【春楽】(2)

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その日の夕食は新鮮な海の幸をメインにした天麩羅であった。母が買ってきてくれたお魚を中心に野菜なども含めて青葉がどんどん揚げていく。
「美味しそうだね〜」
などと言って彪志が摘み食いをしている。母は台所の様子を雰囲気で感じながら、楽しそうに雑誌を読んでいる。やがて
 
「天麩羅できあがり〜」と言って、青葉と彪志がふたりで皿を食卓に運ぶ。
「なんか揚げてる最中に2割くらいは彪志のお口にそのまま入った」
「青葉のお口にも少し入れてあげたよ」
「おやおや、楽しそうだね」と母。
 
青葉と彪志で協力して食器とお箸を配る。小皿に大根おろしを盛り、別途小鍋で作っておいた天つゆを注いで「いただきまーす」と言って食べ始める。
 
「揚げたては美味しいね」
「私、このおうちに来て初めて揚げたての天麩羅というもの食べたの。こんなに美味しい物だとは知らなかった」
 
「お勉強は進みました?」
「あ、えーっと。夜に頑張ります」と彪志。
「さっきは別のことで頑張っちゃったからね」と青葉。
「おやおや」
「ちょーっ」と彪志が焦っている。
「その件ですが」と彪志が頭を掻きながら弁解するように言う。
「青葉さんと話して、そういうことは当面月に1回までにしようということで約束しました」
「まあ、受験生だしね」と母は少し楽しそうである。
「はい」
 
「リアルと夢で1回ずつまでって約束した」と青葉。
「あの夢ね」と母は笑っている。母も当然青葉の「夢の侵入」の常連被害者である。
「あの夢ならできちゃうでしょうね」
「あの中では、私完全な女の子なの。だから女の子の器官でできちゃった。というか、できちゃったから、私が完全な女の子だって分かった」
「あらまあ。でも夢でも月に1度だけなのね」
「はい。そういうことにしました」
母は楽しそうに頷いている。
 
「あ、そうそう。彪志、悪いけど御飯の後、2時間くらい1人にして」
「お仕事だね」
「うん」
「じゃ、茶碗洗うのは俺がやっとくから」
「えー、洗うのまではやるよ。彪志は問題集頑張ろう」
「じゃ、一緒に洗おうか」
「そうだね」
「あんたたち、まるで新婚さんみたい」
「あはは」
 
ふたりで一緒に洗い物をしたあと、取り敢えず一緒に2階に上がり、彪志は勉強の道具を持って下に降りた。先にお風呂に入ってから勉強する。青葉は自室で「お仕事」である。今日の依頼分は震災の遺体捜索1件、運気が悪いとのことで家相の相談1件、体調が悪いということでの相談1件。それぞれチェックして回答と慶子への指示をメールした。その後、千里に電話して少しおしゃべりしながら30分ほどの遠隔ヒーリングをした。下に降りていくと彪志が母とあれこれ話しながら問題集を解いていた。「お風呂もらうねー」と言って青葉は浴室に直行する。上がると彪志はいなくて母がひとりで雑誌を読んでいた。
 
「彪志さん、上に行ったよ」
「ありがとう」
「あ、青葉」
「はい」
「耳貸して」
「うん?」
右耳を母の顔の傍に寄せる。母がささやくように言う。
「ありがとう。でも、お母ちゃん、物わかり良すぎ」
「桃香のおかげで私の常識は破壊されているから」
「あはは・・・」
「あの子も堂々とうちに恋人連れ込んでたからねえ。中学の頃から」
「女の子の恋人だよね?」
「もちろん。私てっきりふつうの友達と思ってて、うっかり戸を開けて、こちらが悪いことしたみたいな気分になったもん」
「わっ」
 
「最初に千里ちゃん連れてきた時は、桃香、この子と結婚するつもりなのかな?男の子であれば女装癖くらいあってもいいけど、なんて淡い期待をしたんだけど、千里ちゃん自身が女の子になっちゃうみたいだしね」
「ちー姉は多分来年性転換しちゃうと思う」
「千里ちゃん、いい子だからなあ。桃香のお婿さんでなかったらお嫁さんででもいいから欲しいんだけど」
「うーん。。。。。。」と青葉は『受信モード』にしてみる。
 
「ちー姉、ずっとずっと先には桃姉と実質的に結婚するかも。でも多分10年くらい先かな」
「10年か・・・・」
「子供はできるよ」
「千里ちゃん、精子保存してたもんね」
「桃姉の子供は2人、ちー姉の子供は1人かな・・・・あれれ?ちー姉の子供、2人かも知れない。なんか凄い複雑なことが起きるみたいな感じ。よく分からない。子供ができるのは、2人が実質的に結婚するより結構前だよ」
「へー。でもまあ、あの子たち自体が複雑だもんね」
「私も複雑でごめーん」
「そうね。でもたいがいのことには耐性できたかも。桃香には一時は孫は諦めてたんだけど、少し期待しておくかな」
 
「私も子供産めなくて御免ね」
「青葉も10年後くらいに、彪志さんと結婚できるといいね」
「うん。私、本気になっちゃった。もし捨てられたら多分5-6年立ち直れない」
「もしそうなっちゃった時、青葉は私の娘だってこと忘れないでね。いつでも私の所に戻って来ていいんだから」
「ありがとう、お母ちゃん」
 
しばし母と少ししんみりした感じの話をしてから上に上がった。襖を開けたら、何やら彪志が慌てて服の乱れを直している。青葉はすぐに襖を閉めた。それから再度襖を細く開けて、小声で尋ねる。
 
「ごめーん。あと5分してから来た方がいい?」
「いや、大丈夫」
「出しちゃった?」
「えーっと、まだだけど大丈夫」
「出しちゃった方が身体には良くない?」
「いや実際問題としてたぶん出ない。今日は2度も青葉としちゃったし」
「じゃ、開けちゃうよ」「うん」
青葉は襖を開けて中に入ると、彪志にキスをした。
 
「お・ま・た・せ。でも、私もう悪いけど寝るね〜。彪志頑張って勉強してて」
「うん。もう少し頑張る」
「私、目をつぶってるから、ひとりでいじってても大丈夫だよ」
「いや、もうしない」
「変に我慢したらよけい気がそぞろかもよ」
「あのねえ・・・・殊更に俺の本能を刺激すること言わないで欲しいんだけど」
「うふふ。今夜は生殺しだからね」
「はあ」
「じゃ、おやすみー」
「おやすみ」
 
部屋には2つ布団を敷いている。その奥の方の布団に青葉は潜り込んで彪志に背を向けた。
 
「ねえ、彪志」
「うん?」
「今度の模試でけっこう志望校振り分けられるって言ってたよね」
「うん。偏差値54以下だったら志望校変えろって言われると思う。合格ラインが58くらいだから。61くらいが安全圏だと思うんだけどね」
「前回の模試ではいくらだったの?」
「えっと・・・・57」
「ね。偏差値60取ったら、フェラしてあげる」
「へ!?」
「して欲しくない?」と青葉はわざわざ起き上がって言う。
「えっとそれって・・・・」
「セックスと別枠でいいよ。ご褒美」
「よし!俺頑張る」
「うん。頑張ってね。おやすみー」
青葉は楽しそうな顔で布団の中に潜り込んだ。
 
