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■ひとりずつの卒業式(1)

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うちの村には中学は女子中学しかない。
昔は共学だったらしいのだが、この国で最初の女性首相がここから出たことを記念して、女子中学になった。その時、共学の中学も新設することになっていたらしいのだが、予算が足りなくて執行できず、結局、男子のみなさんは隣の村の中学に行ってくださいということになってしまった。
 
しかしいつのころか、隣の村まで行くのが面倒だから女子の制服着て女子中生としてここに入ってはだめですか?などと言い出す生徒が出てきて、いろいろ議論したあげく、下着まで全部女子の服を着ることと、名前を女の子風に変えれば受け入れますということになってしまった。しかしある時、そうやって入った女装中学生が同級生の女の子を校内でレイプする事件が起きて、入学する場合、肉体的に女子でなければならないというように規則が変えられてしまった。すると、中学に入る前に性転換して本当に女の子になってから入学すればいい、という流れになってしまったのだ。
 
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うちの国では徴兵制度があって16歳になったら男子はみな兵隊さんに行かなければならない。隣の国との戦争はもう30年も続いていて終局のめどはたたない。毎日たくさんの兵隊さんが死んでいる。そこで子供たちを戦死させたくないという親の希望が加わって、この村では結局、ほとんどの男の子が小学校を卒業する直前に女の子になってしまう習慣ができてしまった。
 
ぼくたちの学年は男子52人、女子78人。元々女子が多いのは最初から女の子のほうが苦労しなくて済むといって生み分けで女の子を作る親が多いからだ。この52人の男子のうち男の子のまま隣の村の中学に進学する子は4人だけ。残りの48人は女の子になって村唯一の中学=女子中学に進学することを希望している。
 
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いけない。もう「ぼく」という言い方はするな、とお母さんとママに言われていた。「私」って言わなきゃいけないんだって。
 
(うちの村には大人の男の人はほとんどいないので女性同士で結婚している。うちは3人兄弟だけどママは元男だったので男だった時に採っていた精子でお母さんが妊娠してぼくらを産んだ。ちなみに兄ふたりはもう性転換して姉になっている。なお精子はぼくも採られていた。みんな精通が始まったら毎月1回精子を採って村の3ヶ所の冷凍保存庫に分散して保管することになっている。) 
性転換はする人が多いので学校の中に手術する設備と入院する設備が設けられている。今年は48人。3学期になったら毎日1人のペースで手術を受ける。手術を受ける順番は2学期の期末テストの成績順。みんな早く受けたいから、2学期のテストはとにかく頑張る。ぼく、じゃなかった、私は男子の中で12番目だったので1月12日に手術を受けることになった。
 
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前日。もう1月早々に手術した4人は退院して教室に戻っている。4人とも中学で着るセーラー服を着ている。この手術を受けたらもう男の子としての小学校での課程は終わったからということで、卒業証書を一足早く受け取れる。そして中学の制服をプレゼントしてもらえるのだ。この早めにセーラー服を着れるというのは女の子たちにとってはうらやましいことらしい。私も一週間後には着ることになる。
 
男の子としての最後の日だから男子トイレに行って来いと先生から言われて、トイレで立ったままおしっこをした。ちょっと感慨深げ。家に帰ると、最後にお母さんが洗ってあげるといわれて、お母さんと一緒にお風呂に入り、おちんちんをきれいに洗ってもらった。
 
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翌日はママのほうが付き添ってくれた。この日はスカートを穿いて行かなければいけないことになっている。スカートは慣れるために時々穿いていたけど、実はそれで外を歩くのは初めてだったから、ちょっと恥ずかしかった。
 
学校に入ると、そのまま医務室に行き、簡単な診察を受ける。最後に本当に手術していいかとお医者さんと私の2人だけの場で聞かれ、お願いしますと言う。麻酔を打たれてそのあとは何も分からなくなった。
 
目が覚めた時、とてもあのあたりが痛かった。手術の技術は年々よくなっているらしくて昔はもっと痛いものだったらしいのだけど、とにかく今でも痛いのは痛い。辛そうな顔をしていたら、看護婦さんが飲めば痛みがやわらぐというお茶をくれた。それで確かに少しはましになったような気がした。
 
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入院は一週間だけど、その間ずっと痛みと闘っていたような気がする。でも退院することになったら、なんだか気のせいか痛みもなくなってしまったような感じがした。入院着から、渡された真新しいセーラー服に着替え、ママと一緒に校長室に行く。そこで「女の子になれておめでとう」と言われ、卒業証書をもらった。この卒業証書までが男の子の名前。その場で、ママがお母さんと一緒に決めたという、新しい女の子の名前を付けられた。ちょっと可愛い感じで照れてしまったけど自分の名前が可愛いというのもいいもんだと思った。
 
家に帰ると、お母さんとお姉さんたちからもおめでとうと言われた。その日はごちそうだった。ろうそくを立てていないケーキを食べた。女の子として0歳だからろうそくは立てないというのが、この村での習慣。
 
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私は明日からの女の子としての生活を思うと、わくわくする思いがした。 


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