めて、県大会の時の倍以上の応援団が結成されている。
 
バスで夜通し移動してきて、疲れて宿舎になっている学校の関係者が所有している保養所のような建物に付くと、みんなぐったりとしてめいめい、勝手にその付近に座り込んでしまう。が、3年生のリーダーの「練習するよ」
という声が響いた。みんなはもう半分フラフラになりながら結局3時間ほどの練習をこなす。そのあと、夕食になったのだが、睡眠不足の上に疲れと満腹感で、食堂になっていた大広間でそのまま眠ってしまう生徒が相次いだ。そして真也もそのひとりだった。
 
夜11時頃、遅れて到着したこの保養所の管理人の長沼圭子は大広間の女生徒たちの醜態を見ると、大きく手を広げて「呆れた」という仕草をし、毛布を出してきて、寝ている生徒たちに掛けてあげた。その時、彼女はふと真也の姿に目を留めた。そして何かよく分からない違和感を感じながら真也に近づいた。
 

「きゃー」悲鳴を聞いて長沼圭子はそちらを振り返った。カメラを手にした男が慌てて逃げようとしている。「いつの間に。。」圭子は近くに転がっていたソフトボールに目を留めると男めがけてビュン、と投げた。
 
「ストライク!」ボールに当たって男が倒れる。そこに悲鳴で目を覚ました女生徒たちが男に飛びつき、取り押さえた。
 
「なんだい、あんたは?」圭子が少しドスの効いた声で恫喝し、睨み付ける。
「済みません。済みません。」
「取り敢えず、こっち来な」
圭子は男を引き立てて、大広間から出ていった。
 
「何?何ごと?」今頃起きだす女生徒もいる。真也もそのひとりだった。
「痴漢が入ったみたい」
「管理人さんが引き立てていった」
「おー、可哀想に」
「何が可哀想なの?」
「ここの管理人さんのお仕置きは、こわ〜いって噂だよ」
「なんかしちゃうわけ?」
「うん。なんかしちゃうらしい」
 
真也はその「なんか」の内容を聞きたい気がしたが、眠たさが勝って、そのまままた寝てしまった。
 

1時間後、肩を落とした様子で男が出ていくのを長沼圭子が玄関の所で見送ったところに、引率の片山先生がやってきた。
 
「済みません。何かあったんですか?私もすっかり寝てしまっていて」
「ああ、大丈夫。夏はよくあることです。痴漢ですよ」
「おやおや。警察に突きだしたんですか?」
「本人が警察だけは勘弁してと泣いて頼むものですから」
「じゃ、例のお仕置き?」
「えぇ。。。。。」
圭子はもうひとつ何か言おうとしたが、まぁいいか、と思い言うのを
やめてしまった。
 

 
翌日、真也は起きた時、頭がガンガンする気がした。うーん風邪を引いたかなと思いながら起きあがって洗面所に行くと顔を洗い、そのついでにトイレにしばらく籠もっていた。やがて少しずつ目が冷めてくる。
「マヤ?いる?」誰かが探しに来たようだ。「あ、はーい。今いきます」
真也は慌てて立ち上がるとパンツを上げ、個室の外に出た。その時何か小さい違和感を感じたが、今は気にしている暇がないと思った。
 
「あ、マヤどこに行ってたのよ?もう出発するよ」「えー、まだ朝ご飯食べてないのに」と言ったが「寝坊する方が悪い」と一喝され、そのまま会場へ向かうバスに乗る。
 
バスの座席に座った時にアノ付近がちょっと痛むことに気付いた。またはさんじゃったかな....と真也は思った。袋の一部を下着の間にはさんでしまい、痛くなることはよくあるのである。でもここで女の子たちがたくさんいる所で直す訳にもいかない。会場についてからトイレで修正すればいい......と思ったのだがその暇がなかった。
 
バスが渋滞で遅れてしまい、会場についたのはもう試合開始の10分前だった。真也はトイレに行こうとしたが「応援してれば汗で出る」などと無茶なことをいわれ。そのままスタンドに直行することになった。
 
1時間半ほどぶっとおしの応援。夏の暑い日差しの中なので、最後は
もう身体が自動的に動いているような感じであった。試合は負けてしまった。大敗である。県大会は制しても全国のレベルの高さを見せつけられた。県大会を優勝に導いた1年生ピッチャーは悔しそうにいつまでもマウンドを見ていた。彼女なら来年は最低1勝はするかも。真也はそう思った。
 
さて試合が負けてしまったので、今日はもう宿泊しない。このまま地元に帰ることになった。また10時間バスの旅である。さすがにみんなから「休ませてくださーい」という声があがったが、引率の先生は「予算がないもん」とにべもない。チアガールたちは渋々、またバスに乗り込んだ。その頃、真也はもう体中の感覚がまひしてしまい、あの付近の痛みのことも忘れていた。
 
