広告:ここはグリーン・ウッド (第3巻) (白泉社文庫)
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(C)Eriko Kawaguchi 2010-12-10
 
「OPRSTUVW」
それが前夜に見た夢の中に出てきた文字だった。
その時はそれが何を意味するか、さっぱりわからなかった。
ただ、なぜQが無いんだろうと不思議に思った。
 
「オリー、まだ着替えてないのか?もう行くぞ」
トムの声がするが、ボクは困っていた。
「待って、衣装が残ってないんだよ」
「おまえ、遅刻してくるからだぞ。あ、そこの箱に何か入ってるじゃん」
確かにその箱には気づかなかった。
というか、そこに箱とかあったっけ?
 
「あれ、これ魔女の衣装じゃん。女の子用なんじゃないの?」
「女の子たちはもうみんな着替えてるぞ。それしか残ってないんだからもうそれ着ろよ」
女の子の服・・・・・それはボクにとっては特別な意味のあるものだった。でもそのことは誰も知らない。
「そうだね。これしかないなら、これ着るしかないよね」
ボクはそんなことを言いながら、手早くシャツとズボンを脱いで、その魔女の衣装。黒いドレスに先のとんがった帽子を身につけた。
トムはもう先に行ってしまった。
 
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今日はハロウィン。近所の子供たちで集まって、家々を回り
「トリック・オア・トリート」
と言って、お菓子をもらうのだ。
ボクが着替え終わって外に出ると、子供たちもかなり人数が減っていて残っていたのは、リサ・ルイーザ・エマの女の子3人とマイケル・ハリーの男の子2人だった。
「あと誰が残ってた?」
「えーっと、ボクで終わり」
「あら?その声はオリーなの?女の子かと思った」とエマ。
「女の子が走ってくる感じに見えたから、女の子なら私たちと一緒に回ろうと思って待ってたのよ。じゃ、私たち3人で行くから」と、女の子3人はさっさと出発してしまった。
 
幼なじみのリサが「可愛い魔女さんになってる。似合ってるよ」と小さい声でボクの耳元にささやいてから、笑顔で手を振って行ってしまった。
 
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「ちぇっ、のろまのオリーだったとはな」とハリーが不満そうに言う。たしかにボクは、男の子たちと遊んでいる時、いつもワンテンポ遅れてしまう。「しゃーねえ。行くぞ」
「おまえ、ちゃんと付いて来いよ。はぐれても知らんから」とマイケル。 
トムみたいに少しだけ親切にしてくれる子もたまにはいるけど、大半の男の子は、だいたいこんな感じで、ボクはいつもお荷物扱いだ。
でも今日はボクも頑張らなくちゃ。
 
マイケルたちが歩き出すので、ボクも歩き出した・・・とたん、人とぶつかってしまった。「あ、ごめんなさい」。
 
「あら、私の方もごめんね。あら可愛い魔女さん」と、言ったのは、上品な感じの24〜25歳くらいかな?という感じの女の人だった。黄色いコートを着ていたのだけど、ボクはその時なぜか彼女の「魔女」ということばに何か特別なものを感じた。
 
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「おい、何やってんだ、オリー。置いてくぞ」とハリー。
「あ、ごめん」ボクは走って男の子たちに追いついた。
 
今夜のハロウィンはどうも不作だった。
 
当てにしていた家が「ごめん、もう先に来た子供たちにあげちゃって
もう残ってないよ」とかだったり、お留守だったり。
30分ほど歩いて、1軒でしかお菓子をもらえなかった。
 
「参ったな」
「こんなにもらえないとは」
「なあ、丘の上の新興住宅街はほかのグループ行ってないんじゃ?」
「でも校区外だぞ」
「かまうもんか。ハロウィンくらい知ってるだろ」
「じゃ少し遠いけど行ってみるか」
「おい、オリー、遠いから早く歩くぞ。付いて来いよ」
とふたりはさっさと歩き出した。
 
