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■庭園物語(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2005-01-03 (改)2013-07-26
 
普請奉行の松坂はそこに作られた巧妙な重力式水汲み上げ機構(サイフォン)を見て感動の声を上げた。
 
「見事じゃ。誰がこんなものを作ったのだ?」
「は、八重作でございます、お奉行様」
 
人足頭の六兵衛が答えた。
 
「八重作は色々と工夫するのが得意で、これも子供の頃に遊びで作っていたものを応用したのだそうです。この八重作の工夫がなければ、水をこの高台まで汲み上げるのは大変でした」 
松阪は六兵衛の説明を聞くととても満足そうに頷き、その八重作を呼ぶように言った。
 
「そちがこれを考えたのか。でかした。褒美を取らせるぞ」
 
八重作は奉行から直接お褒めの言葉をもらえるとは思ってもいなかったので緊張したが、かろうじてこう答えた。
 
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「ありがとうございます。でももし良かったら、その褒美は郷里の女房の所に送って頂けませんか。あっしが持ってたら飲んで無くなってしまいそうで」 
奉行は笑って「うむ。よいよい。そうすることにしよう」と言い、お付きの侍に指示を出した。
 

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水分村では多くの若い男たちが城下町での普請があるというので徴用されて男手が不足して、農作業に苦労していた。
 
「今年は天候が良かったからいいものの、かあちゃんも済まないね」
 
ツルは実家の村から来て作業を手伝ってくれている母に感謝して言った。 
「いや、いいよ。おかげでこうやって孫娘とも遊べるし」
と言って母はまだ3歳の娘の頭を撫でる。
 
ツルがその日の作業を終えて家に帰ろうとしていた時、庄屋の息子が声を掛けてきた。
 
「ツルさん、すぐ来てくれ。御城下からお使いが来ている」
ツルは夫の八重作に何かあったのでは青くなり、娘を母に託すとすぐに飛んでいった。
 
しかしそこにはにこやかに談笑する庄屋と立派な身なりの侍の姿があった。「村上様、ツルが来ましたよ」
「おぉ、そちが八重作の女房か?」
「あ、はい」
 
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ツルは雰囲気が柔らかいので異変があった訳ではなさそうだと思ったが、一体なんだろうといぶかった。
 
「そちの亭主の八重作が、この度の普請で、ひじょうに良いものを考え出してくれたので、これはお上からのご褒美じゃ」といって侍は紙に包んだものをツルの前に差し出した。
 
「あ、ありがとうございます」
ツルはびっくりして答えた。
 
「主人はちゃんとまじめに働いておりますでしょうか。あの人、お酒さえ飲まなければいい人なので」「そうか?わしも普請の現場や宿所などを時々見ているが、八重作が酒を飲んでいるのは見たことないぞ」「ほんとですか!じゃ出かける時に私とした約束守ってくれているんですね」
ツルは何だか嬉しくなった。
 
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八重作は以前はほんとに酒癖が悪かったし、酔っていると女癖も悪かった。「これ以上浮気したら、あんたの一物、切り落としてやろうか?」
と言って、ツルが包丁を持って迫ったことがあったくらいだ。あの時、八重作は済まんと言って、二度と酒は飲まないから許してくれと誓った。
 
村上と庄屋とツルの3人はしばらく色々話をしていたが、やがて村上が帰っていった。ツルは初めて紙の包みを開けてみた。小判が5枚も入っていた。ツルは息を呑んだ。
 
「庄屋様、これ何かの間違いじゃないでしょうか?こんな大金」
 
庄屋は厳しい顔をしていた。
「のう。ツルや。お前の旦那はもう戻って来んかも知れんな」
「え?」
「そんなすごいことを考えた者が万一、江戸の密偵にでもつかまってみい。たいへんなことになる。この普請が完成した時多分。。。。」 
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庄屋はそこで言葉を停めてしまった。ツルは呆然としてその小判を眺めていた。 

庭園は完成に近づいていた。八重作はその後も色々工夫を凝らしては奉行から褒美をもらっていたが、少額だったので、あとで女房の所に送ろうと思い自分で蓄えていた。その頃、城下のある屋敷で密談をする者たちがいた。
 
「反対です」
 
難しい顔をして主張したのは普請奉行の松阪だった。しかし彼を説得しようとしているのは上役の総奉行・木鳥だった。
 
「考えてもみろ。この庭園は現在のわが藩の技術の粋が集められている。この内容が今同様に立派な庭園を造っている隣藩にもれると面倒だし、幕府などにも知られたら、わが藩は将軍様にたてつくことだって可能なくらいの力を持っているのではないかと疑われる。絶対に秘密は漏れてはいけないのだ」 
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「しかしそれなら何故わざわざこういうものを作ったのですか」
 