「ねえ、青葉?」
「青葉はその・・・男の子のオナニーとかしたことないんだっけ?」
「そもそも立たないようにしてたしね。幼稚園の頃は偶発的に立っちゃった記憶が何度かあるよ。でも立たないようにするやり方分かったから小学校に上がってからは何かの拍子に立っちゃうようなこともなくなった」
「自分が女の子だという意識を持ったのっていつ頃なの?」
「物心ついた時には既にそうだったよ。というか、私、物心つく前、赤ちゃんの頃から、男の子っぽい服を着るの嫌がってたらしい。だから男の子の服を買ってきても全然着ないから、結局姉ちゃんのお下がりの女の子の服ばかり着てたって」
 
「やはり、青葉って、男の子の身体に生まれてきたこと自体が間違いなんだろうな・・・・」
「間違いじゃなかったら修行なんだろうね。凄まじいハンディだもん、これ」
「青葉は既にそのハンディをほぼ乗り越えてしまった気がするけどね。青葉がもともと女の子として生まれていたら、地球を破壊しちゃうくらいの魔女になっていたのかもね」
「あはは、それも面白いね。私、フェアリーちゃんって呼ばれてた時期もあるよ。女の子になっちゃう男の子という意味と、『サンプルキティ』のフェアリーという意味を兼ねて」
 
「『サンプルキティ』?」
「あ、さすがに彪志は読んでないか・・・・そもそも私が生まれる前の漫画なんだけどね。遺伝子実験で作られた凄まじい超能力を持った女の子の話」
「へー」
「私も小学校の時に友達数人と一緒に先生の家に遊びに行った時に読んだんだよね。先に読んでた友達が『この漫画凄い』って言って、私に見せてくれたんだけど。歴史を書き換えてしまう能力を持ってる子で。でも暴走気味で自分では制御できないのよね。だから周囲の人たちの記憶が無秩序にころころ変わる」
「ちょっと迷惑だな、それ」
 
「最後は死んでしまった最愛の男の遺伝子を自分の卵子にコピーして、クローンを産んじゃう」
「それはまた凄い能力だ・・・・青葉、そんなことできないの?」
「無理〜。そもそも私、卵子持ってないし」
「あ、そうか」
 
「うーん。。。。」
「どうしたの?」
「ここの英文の意味がどうしても取れない。青葉、分かる?」
どれどれ、と青葉は起き出して彪志が悩んでいた英文を分かりやすく説明してあげた。
「なるほどそういうことか・・・でも青葉のその英語能力どうやって身につけたの?」
「必要に迫られただけよ。だって魔術関係の専門書、みんな英語だもん」
「そうか。必要性か・・・」
 
その晩は結局、青葉は布団の中、彪志は机の前、という状態のまま12時過ぎまであれこれ話しながら夜が更けていった。
 
翌日はせっかくだから少し2人でお散歩してきたらと言われて、城址公園に母の車で連れて行ってもらった。お昼はふたりで食べるといいよと言われてお金ももらった。お堀に沿って散策し、動物園などにも入ってみる。ペンギンが可愛くてついついふたりで長時間見とれていた。公園内のベンチでお話する。
 
「でもこないだのお葬式、思いがけず大規模になっちゃったでしょ?来てくれた人に渡した交通費とか宿代とかもかなりかさんだと思うし。結局お金は足りた?親父心配してたんだ」と彪志。
「それは大丈夫。どーんと凄い金額の香典包んでくれた人が若干1名いたからね。小切手が香典袋に入ってるとは思わなかったのよ。開けてびっくり。思わず桁を数えちゃった」
「わっ」
 
「師匠は導師を務めた御礼なんて要らんと拒否するし。まあ、元々貨幣経済とは無縁の生活してる人だしなあ」
「山野に寝起きして草や木の実食べてるって言ってたね」
「それも怪しい。実は霞食って生きてるんじゃないかって、菊枝と話したことある。こないだの葬儀の時も食事にはぜんぜん手を付けてなかった。精進料理でさえ、たぶん身体に合わないんだよ」
「それ、ありえそー」
 
「そういう訳で、かなり余っちゃってさ」
「うん」
「舞花さんには電話して、これはさすがに全部は受け取れないから1割だけもらって残りは返すと言ったんだけど、余ったら震災復興のために寄付してなんて言うから、そのお言葉通り残額は市に寄付した。市から感謝状もらっちゃったよ」
「ははは。でも良かったね」
 
「それにこの春から拝み屋さんの仕事で得たお金が全部そのまま貯金に回ってたのよね。今回はそれを一気に使ったし」
「じゃ、無一文になったの?」
「うん。いったんね。でも普段は使い道がないからどんどん貯まっていく。今私の生活費は、お母ちゃんの仕事の稼ぎと、桃姉・ちー姉が仕送りしてくれているお金がベースなのよね。私もお金入れるというのに、お母ちゃん、受け取ってくれないんだもん」
 
「あはは。中学生のバイト代をあてにする親はいないよ」
「うん。それが普通なんだろうね。岩手にいた時は、私お母さんにいつもお小遣いあげてたよ」
「それはやはり変な家庭だよ」
「だよねー」
 
「それと最近気付いたんだけど」
「うん」
「青葉、実のお母さんのことを『お母さん』、今のお母さんのことを『お母ちゃん』
と呼ぶんだね」
「彪志、鋭いね。私自身も最初の頃はちょっと呼び方に混乱があったんだけど、最近それで私の中では安定した」と青葉は笑って答えた。
 

お昼になったので、公園の近くにあった可愛いレストランに入り、彪志はハンバーグセット、青葉は明太子スパゲティを頼んだ。
 
「ハンバーグ少し食べてみる?」
「え?」
「あーん」と言って彪志がハンバーグを少し切ったのをフォークの先に刺してこちらに手を伸ばす。青葉はそれをパクリと食べた。
「美味しい」と笑顔で答える。
 
「じゃ、私のも食べる?」と青葉は言ってスパゲティを少しフォークで巻き取ると「あーん」と言って彪志の方に伸ばす。彪志がパクリとそれを食べる。
 
「なんか、これ楽しい。ね、もっとやろう。もっとやろう」と青葉がはしゃぐ。「OK、OK」と彪志も言い、そんな感じでふたりで食べて、結局ハンバーグもスパゲティもお互いに半分こくらいした感じになった。
 
「よく考えたら、今日って、私達が恋人になってから初めてのデートだね」
「うん、そうなんだよね。デートする前に、お互いのうちに行って親に挨拶したから。俺達ちょっとふつうの恋人と順序が後先」
「明後日はデートの時間が取れそうにないしなあ。こないだがお葬式で潰れちゃったから、依頼が溜まってるのと、明日は向こうのコーラス部の子と会う約束なのよ。その子、私立に進学するつもりだったのが、私がいるからと公立に進学すること決めたのに、私はこの春から富山に転校しちゃったという訳で」
「わあ、それは会ってあげるくらい、しないとね」
 