バスの中はもうみんな爆睡であった。かなりのいびきを立てている子もいたが、気にするような人もいなかった。運転手と引率の先生以外は
全員寝ていた。
 
「御免なさいね。無理言って」と先生が運転手に語りかける「全然平気ですよ。応援はパスさせてもらってゆっくり休みましたから」「1日休んでからというのも考えたんだけど、昨晩は痴漢が出たらしくて」「宿泊所にですか」
「そう。管理人の人が見付けて、外に叩き出したらしいわ」「警察に突き出さなくて良かったんですか」「こういう奴は警察に捕まえてもらってもすぐ再犯するから二度とこんなマネができないようにしてやった、と管理人さんが言ってた」「二度と.....怖ぇぇ。何したんですか?」「さあ。でも管理人さんはお医者さんだから。怖いことしたかもよ」「うー。男の耳には聞くのは毒みたいだ。さあ運転に集中、集中、っと」
 
その後は先生と運転手の会話はあたりさわりのない芸能界の話や政治家の話などに移っていった。
 
やがてバスが止まって先生が「みんな降りて!」という声がした。すぐには起きない子もかなりいる。真也も近くにいた2年生の人から揺り起こされて目が覚めた。外に降りてみると、まだ地元の町ではない。
 
「○△温泉?」「そう。みんな休ませてと言ってたから、ここで休憩。汗でも流してからまた出発よ。ここで1時間だけ休むから。入浴料は
私が全員分、出してあげる」「わーい」歓声があがる。
 
真也も汗が流せるのは嬉しいと思った。温泉は当然入口が男女に分かれている。真也は当然「殿様」と書かれているほうに入ろうとしたが、近くの女の子に腕を引っ張られた「何やってんの?私たちはこっち」と言われて、そのまま「姫君」と書かれたほうに引っ張り込まれてしまった。
 
男の子が女湯に入っていいのかなと思ったが、みんなからほとんど女の子たちと同様に扱われているのには慣れている。
 
それにしてもさんざん体育の着替えの時とか健康診断とかで女の子たちの下着姿や裸は見慣れているが、温泉となると最後の1枚まで取ってしまう。それはちょっとまずくないかと思ったが、疲れているからみんなと一緒にいないと置いてけぼりをくらったりする可能性もあるなという気がした。女子トイレはいつも入っていても女湯は未体験だが、なんとかなるかも。真也はそう思うことにした。
 
脱衣所でみんなさっさと服を脱ぐ。真也も上半身はためらわずに服を脱いだ。胸が最近大きくなっていて、胸だけみたら女の子でもこの程度のサイズの子はいるかも知れないと思ってもらえる程度なので開き直れる。しかしさすがにショーツを脱ぐ時はあそこを見られるのは恥ずかしいので慎重にタオルでその付近を隠しながら脱いだ。
 
他のみんなをみると大胆にその付近を見せている子もいれば、真也と同様にタオルで隠している子もいる。なかには胸とその付近と両方隠している子もいたが、そこまで隠しているとあっという間に他の子にはぎ取られていた。
 
「こわー」真也ははぎとられない内にと、さっさと浴室の中に入ると、からだに少し浴びせ湯をしてからさっさと、お湯の中に入ってしまった。
 
お湯は温泉の成分で不透明である。これなら他の子にあそこを見られることもないだろうからいいだろう。真也はそう思う。まさかここまで
触られることもないだろうし。それに幸い疲れているせいか、タオルの上からアレにさわると小さいまま。立つほどのエネルギーが残っていないのだろう。そもそもなんだか最近ずっと立ちにくくなってるし。と
真也は思っていた。
 
中には走り回ったり泳いだりしている元気な子もいたが真也はひたすらお湯に使って手足をもみほぐしていた。一度髪を洗ってからまた入ってからだを暖め、それからあがって身体を拭き、服を着た。その時なにかアノ付近がいつもと違うような気がしたが、まわりは女の子たちばかり。確かめもできないので気にしないことにした。そしてすっかりその事は忘れてしまっていた。
 

応援が終わって家に帰ってからは真也は3日ほどそのままぐったりと
寝ていた。いくら16歳の高校生でも、体力の限界というものがある。そして3日目にやっと図書館にでも行って夏休みの宿題をしようかと
思い、その前にお風呂に入らなければと思って入り、身体を洗っていて初めてそのことに気付いた。
 
股間を洗った時にいままでと違う感じがした。排尿用の突起部分をきれいに洗い、その下にある袋を洗った時に、今までならその中にコロコロするものがあったのがその日はその感触がなかったのである。「え?」
改めて両手で触ってみると袋だけで中身がない。「身体の中に入っちゃったのかな」と思い、出てくるようにお腹に力を入れるが出てくる気配がない。「深くまで入っちゃったのかな」真也はそう思うと、そのうちきっと出てくるだろうと考え、とりあえず気にしないことにした。
 
お風呂からあがって身体を拭き、下着を付ける。するとショーツが今までよりピッタリ履けるのが分かった。「これいいかも知れないな」真也は思った。「このままずっと降りて来なかったら楽かも」とも思い、明るい色のキャミソールと短いスカートを着ると軽くお化粧して外に出かけた。
 

(*1)ソフトボールの全国大会の日程・場所についてはこの物語に都合のよいように変更しています。
 
 
前頁次頁目次

1  2  3  4 
【ボクが女子高生になった理由(わけ)】(中)