松阪は何とか上司の論理を切り崩したいと考えていた。
 
「それはやはり実験だ。正直隣藩の庭園は凄い。負けられない。そしてやってみなければ分からないものも色々ある。わが藩のいざという時の力を確認しておく必要があったのだ。わが藩の侍たちの志気を維持するためにも」 
議論は深夜まで続いていた。そして翌朝、人足たちに普請奉行の交替が告げられた。松阪が急病により普請奉行の任を解かれ、新しい普請奉行は作事奉行の金岩が当面代行すると伝えられた。
 

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その夜、その新しい普請奉行に八重作と、もうひとり高岩村から来ている与吉が呼ばれた。八重作は人足に呼ばれたもののあまり体力がなく最初のころ随分苦労していた。この与吉も同様にからだが貧弱で苦労していたので、ふたりはこの普請の初期の頃からずいぶんお互いに精神的に助け合ったものであった。 
新奉行の金岩は単刀直入にふたりに用件を話した。
「実はお上からの命令により、今回の普請に参加した人足は秘密を守るために全員殺されることになっている」 
二人は絶句した。
 
「ただ全員といっても全部で100人以上いる。殺害は明日の明け方実行される手はずになっているので、おまえ達はもう宿所に戻ってはいけない。日が昇った頃にはもう全て終わっているので、おまえ達ふたりにはその後、死骸の後始末の作業をしてもらいたい」 
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「その後はどうなるんですか?」
と与吉がおそるおそる尋ねた。
 
「何も決してしゃべらぬことを条件におまえ達だけは開放する。故郷の村に戻るもよければ、博多あたりに行くのもよい。褒美としてそれぞれ百両渡す」 
百両というとんでもない金額にふたりは驚いた。
 
「それだけの金を貰えばしゃべらないだろうという奉行の御配慮だ」
とそばで難しい顔をして控えていた与力の村上が言い添えた。
 
「人足の中で確実に秘密を守ってくれそうな者として私がおまえたち二人を奉行に推薦した」 
と村上は言った。その村上の苦渋の表情を見て、八重作は様々な事に考えが及んだ。
 

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ふたりは奉行の屋敷の奥の部屋に入れられた。襖が閉じられたが廊下には侍が控えているようだ。
 
二人は取り敢えず寝ることにしたが、やはり眠られなかった。1年近くにわたって、一緒に作業をしてきた多くの仲間の顔が浮かんでは消える。どうにも目が覚めてしまって起きると、与吉も起きていた。
 
「眠れないよな」
「んだ」
「おまえ何考えてる?」
と与吉が聞く。
 
「皆の事を考えていた」
と八重作が答えると、与吉は呆れたように溜息をついた。
 
「今更それは助けようがないから考えるな。それより自分達の事を考えよう」
八重作がポカンとしていると与吉は声を潜めて言った。
 
「俺達は死体の始末係としてとりあえず数時間は生かされる。100人もの死体を片づけるんだ。1日掛かりだろう。そして明日の夕方頃、死体の始末がついたら」「ついたら?」
 
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「俺たちも殺されるって事だ」
「え?そうなのか?」
 
「おまえ、仕事の工夫とかは頭が働くのにこういうことには頭が働かないな。当然そうなるに決まってるだろ」 
「じゃどうする」
「逃げよう。今夜の内に」
 

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八重作たちは襖をそっと少しだけ開けてみた。侍が一人番をしている。さすがに深夜で疲れてきたのか若干船を漕いでいる感じではあるが、人がここを通り抜けようとしたら気付くだろう。
 
八重作たちは襖をしめると、静かに畳をあげた。こういう仕事は彼らは得意である。そっと床下に降り、屋敷の裏口の方へ音を立てないように静かに這って進んだ。 
長い時間を掛けて床下を通過してそっと外を見る。誰もいないようだ。ふたりは静かに床から出ると裏口の戸の所に行き、そっと閂を開けて戸外に出た。ふたりが静かに戸を閉めた時、八重作は肝を潰した。
 