ふたりは次に会えそうな日付をお互いの予定表を見ながら話してみたが、彪志の模試などがあるので、10月24日まで無理ということになった。ただ9月11日は彪志の学校の文化祭とぶつかるのでデートはできなくても一緒に校内を散歩するくらいはできるかもという話になった。
 
「10月24日の後はもう試験終わるまでは無理かもね。って自粛すべきかもね」
「センター試験が1月14-15日、大学の入試は2月25日。合格発表3月9日」
「じゃ10月24日の後は3月11日になったりして」
「そうなっちゃうかも。これ月に1回なんてものじゃないな」と彪志。
 
「青葉〜、夢に出て来てよ」
「うーん。コントロール効かないからなあ」
「そこを愛の力で何とか」
「会えるといいね」
 
2時すぎに母に車で迎えに来てもらい帰宅した。居間に勉強道具を広げて彪志はひたすら問題集をしている。
「終わりそう?」
「うん。今の所6割くらいまで終わった」
「今夜の頑張り次第だね」
 
「さて、晩ご飯作るね」と青葉は5時になってから今晩のメニューを作り始める。「今日は何?」と彪志。
「今晩は酢豚だよ」と青葉は言って材料を切り始める。
「8人前くらいの材料で作るから、いっぱい食べてね〜」
「ありがとう」
「御飯できるまでの間にお風呂入ってる?たぶんそろそろ溜まってる筈だけど」
「あ。じゃ、そうしようかな」
「あ、溜まり具合確認してから服脱いでね」
「OK」
 
彪志はお風呂場に行き、お湯がだいたい適度に溜まっていることと、お湯の温度がちょうどいいのを確認してから、2階に行って着替えを取って来た。服を脱いで入浴する。身体を洗い、浴槽に身体を沈める。
 
しかし、ほんとに自分はリラックスしすぎるくらいにリラックスしてるな、などと思う。それを考えると、青葉がうちに来た時は青葉はけっこう緊張してたのかも知れないなと考え、次にうちに呼んだ時はもっとリラックスしてもらえるように工夫できないかな、などと考えていた。
 
そんなことを考えていた時、彪志はふと2年前の青葉との出会いのことを思い出していた。
 
それは青葉に逢う数日前の夜のことだった。彪志は夢を見ていた。そこに1年前に彼を振った2つ年下の女の子がいた。
「あれ?こんにちは」
「こんにちは」
「久しぶりだね」
「そうね」
 
通学路が重なっているので実際には彼女とは結構顔を合わせているのであるが片思いで終わってしまったそのロマンスの後、やはりちょっと声を掛けにくくなってしまった感じで、全然会話を交わしていなかった。
「俺、まだ君のこと好きだよ」
「ありがとう。でも、たぶんタケちゃんのお相手は私じゃないよ。ほら、あそこに座っている女の子」
 
彼女が指さす方角に廃止になったバス停の待合室があり、そこで未雨とその妹?が休んでいた。いや、あれは多分話に聞く未雨の弟なんだろう。未雨が女装癖についてよくこぼしていた。でもなんか可愛いじゃん。男の子とは思えない。
 
「川上さんと俺は恋をするの?」
「うん。妹さんの方とね」
「え!?」
 
彪志はしばしばかなり現実感のある夢を昔から見ることがあった。あまりにも現実感があるので、ひょっとしてこれは夢の中に出て来た人物と同じ夢を見ているのではなかろうかと思い、夢に登場した友人に聞いてみたりしたことも幾度とあるのだが、相手はいつも『そんなの知らない』と答えていたので、これはどうも彪志が勝手に見ている夢ではあるようだった。
 
ただ、この手の現実感の強い夢を見た場合、かなりの確率でそれは現実のものとなっていたし、何か迷っているような時にその手の夢を見た場合、その夢の中で起きたり言われたりしたことに従うと、確実に自分の運気が開けていったり困難を打破できたりするのを幾度となく体験していた。
 
その夢を見て数日後に長期入院している父の病気平癒祈祷に来た拝み屋さんが祈祷中に急死する事件が起きる。これはちょっとやばいことになっているぞというのに気付き、親父を説得して少し金が掛かってもいいから誰か高名な霊能者にでも、この件を依頼したほうがいいのではないかと思っていたその翌日、その急死した拝み屋さんの娘さんに連れられて青葉がやってきた。
 
そして現実の青葉を見ると凄まじく強烈なオーラをまとっていた。何だこいつ?何者なんだ?と思う。未雨は何度も同級生になっていたが、ごく普通のオーラだったのに。
 
そして拝み屋さんの娘さんが父に色々質問をしているが、実際にはどう見ても質問しているのは青葉の方だと気付いた。高名な霊能者などに頼む必要はない。この子に協力していれば、この事件は解決すると彪志は確信した。そして青葉は鮮やかにその事件を解決してくれて、彪志の父はすぐ退院できたのであった。
 
青葉本人については当初は少し興味本位で眺めていた。この子が男の子であるというのは知識としては知っている。しかし、現実の青葉を見れば、どこをどう見ても女の子だ。彪志はどんなにきれいに女装している男の子でもちゃんと性別を見破る自信があった。彼自身の強烈な勘が、正しい性別を見分けていた。
 
しかしその外れたことのない勘が、青葉についてだけは『女の子』という判断をしてしまっていた。この子って確かに男の子に生まれてしまったのかも知れないけど、実際の中身は100%女の子なのではなかろうか。そしておそらく体質的にも女の子になり掛けている。女性ホルモンでも飲んでる??彪志はそう思った。
 
何だか面白そうな子だし、夢にも見たことだし、恋人になるくらいはいいよな・・・そう思って口説いてみたら、なかなか落ちない。口説き落とせないものだから、ついつい熱が入り・・・気付いたら自分自身かなり青葉に本気になってしまっていた。半ば勢いで結婚しようなんて何度も言ってしまっているが、ここまで女らしい青葉であれば、結婚しちゃっても悪くない気はしている。
 
なお、彪志がしばしば見る『現実感のある夢』と青葉が本当に侵入してきた夢は明らかに違っていた。青葉が侵入して来た場合、その時の青葉には強烈な存在感があり、これはほぼ現実ではと思いたくなるほどであった。
 
彪志が、そうか夢がきっかけだったんだな・・・と考えていた時、彼はふとあることを思いついた。そうだ!そういうことかも。それでもしかしたら夢で青葉に会えるかも。そう思うと何だか楽しい気分になってきた。
 
お風呂から上がると、食卓に中華鍋が置いてあり、ふたがしてある。
「あ、ごめん。待たせちゃった?」
「ううん。今できたとこ。さ、食べよ、食べよ」
「うん」
 
青葉は笑顔で茶碗に御飯を盛ると、酢豚も皿に取り分ける。
「お代わりはセルフサービスでどうぞ」
「ありがとう。頂きまーす」
 
御飯を食べたあと、青葉が今日の「お仕事」をしている間にも彪志の問題集は進み、出発しなければならない21時すぎまでに8割ほどまで片付いていた。
「わあ、ほんとに頑張ったね」
「あとはバスと新幹線の中でやるよ」
 