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ボクはここまで30分歩き回って、かなり疲れていた。
「うん。頑張る」
といって、ふたりの後を追って歩き出したものの、どんどん離されていきとうとう見失ってしまった。
 
ボクはしばらく歩いていたが、いくら歩いていてもふたりの姿を見ることができず、途方に暮れて立ち止まってしまった。
「だめだ。帰ろうかな・・・・・」
 
ボクは簡単に諦めてしまい、集会所に戻ろうと、坂を降り始めた。
 
が、どこかで曲がり角を勘違いしたのだろうか。
いつの間にか全然知らない区域に迷い込んでしまっていた。
「まずい。夜だから道に迷っちゃったみたい」
「どこかのおうちで道を聞いてみよう」
 
そう思ったボクは、手近に見た灯りがともっているきれいな感じの
2階建ての家のベルを鳴らしてみた。
 
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「はーい」
女の人の声がして、出てきたのは・・・・さきほど集会所前でぶつかった人だった。
 
「あら、さっき会った子ね」
「あ、はい」
「おうちを訪問したら、台詞を言わなくちゃ。ハロウィンでしょ」
「あ、えーっと、トリック・オア・トリート!」
「あらあら、可愛い魔女さんに魔法をかけられたら大変だから、トリートしてあげる。ちょっと待ってて。お菓子持ってくるわね」
「あ、いやその、すみません、実は道に迷ってしまって」
「あらあら」
「申し訳ありませんが、チェリータウンの集会所の方へ行く道を教えていただけないでしょうか?」
「迷子さんなら、車で送ってあげるわ。でもかなり歩いたんでしょ。
疲れてない? ちょっとおうちに上がって休んでいかない?」
「え、そんな」
「別に取って食ったりはしないから」と女の人が明るく笑うので、ボクはつい上がって休ませてもらってもいいかな、という気になってしまった。 
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「失礼します」といって靴を脱ぎ、中に入っていく。玄関入ってすぐのところに大きな鏡があり、魔女の衣装の自分が映った。そういえば、こんな格好だった。恥ずかし−。
 
ボクは真っ赤になるのを感じながら、彼女に案内されて家の奥に入っていった。 
「座って休んでて。今暖かいスープ持ってきてあげる」
もう暖炉の入った居間は暖かかった。今年は例年より寒くて、外を歩いていると、けっこう辛かったのである。
女の人が持ってきてくれたスープを飲むと、生き返る感じがした。
 
「私も女の一人暮らしだから、男の子なら家に上げなかったかもしれないけど、こんな可愛い女の子なら、いつでも歓迎だわ。オリーちゃんだったわね。私はベス」
 
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「え・・・・あの・・・・ボク、男の子なんですけど」
「え!?うそっ!」
「ハロウィンの衣装がこれしか残ってなかったものだから」
「えー、男の子には見えない。てっきり女の子と思ってた」
「ごめんなさい。すぐ帰ります」
「いいのよ、あなたくらい可愛ければ、男の子でもかまわないわ」
「すみません」
「サンドイッチでも召し上がれ。お腹すいてるでしょ」
「あ、はい。いただきます」
 
「ああ、なんか食べてる仕草も柔らかい雰囲気で、女の子っぽい」
「よく言われます」
「ねえ、君ほんとに男の子なの?実は女の子で私をからかってるんじゃないの?」
「女の子みたいとか、女の子だったらよかったのに、とかは言われますけど、ごめんなさい。女の子じゃないんです」
「うんうん。君、女の子だったらよかったのに」
「えへへ」
「自分でも女の子だったらと思ったりしないの?女の子になれたらとか」
ボクはちょっとうつむいた。
「あら、もしかして図星?」
 
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そうなんだ。ボクはよく「女の子だったらよかったのに」と言われて
まんざらでもない気がして、実は自分が女の子だったらなあ、とよく
思っていた。
 
それでひとりで留守番している時に、こっそりお母さんのスカートとか身につけてみたりしたこともあった。
 
「少し女の子になってみる?」とベスさんが悪戯っぽい顔で言う。
「なってみるって?」
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