そこに与力の村上がいた。
 
「どこへ行く?」
 
八重作は観念して答えた。
 
「村に逃げ帰ろうと思っていましたが、もう観念しました」
 
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「私は散歩をしていただけだ。何も見ていない。ただ村には帰るな。家族のことを思えば辛いだろうが、村に帰っておまえ達家族と合流した所を捕まれば、家族ごと殺されるぞ。辛いだろうが、大坂か京、あるいはいっそ江戸か、人が紛れてしまえる所に行け。博多はやめろ。お前達が逃げたらふつう博多方面に逃げるだろうと思われるから」 
そう言うと、村上は八重作にずっしりと重い布袋を渡した。かなりの大金が入っていることが分かった。
 
二人は村上に深くお辞儀をすると、闇の中に走り去った。村上は何事も無かったかのように、またのんびり夜道を散歩しはじめた。
 

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奉行所の中が大騒動になったのはその約1時間後であった。散歩から帰ってきた村上は涼しい顔で興奮している奉行に答えた。
 
「逃げた二人は手配書を出して、関所で押さえましょう。きっと西国へ逃げようとするでしょうから西の関所を警戒させるのです。死体始末係の代わりは水分村の吾作と川添村の勘八にしましょう」 
奉行は配下の侍に、村上が指名した2人を連れて来るよう指示した。
 
八重作と与吉は大坂へ行こうと話し合い、夜の街道をひたすら東へと歩いた。時折馬の走る音などが聞こえると街道の脇に隠れてやり過ごした。やがて前の方から日が昇ってくる。八重作が足を止めた。与吉も気付いてふたりして自分たちが来た方角をみつめ合掌した。
 
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ふたりは昼間もひたすら歩き続けた。食糧や水を持って出なかったのできつかったが、そんなことも言ってられなかった。お金は持っているが、藩内ではあまり使いたくない。自分たちの痕跡をできるだけ残さないためである。 
夕方近くに隣国との境界に近い所まで辿り着いたが、ここでふたりは関所を越える方法がないことに気付いた。
 
「どうする?」
「夜中にこっそり山を抜けるしかないだろう」
「しかし山の中は色々仕掛けがしてあるぞ。特に夜ではそれに気付かない」
「しかしそれしか手はないだろう」
「取り敢えず夜までどこかに身を隠しておこう」
 
ふたりは隠れられそうな場所を物色してやがて他の家々から離れた所にある道具小屋のような感じのところにそっと入った。疲れていたのでふたりともすぐに眠ってしまった。
 
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「これこれ。おまえさん達、誰じゃ?」
声を聞いて八重作はびっくりして飛び起きた。与吉も起きる。そこには提灯を持った変わったいでたちの男がいた。
 
「済みません。旅の者です。疲れてついここで寝てしまいました」
「私はこの村の医者の仁庵という。おまえ達、飯は食ったか?」
 
ふたりが首をふると、医者は飯くらい食べさせてやるから付いて来いと言う。八重作は与吉と顔を見合わせたが、相手は親切そうだ。付いていくことにした。 
「今日は珍客の多い日だ」
 
仁庵がそう言って家に入っていくのに続いてふたりが入ると、ふたりはそこに異様な風体の男がいるのを見て驚いた。どうも南蛮人のようである。
 
仁庵が何か訳の分からない言葉をしゃべるとその南蛮人も訳の分からない言葉で返してニコニコとしてふたりを見て、いきなり手を伸ばしてきた。仁庵が言う。
 
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「握手を求めているんだよ。南蛮人の挨拶の仕方だ。手を握りなさい」
 
八重作がおそるおそる手を伸ばすと、南蛮人は彼の手を強く握って振った。続いて彼は与吉にも手を出し、与吉とも強く握手をした。
 

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その南蛮人は序流寿(ジョルジュ)と名乗った。オランダ人の医師で江戸に将軍に謁見するため向かう途中、特に許可を得て一ヶ月ほど仁庵の所に滞在しているということであった。話を聞いて八重作はこの医者が実はけっこう偉い医者なのではないかということに気付いた。それを尋ねると仁庵は 
「うむ。私は昨年まで殿様の侍医をしていた」
 
とあっさり言ったのでふたりは驚いた。そして仁庵はさらにふたりが硬直するようなことを言った。
 
「さっき急病人が出て関所に行って来たのだが、そこでおまえ達ふたりの手配書を見た。おまえ達何者だ?」 
呆然としているふたりに仁庵は更に言葉を続けた。
 
「何かの咎人(とがにん)のようにも見えないからな。話だけでも聞いて、お上に突き出すべきかどうか考えようと思ったのだ。まぁ私の気まぐれだな。取り敢えず呑め」 
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といって仁庵は酒をふたりにつぐ。与吉は自分を落ち着けようとするかのように一気に呑んだが、八重作は手を付けなかった。
 

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