母の車で駅前まで送ってもらい、青葉と彪志は一緒に仙台行き高速バスに乗り込んだ。むろん隣り合った席である。ただし一緒に行くのは仙台までで、その後は彪志は一ノ関まで新幹線、青葉は大船渡行きのバスに乗り、今回は気仙沼で降りる予定だ。
「お土産、荷物になるのに御免ね」
「いや、いろいろ気を遣ってもらって」
「お父さんとお母さんにもよろしく」
「うん」
「じゃ、私寝てるから彪志はお勉強頑張ってね」
 
勉強する彪志が灯りを使いやすいように窓際の席に座り、青葉が中央の席に座っている。乗客はほぼ満員。寝る人もいるから迷惑なのであまりおしゃべりも出来ない。独立シートなので、こっそりイチャイチャしたい人には不便だが、彪志は勉強しなければならないので、結果的にはいいんだろうなと自分に言い聞かせて問題集に集中していた。
 
メモ帳を持った手が青葉から彪志の方に伸びてきた。『好き』と書かれている。彪志は微笑んで『好き』と書き加えて青葉に返した。そんな感じでメモ帳で結構会話をした。1時頃まで勉強をした後寝ることにする。青葉のほうを伺う。寝てるかな?と思いつつも小さな声で「おやすみ」と言ったら「おやすみ」という返事が返ってきた。彪志は微笑んで眠りに就いた。
 
夢の中に落ち込んでいく。
 
さて、行けるかな?さっきはまだ起きてたからなあ、と思い、しばし待つ。あ、来た!『やあ』と彪志は声を掛けた。
『あ、彪志』青葉は嬉しそうな声を上げて彪志のそばに寄った。キスする。
 
『良かった。会えた』
『会えて嬉しい』
『せっかく一緒に一晩過ごすのに、イチャイチャできないのは寂しいと思ってたんだ』
『私も−。Hしないにしてもキスはしたかったし』
『そうそう。だから少しおまじないして寝た』
『え?夢で逢えるおまじない、あるの?』
 
『これって、青葉が蝶々なら、青葉の友達が花だと思ったんだ』
『へー』
『だから青葉って、いちばん匂いの強い花に寄って来るんじゃないかと思って』
『ふんふん』
『青葉、しばしば夢の中で友達の相談に乗ったりしてるでしょ』
『してるー』
『何かお悩み持ってる友達がいたら、その念に引き寄せられて青葉、その子の夢の中に入っちゃうんだよ、きっと』
『あ、そうかも』
 
『だからね、今夜は寝る前に青葉に逢いたい、物凄く逢いたい、って切ないくらいの思いに自分の心を暴走させた状態にして寝たんだ』
『それに私が引き寄せられてきたのね』
『そうそう。空振りしたら、とっても辛いんだけど』
『でもそれで逢えたんだ。ありがとう』
 
その夜はふたりで夢の中で1時間くらいおしゃべりしてから
『ほんとに寝ようか』と言って寝た。
 
翌朝5時に起きた彪志は当然既に(4時から)起きている青葉に、念のため
「昨夜の夢、覚えてる?」
と聞いた。
「もちろん。私は蝶々」
と青葉は微笑み、周囲がまだ起きてないような様子を確認して、素早く彪志にキスをした。
 
バスが早めに着いたのでふたりで一緒に早朝から開いている食堂に入り朝御飯を食べた。青葉のバスの方が先に出るので、それを見送ってから彪志は新幹線ホームに向かった。
 

青葉が乗ったバスは10時前に気仙沼の駅前に着いた。迎えに来てくれていた白石さんの車で現場に入る。
 
「ここなんですが、どうでしょう?」
「あぁ・・・・・・」
 
そこは白石さんが経営する会社の寮なのだが、この寮に入った社員がみんな数ヶ月で辞めてしまうといういわく付きの寮なのであった。現在は半年ほど空家状態らしい。
「出るんでしょ?」
「出るという話です」
「風水的に問題がありますね。T字路の突き当たりだし、北側に川が流れていて、西側には池がある。そもそもここ、道路より1段低くなっているから、様々なものが溜まりやすいです」
「対策は?」
 
「お引越」と青葉は笑顔で言った。
「霊道も通ってますけど、それを動かして解決する程度の場所ではないです」
「そうか・・・・」
「T字路の突き当たりですから、今少し低くなっている所に盛り土して同じ高さにしてしまい、お店とか作ると繁盛しますよ」
「ほほお」
「霊道は取り敢えず動かしておきます。ちょっと失礼します」
青葉は出雲の直美に電話をする。
 
「あ、直美。こないだ言ってた件だけど、お願いできる?うん。よろしく」
青葉はそう言うと、携帯をつないだままαの状態になる。これで直美の「端末」
になるのである。
「青葉・・・あんた凄い優秀な端末になってるね。まるで私自身がそこにいるみたい。前やった時より凄くパワーアップしてる」
「どう?霊道の状態」
「これは単純なもの。少しずらすよ・・・・・・終わった」
「ありがとう」
青葉は白石さんに顛末を報告する。
 
「ここ、飲食店とか繁盛したりする?」
「飲食店いいですね。大衆的なものであれば」
「よし、考えてみよう」
と白石さんは言った。
 
そのあと白石さんの自宅に行った。
「実はこの家も何か問題があるんじゃないかという気がしていてね・・・」
などと言う。
奥さんがお茶を入れてくれた。
「ありがとうございます」
「あ、お前も座って。ここの所起きてることをこの子に話してくれないか」
「こちらは?」
「八島賀壽子さん知ってるだろ?」
「ええ。昔実家でお世話になったわ。私がまだ高校生の頃」
「その曾孫さんで、跡を継いだんだよ」
「わあ、そうだったの!」
「まだ中学生だけど、凄いんだ、この子」
 
ふたりから色々話を聞く。
「私怨ですね」と青葉は断定した。
「誰かが個人的に恨んでいるのか・・・・」
「ええ。いろいろ変な事が起き始めたのは・・・・・・3年くらい前からではありませんか?」
「そうそう、その頃」
 
「**な髪で、***な体型で・・・年齢は**代くらいの男性」
「分かった。***か。あいつなら恨んでるかも知れんなあ」
「その人からもらったものがありませんか?」
「寝室の時計・・・がそうよね?」
 
「見せて下さい」といって寝室に行く。
 
「ああ、これですね」
青葉は部屋の中に幾つかある時計の中のひとつを取り上げた。
「ええ、それです。よく分かりますね」
「処分していいですか?」
「お任せします」
 
青葉は時計を折りたたみ式の保冷バッグに入れると白石さんの家を辞する。青葉は大船渡までタクシーでも拾って行くつもりだったのだが、白石さんの奥さんが慶子の家(まだ仮設住宅)まで車で送ってくれた。
 
「こんにちは」と言って入っていくが
「青葉ちゃん、ただいまでいいよ。ここの祭壇はあなたのものだから」とまたまた言われる。
「いやあ、なんかここには子供の頃から『こんにちは』と言って入ってたから」
などと言いながら祭壇の前に座る。
 
「保冷バッグ??」
「気休めです。慶子さん、霊鎧をまとって」
「はい」
慶子の霊鎧を確認した上で(自分は当然まとっている)青葉は中から時計を取り出す。「わっ」と慶子が声を上げた。
「分かります?」
「酷いですね」
「ね」
「私なら、こんな時計そばに置いておきたくない」
「ふつうの人は気付かないんです。処理します。これの発信元ごと」
 
青葉は、その恨みの込められた時計の霊的な処理をした。終了後、庭でお焚き上げをした。
 
「こういうことできるのは田舎ならではですね」
「ええ。都会じゃ物を燃やしてたら苦情が来ますよね」
「この燃え残りは?」
「燃えないゴミに出してもらえます?」
「了解です。幸いにも明日です。でもさっきは凄かったけど、もう全然怖くないですね」
「ええ。もうただの物体になっちゃいましたから」
「それでもあまり長くは置いておきたくないものです」
「すみません。いつもこの手の処理してもらって」
「いえいえ」
 
家の中に戻り、簡単なものですけどと言って慶子が素麺を茹でてくれたので一緒にお昼御飯にした。
 
「でも慶子さんにも、真穂さんにも、5月以来お葬式の件でほんとに色々してもらって助かりました」
「まあ、私は真穂を呼び戻す理由ができてよかったけど。あの子、普段は電話もしてこないんだから」
「親離れですから、仕方ないですよ」
「半月に1度、青葉さんが来てくれるから、私も気合いが入るけど、ふだんは何だかぼーっとして過ごしてしまったりして。これじゃ、いかんなあと思うんですけどね」
 
「うちの母もそんなこと言ってました。子供が千葉の大学に行ってしまった後何だか張り合いがなくなって、ぼーっとして過ごしてたのが、私が来てくれて毎日が楽しくなった、と」
「巣立ちされた親はみんなそんなものかもね」
「私は地元の大学に行くつもりでいるけど、結婚して地元を離れた後がちょっと心配です。いっそお母ちゃん、彼氏とかでも作って再婚でもしてくれたらいいのかなあ・・・」
「うーん。。。彼氏はOK。でも旦那はNG」
「なるほどー。慶子さんも?」
「私は特に。一度離婚経験してると再婚までしなくても恋愛自体が面倒なのよね」
「ああ。。何となく分かる気がする」
 
「でも青葉さん、彪志さんとうまく行ってるみたいね」
「なんかいつもデートに行く時に送ってもらってすみません」
「お葬式の時、見てたら、青葉さんと夫婦みたいな感じだった」
「えへへ」
「・・・セックスしちゃってるよね?」
「分かります?」
「だって、それ前提でないと考えられないくらいの信頼関係があると思った」
「凄く心が支えられました」
 
「ふつうの中学生だったらセックスは少し早いかも知れないけど、青葉さんって物凄く早熟だったし、家族みんな無くして、私個人的には青葉さんには恋人がいた方がいいと思っていたし、それにもう2年くらいのお付き合いですよね」
「そうなんです。全然逢えず電話と手紙だけのやりとりを1年9ヶ月続けました」
 
「よく続いたね。それと彪志さんも結構霊的な力あるでしょ」
「霊感体質に近いですよね。オーラ強いでしょ」
「うん。エネルギー強いよね」
「彼、私に2年間好きだ、結婚してって言い続けてくれたんです。でも私ずっと返事してなかった」
「よほど好きなんだね」
 
「私がちゃんと返事しなかったのは、あるいは彼に捨てられるのが怖かったからかも」
「それを怖がってたら恋はできないよ」
 
「ですよねー。私ってやはり自分が完全な女の子でないという負い目があったのかも知れないなって最近思うんですよね。完全な女の子でない自分がこの人に愛してもらっていいんだろうか、という気持ちと、本物の女の子のライバルが現れたら、私捨てられちゃうんじゃないかって不安」
 
「青葉さんは本物の女の子ですよ」
 
「そうかもね。この春から、お母ちゃん、ちー姉、桃姉、に凄く愛されて、その結果私、自分に少しだけ自信が持てたのかも。だから彼の愛を受け入れる気になったのかも」
「愛を受け入れたのと同時にセックスもしちゃったのね」
「うん。あの場ではやれる所までしなきゃダメだと思った」
「それ多分、大人の恋愛でもそう」
「やはり?」
 
「そういうシチュエーションで愛だけ受け入れてセックスしなかったら、多分その愛はひっくり返っちゃうよ。ライバルが現れたりして」
「そうだったのか・・・・・」
「何か思い当たることある?」
「彼とそんなことになって、前から私に好きと言ってくれていたもうひとりの男の子の方に、断りの電話入れたんだけど」
「うん」
「その時の電話口でもけっこう口説かれたけど、そのあと夢にも彼出て来て」
「例の夢ね。青葉さんも相手も同じ夢見てるやつ」
 
「うん。その夢でまたかなり口説かれた。でも私の心は揺れなかった」
「それはやはり彪志さんとセックスまでしてたからだよね」
「そうかも」
「だってセックスって入れて放出してっていう物理的なものより、精神的なもののほうが大きいでしょ。魂の結びつきだもん。セックスって」
「そっかぁ。。。。私、魂的に彪志ともう結婚したようなものかな」
「多分そう」
 
「私、今回の帰りをずらそうかな・・・」
「会っていくのね」
「うん。今回はびっしり予定が詰まってるし、明日会うのは無理だと思ってたんだけど」
「明後日帰ればいいのよ」
「だよねー。明後日は午後、東京からクライアントが富山まで来るの。だから予定変更できないと思ったんだけど、要するに明日の午後までに帰ればいいんだ」
 
青葉は時刻表を取り出して時刻を調べ始める。
「これしか無いな・・・・クライアントは羽田を13:05の飛行機で富山空港に来るのよね。これに間に合うようにできるだけ遅く帰る方法は、なんと結局私もいったん東京に出て、クライアントと同じ飛行機に乗る手だ!」
「なるほど」
「よおし、空振り覚悟で取り敢えずチケット取っちゃえ」
 
青葉は携帯を操作してまず明後日の羽田−富山の航空券を押さえる。それから彪志に電話した。
 
「ハロー」
「ハロー。って、どうしたの?青葉」
「明後日デートしない?」
「え?でも明後日は東京からお客さんが来るからずらせないって言ってたじゃん」
「そう。だからクライアントと同じ飛行機で羽田から富山空港に移動する」
「なるほど!でもそれだと朝早くこちらを出ないといけないでしょ?」
「うん。だから彪志、東京行き新幹線に乗ってよ」
「え!?」
「東京までの往復の新幹線代、私が出すから」
「えー!?」
 
「あのね。明後日朝8:39一ノ関発の『はやて』に乗ると、東京に11:08に着くからその飛行機に私間に合うの」
「なるほど、新幹線の中でデートするのか!」
「そうそう」
「青葉はどこから乗るの?」
「仙台9:20だから、朝から仙台に行って仙台から乗ろうと思ってるんだけど」
「ちょっと待って。こちらも時刻表見てみる。。。。。俺、朝一番の新幹線に乗ると仙台に7:30に着くよ」
「ああ、私がそれまでに仙台に行けば、2時間仙台でもデートできるのね」
「そうなるね。そのあとは東京までの新幹線の中でデートね」
「ようし・・・・あぁん。それまでに仙台に着くバスが無い、困ったな」
 
「明日は何時にお仕事終わるの?」
「分からない。でも明日21:50発の夜行バスに乗るつもりだった」
「じゃ、その時刻から俺んちに来ない?」
「あ、そうか。それで明日朝一番の新幹線に、一ノ関から一緒に乗ればいいのか」
「そう。明日の夜は俺んちで泊まればいい。遅くなっても構わないから。で仙台じゃなくて東京で2時間フリータイム」
「うん。それで行こう」
 
「青葉さん、仕事が終わったら一ノ関まで送るよ」と慶子。
「ありがとう」
「ということで慶子さんがそちらまで送ってくれるって」
「じゃ、明日の夜待ってる」
 
ということで明日の夜慶子に一ノ関まで送ってもらい、その夜は彪志の家に泊めてもらって翌8日朝の新幹線で一緒に東京に出て13時の富山行きに青葉が乗るのを見送って彪志は新幹線で一ノ関に帰還する、といったデート計画が出来たのであった。朝1番の新幹線が東京に着くのが9:24なので、東京で3時間ほどフリータイムができることになる。
 
そこで13時の飛行機に同乗することになった「クライアント」である冬子にその旨メールしたのだが、速攻で電話が掛かってきた。
 
「青葉が東京に来るんなら、私富山に行く必要無い」と冬子。
「あ、そうか!」
「せっかく東京に来るんなら、私の自宅でヒーリングしてくれない?」
「いいですよ。じゃ東京で私1泊して9日に富山に帰ります」
「じゃ、私の家に泊まるといいよ。宿代節約。来客用の寝室で寝てもらえばいいし」
「わあ、そうさせてもらいます」
「8日は何時に東京に着くの?」
「あ、えっと・・・・」
 
青葉は実はボーイフレンドと一緒に東京まで新幹線デートであることを説明した。
「ああ、受験生なんだ!じゃ、うちの家でデートしない?うちの防音室、集中して勉強するのにはいいよ」
「ああ、いいかも」
「それに私見ないふりするから少しくらいイチャイチャしてもいいし」
「えへへ」
 
ということで青葉は再度彪志に電話し、状況が変化したことを説明する。
「要するに、青葉が冬子さんをヒーリングしている間に、俺は防音室で集中して勉強すればいいと?」
「そういうこと」
「ま、いっか。ひたすら町を歩いたりするよりは良さそうな気がする」
 
ということで青葉は8日13:05の飛行機にさきほど入れた予約をキャンセル、9日の最終便、19:55の便に予約を入れた。冬子も富山往復の飛行機をキャンセルしたはずである。そして青葉は8日朝一番の新幹線・一ノ関→東京を2枚と最終の新幹線・東京→一ノ関を1枚予約した。この件、母にも電話し了承を得た。
 
その日は昼食後に大船渡市内で3件の相談を受けてから、いったん慶子の家に戻り、祭壇前で自分をリセット・再浄化した上で、ふつうの服に着替え、夕方、慶子に送ってもらって椿妃の家に行った。早紀、柚女に、歌里が来ている。
 
「遅くなっちゃって御免なさい」
「いや、練習しながら待ってたから」と椿妃。
「取り敢えず、全国大会進出おめでとう」
「そちらも全国大会進出おめでとう」
 
「では早速、真打ち・青葉の歌声を聴かせてね」
「じゃ、まずウォーミングアップを兼ねて、今うちの学校の方で歌っている『島の歌』を」
と言って、青葉は椿妃の家の電子ピアノを借り、セルフサービスで伴奏しながら、『島の歌・幸い』を歌った。椿妃も柚女も歌里もICレコーダや携帯で録音している。
 
「わあ・・・格が違う!今F6まで出てたよね?」などと歌里。
「凄いよね、青葉さんって」と柚女。
「次、巫女の歌!」と椿妃。
「了解」
「私が伴奏するよ」と椿妃がいうのでピアノを代わる。
「ありがとう」
 
ピアノを椿妃に任せて、青葉は『夜明け』を歌った。『巫女の歌』の部分で柚女がうんうんという顔、歌里がひゃーという感じの顔をしている。
 
「巫女の歌の所だけ、再度歌って頂けますか?」
「OK」
というわけで椿妃の伴奏でその部分を再度歌う。
 
「よーし。私もこの音階で歌ってみよう」
「伴奏してあげるよ」と椿妃。
椿妃の伴奏に合わせて『夜明け』の最初から歌里が歌う。『巫女の歌』の部分を青葉が歌ったのと同じ音階で歌った。柚女がこの音階で歌ったのも何度か聴いている筈だが、ちゃんと歌えるのは歌里の耳が良いからであろう。
 
「うまーい」と青葉。「高音でも声が安定して出てるよね。声域広いでしょ?」
「先輩にはかなわないけど、一応D6まで出ます」
「練習すればもっと上まで出るようになるよ。あと、表現力はもう歌い込むしかないよね。自分で色々試行錯誤しながら。他人から教えられても、自分のものにならないと歌に反映されないんだよね」
「ええ、それ先生からも言われてます」
 
「だけど凄いよね」と柚女。「実力。ほんとに高い。でも、私も負けないから」
「ふたりとも頑張って」と青葉。
 
その後、青葉が伴奏を代わって、椿妃と青葉がアルトパート、柚女と歌里がソプラノパートを歌い、ソプラノソロの部分を、柚女・歌里・青葉の3人が交替で歌うという形式で6回り(18回)歌い込んだ。早紀は最初拍手をしたりして聴いていたが、椿妃のお母さんが「夕飯の支度手伝って」と言ってきたところで「私がします」といって台所に行った。やがて戻って来て「皆様、そろそろ晩ご飯にしませんか?」と言う。
 
「だいぶ歌ったもんね」
「じゃ夕食前の練習はこのくらいで」
といって練習をいったん終え、居間に行って夕飯を一緒に頂いた。
「さっきの形式で御飯食べてからあと2回りくらいやろうよ」
「OK」
 
その晩は結局9時頃まで歌いまくった。椿妃のお母さんが、車で柚女・歌里を自宅まで送り届けた。早紀は泊まりで、椿妃・青葉と12時くらいまでわいわいおしゃべりを続けた。
 
翌日の青葉の仕事はけっこう大変な案件も含まれていたため予定をずれ込み、終わったのは22時!であった。仙台21:50の夜行バスにはどっちみち間に合わなかった。途中で遅れそうというのを連絡を入れておき、最終的に終わった所で再度彪志に連絡した。慶子に一ノ関まで送ってもらい、23時過ぎに彪志の家に到着する。慶子に礼を言って車を降りる。
 
「夜分申し訳ありません」と言って家にあがる。
「10時までお仕事だったんだって!大変だったわね」とお母さん。
「お風呂入ってね。もうみんな入った後のお湯で申し訳無いけど」
「ありがとうございます。助かります」
「バスタオル、自由に使ってね」
「はい」
 
青葉は脱衣場に入ると、少しほっとするようなため息を付き、服を脱いだ。浴室に入ろうとしていた時、突然脱衣場の戸が開き
「シャンプーが切れてたから、この新しいの使って。あ、ごめん」
とお母さんが横を向く。
「ありがとうございます。別に横向かなくてもいいですよ。女同士だし」
と青葉は笑ってシャンプーを受け取った。
「あら、そう?」
というとお母さんは青葉のほうを向いた。
 
「あなた、いい身体してるわねえ。おっぱい、そんなにあるんだ!」
「まだBカップなんですよ」
「中学2年生でそれだけあれば立派よ。ウェストも細ーい」
「毎朝1時間走ってますから、余分な脂肪はつかないみたい」
「えらいわねえ。私も運動しなくちゃ」
「では、お風呂いただきます」
「はいはい」
 
お母さんが居間に戻ると夫はトイレにでも行っているのか彪志がひとりで勉強している。彪志は青葉が来るからと勉強道具を自分の部屋から持ってきていたのである。彪志に小声で語りかける。
「青葉ちゃんの裸見ちゃった」
「完璧に女の子でしょ?」
「おっぱい大きいし・・・おちんちんも、もう無いのね」
「無いみたいに見えるよね」
「え?付いてるの?」
「まだ手術終わってないはずなんだけど、実物は見たことない。でも、そもそも付いてたら、俺、青葉とセックスできてない。見ても触っても無いんだから、実質的には無いものと思っていいのかも知れない」
と彪志は問題集をしつつ笑いながら答える。
 
「タマはもうホントに無いらしいけどね。あの胸だって別にホルモン剤とかを飲んでる訳じゃないんだよね。実際、青葉が『女の子に見えるけど実は男の子』
という話自体が大嘘で、ほんとうは本物の女の子だと言われた方が納得するよ」
 
「ねえ、実はホントに女の子なんじゃないの?」
「そうかも知れないって、よく思うよ」
「今夜、あんたの部屋でいいんだっけ?」
「もちろん」
「だって女の子なのに。私の部屋でもいいよ。父ちゃんは居間で寝てもらうから」
「恋人だから大丈夫だよ」
 
「ああ、私何だか分からなくなってきた」
「青葉の性別のこと考えてたら分からなくなるから考えない方がいいよ。取り敢えず、見た目は女の子で、裸にしても女の子で、中身も女の子であることは間違いない」
「それなら完璧に女の子じゃん!。。。で、あんたは結婚したいのね?」
「そのつもり。10年くらい先だろうけどね」
「まいっか。青葉ちゃん、ほんといい子だし」
「ありがとう」
 
青葉がお風呂から上がると、彪志と両親が紅茶を飲みながら会話をしていた。むろん彪志は会話をしながら勉強をしている。お母さんが青葉にも紅茶を入れてくれて、しばし4人で団欒の時をすごす。1時くらいにおやすみなさいを言って彪志と一緒に2階の部屋へ引き上げた。布団は2つ敷いてある。青葉はわざわざ彪志に見せるような感じでパジャマに着替えた。
 
「彪志はまだ勉強するの?」
「いや、明日新幹線の中で集中して勉強できそうだからも今日はもう寝る」
「じゃ一緒に寝ようか?」
「え?同じ布団で寝るの?」
「いや、一緒って同時ということ」
「あ、ごめん」
「同じ布団で寝てもいいけど、受験生を寝不足にしちゃいけないし」
「あはは」
「じゃ、おやすみー」
「おやすみー」
 
それぞれの布団に入る。このまま寝ちゃうのかな、と思っていたら青葉がごそごそと布団の中を潜って彪志の布団の中に入ってきた。
「へへ、忘れ物」「忘れ物?」「これ」
と言って青葉は彪志にキスをする。彪志が青葉を抱きしめる。青葉も彪志を抱きしめる。2人は5分間くらいそのまま抱き合っていた。
 
「じゃ、ホントに寝る−」「うん」「おやすみ」「おやすみ」
青葉は自分の布団に戻った。
 
「でも1発抜いちゃった方が熟睡できる?」
「心配しなくてもするからいいよ」
「あ、やはりするんだ!」
「一応男の子だから」
「男の子って・・・マジで毎日するものなの?」
「1日2-3回しちゃうこともあるよ。なんなら、青葉のおちんちんも触ってあげようか?」
 
「そんなもの好きな人には見せられないよう」
「前、好きな人以外には裸は見せられないなんて言ってなかった?」
「それは当然」
「ということは誰にも見せないんだ?」
「見せるのはお医者さんくらいだよ」
 
「だけど俺、青葉が男の子だって証拠を見たことないなと思ってさ。だからひょっとして青葉って本当に女の子なんじゃないかと思ったりすることある」
 
「証拠ね・・・・私、学生証も女になってるしなあ。病院の診察券も F だし。そもそも私、彪志の前では完全な女の子でいたいの。女の子におちんちんは無いから、やっぱり見せたくないよ」
 
「でも他の人の前でも完全な女の子だよね」
「そうかもね。でもHまでするのは彪志だけ」
そう言うと、青葉は再度身体を寄せて彪志にキスをした。
 
「じゃカサカサする音聞いても聞かなかったことにするね」
「あのねぇ・・・・・」
「おやすみー」「うん、おやすみ」
青葉が手を伸ばしてきた。彪志がその手をつかむ。ふたりはその夜は手をつないだまま寝た。彪志は結局その晩は、ひとりHもしなかった。
 
翌朝、お母さんが出勤するお父さんを送るついでにふたりを駅まで送ってくれた。朝いちばんの新幹線に乗り込む。
「指定席が取れてたんだね」
「あの電話のあとすぐ予約入れたからね」
「ね・・・俺の分の新幹線代は出すよ。母ちゃんから3万もらったから」
「ううん。今回は私に出させて。私のわがままだもん。代わりに御飯は彪志がおごってくれる?」
「了解」
 
新幹線の座席で彪志はずっと勉強しているので、できるだけ邪魔にならない程度に青葉は話しかけていた。お母さんとの約束で今日1日で英語の問題集を1冊仕上げることになっている。
 
「accomplishって何だっけ?」「成し遂げる」「Thanks」
「辞書引いたほうが覚えるよ」「帰りはそうする。行きは歩く辞書を活用」
などという会話もふたりにとっては愛の会話になる。
 
「英文読解の要領って何だろ?」
「たくさん英文を読むこと。ヒアリングもたくさん英語を聞くこと。最初は分からなくても読んでる内、聞いてる内に何となく想像がつくようになる」
「なるほどね」
 
「Won't you speak only in English until we arrive at Tokyo terminal?」
「Impossible!」
 
東京に着いてから、取り敢えずその切符(東京都区内行き)で新宿に出て1時間ほど散歩し、11時頃に手頃な感じのレストランに入って、早めのお昼御飯を食べた。その後、地下鉄で移動し、1時前に冬子のマンションに入った。
 
「いらっしゃい。今日1日のんびり過ごしてね」といって冬子がお茶を入れてくれる。
「こないだの葬儀の時はありがとうございました」
「いや、ちょうど通りがかりになったしね」
などと先日の葬式のことで少し話をする。
 
「でもここ本来は男子禁制なんですよね」と青葉。
「カップルで来る人は例外。フライデー対策だから」
「あっそうか」
「なんか今凄く突っ込みをしたくなった」と彪志。
「男子禁制といいながら、この場にいる3人って全員戸籍上は・・・・」
「その突っ込みは無し」と青葉。
「ごめん」
「そんなこと言ってると女装させちゃうよ」と笑いながら冬子。
「彪志が女装にハマったら困るからそれはやめて」と青葉。
 
しばしおしゃべりしてから、青葉は冬子のヒーリングを始めることにし、彪志は防音室に入った。
「このパソコンにゲストでログインすればいろいろBGM聴けるから。ゲストのパスは*******ね」
「ありがとうございます」
 
ヒーリングしている所が彪志の視界に入る。こういう青葉を見たのは2年前に入院していた父にヒーリングしてくれていた時以来であった。青葉の強烈なオーラがとても優しい雰囲気に変化するのが分かる。1時間ほどヒーリングしてから、いったん休憩にする。お茶を飲みながら3人で会話した。
 
「だけど、あなたたち、凄く仲がいいね」
「えへへ。仲いいでしょ」
「はいはい。ごちそう様。私もボーイフレンド作っちゃおうかなあ」
「そんなの作ってもいいの?政子さんがいるのに」
「いや、だから私達は恋人じゃないって」
 
そんなことを話していた時、冬子に電話が入った。
 
「はい。ええ。実は富山行きがキャンセルになって今日は東京にいるんです。はい?FM**に4時から生出演!了解です。現地にすぐ向かいます」
 
「お仕事ですか?」
「新曲をFM局で取り上げてくれるらしい。私、富山に行かなくて良かったぁ!ちょっと行ってくるね。出演は5分くらいだから5時か遅くとも5時半までには戻ると思うけど自由にしてて。そこの冷蔵庫のお菓子も食べてていいから」
「ありがとう。食器片付けとくね」
「助かる。放置しておくと政子に私叱られるのよね。女の子なんだからきちんとしなさいって」
「あはは」
「じゃ、行ってきまーす」
と言って冬子はばたばたと出かけていった。出て行ってすぐに
『ごめん。お米を5合、5時半に炊きあがるように炊いておいて』
とメールが入ったので『了解』と返信する。
 
「ふたりきりになっちゃったね」
「予定調和っぽい」
「ほんとに・・・きっと冬子さん仕事が入らなくても何か理由付けて外出してた気がする」
ふたりは一緒に食器を洗い食器乾燥機に入れ、それからお米を5合研ぎ、炊飯器に入れてタイマーで5時半炊きあがりにセットした。そのあと、居間に戻って、おしゃべりしながら、彪志は英語の問題集をやり続ける。
 
「しかし今回は考えてみるとインターバル挟みながらも、凄いロングデートになったね」
「今日で5日目だもんね。3度一緒に夜を過ごしたし」
「その代わり次は1ヶ月後まで会えないし、ふたりきりになれるのは2ヶ月半先」
「夢で逢えたらいいね」
青葉は唐突にラッツ&スターの『夢で逢えたら』を歌う。
 
「いい歌だなあ」
「こないだ冬子さんに教えてもらった」
「へー」
「夢で逢えるようにできるだけ強い念を送るよ」
「うん・・・・ね、寝室に行かない?」
「うん」
 
ふたりは来客用寝室に移動した。むろん勉強道具も持ってきている。
「イチャイチャしようよ」
と言って青葉は彪志に深いキスをする。
 
「ね・・・そこに敷いてある布団が気になる」
「冬子さんのサービスね」
「枕元にあるそれも?」
「する時は使いなさいという意味ね」
「親切で涙が出そう」と笑いながら彪志。
「ほんとに親切ね」と青葉。「使ってみる?」
 
「せっかくだし付けてみようかな・・・・・自分のを」
といって彪志は持ってきていた旅行鞄からそれを取り出した。
 
「裸になっちゃお」といって青葉は服を脱いでしまう。魅力的な肢体が姿をあらわす。彪志のほうも脱いでいた。装着する。
 
ふたりは再びキスをすると、布団の中に潜り込んだ。
「ね、どこまでならしてもいいの?」
「私は彪志のものだもん。ホントはいつでも好きにしていいんだよ」
「でも月1回の約束が」
「彪志、お勉強頑張ってるから、特別にご褒美。ただしその問題集、今日中にちゃんと上げてね」
「分かった。頑張る」
「セックスを?」
「セックスも頑張るけど勉強も頑張る」
「よしよし」と青葉は彪志の頭をなでる。
 
3回目ともなると少し心に余裕が出た。彼の一所懸命さが伝わってくる。でもほんとに気持ちいいなあ、これ。だけどきっと彪志としてるから気持ちいいんだろうな。。。。肌から直接彼の愛の念が流れ込んでくる。彼の身体をぎゅっと抱きしめる。
 
済んでからも裸のまま、並んで身体をくっつけた状態でおしゃべりした。
「でも彪志はどうして私みたいな女の子のこと好きになったの?」
「最初は好奇心だったかも」
「えー?」
「でもね、青葉に会う数日前に夢で見たんだよ」
「へー」
「未雨ちゃんと青葉が並んでたんだ。それで俺の恋人になるのはあそこにいる妹の方だよ、って言われたんだ。夢の中で」
「それで初対面だったのに、私のこと知ってたのね」
 
「未雨ちゃんから青葉のこと自体は聞いてたから、どんなオカマだろうと思ってたら、実物見たら凄く可愛い女の子じゃん」
「あはは」
「俺、ふつうならどんな可愛く女装している男の子でもちゃんと性別見分ける自信あったのに、青葉だけは俺の勘が女の子だと告げてた」
「だって私女の子だもん」
「だからガールフレンドにするくらいならいいかな・・・なんて思ってたんだけど、本気になっちゃった」
 
「彪志・・・」
「今は本気で好きだよ、青葉」
「私も本気で好き」
 
ふたりはまたキスをした。
「さて、そろそろ起きて勉強しなきゃ」
「うん、頑張ってね」
ふたりはゴミを始末し、布団を整えると、居間に戻り、またおしゃべりしながらお勉強を続けた。
 
5時すぎ、冬子が戻ってきた。
「ただいまあ。さあ、夕飯作るね−」と冬子。
「私も手伝います。お米は5時半炊きあがりにセットしました」と青葉。「サンキュー」「彪志は勉強しててね」「うん」
 
冬子と青葉で協力してハンバーグを作る。青葉がどんどん形にまとめて冬子がじゃんじゃんフライパンで焼いた。御飯が炊きあがる頃、全部焼き上がった。
 
「さあ、夕飯、夕飯」
「頂きます」
「冬子さん、お仕事お疲れ様でした。夕飯の後、彪志を東京駅まで送ってきてから、ヒーリングしますね」
「うん。ありがとう。あ、私仮眠してるかも知れないから、鍵1本預けとく」
「はい」
「暗証番号は****ね」
「了解です」
「ところでね、青葉。20:16の新幹線に乗ると21:48に福島に着くけど、すると福島で22:11の東京行きを捉まえられるんだなあ」
「!!」
 
「行ってきます」
「いってらっしゃーい」
 
そういう訳でその日のデートは結局、彪志が一ノ関に帰還する新幹線の福島駅まで続いたのであった。
 
福島から戻りの新幹線の中、青葉は今夜夢の中で彪志と会えるかな?会えるといいなと思った。小さい声でラッツ&スターの『夢で逢えたら』を口ずさんだ。
 
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【春楽】(2)