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■ボクが女子高生になった理由(わけ)(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2003-04-08

 
※本作品はフィクションであり、固有名詞は全て架空のものです。 
 
竹田真也(たけだしんや)は困っていた。今は中三の11月である。高校に進学したいのだが、ずっと勉強をさぼっていたお陰で、入れそうな高校が無いのである。三者面談の場で、担任は母から真也が進学希望と聞いて一瞬言葉を失った。その様子を見て母は顔色を失った。
 
担任は県内の高校のランク別一覧表を取り出し、かなり下の方に赤い線を引いて渡した。「ここから下の高校なら、ひょっとすると通るかも知れません。この中から試験日のダブらないものを幾つか受けることにしてとにかく今からでも少しでも多く勉強させてください」
 
真也は母からたっぷり叱られた上で、ため息を付きながら、とにかく受ける高校を決めることにした。しかし高校のことを実は何も考えていなかったので、高校の名前を見てもさっぱり分からない。そこで赤い線の下の高校を受験日順に並べて、重なった所だけ鉛筆を転がしてどれを受けるか決めるという方法で、6つの高校を選び出した。
 
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 1月10日倉橋商業 1月13日棚田学院 1月16日弥栄農業 
 1月20日森川実業 1月22日春菜学院 1月24日広山高校 
 
そして母がどっさり買ってきた問題集を解くよう言われたが、なにせまともに今まで勉強していないので、ほんとにサッパリ分からない。「高校、どこも通らなかったら、どうしようかなぁ」浪人とかさせてもらえるだろうか。といってすぐ仕事に就こうにも、真也は特に何か付きたい職業というのもなく、将来のことについて何も考えていなかった。母は真也の勉強がどうもあまり進んでいないようであるのを見て、大きくため息を付いていた。
 
「ほんとに、あんた将来何になりたいのさ?」「分からない」
「例えば弁護士になりたいとか医者になりたいとか、何か無いの?」
「そんなの頭のいい人しか無理だよ」
「ああもう。いっそ女の子だったら、速攻でどっかお嫁さんにでもやってしまう手もあるんだけどねぇ。男の子なんだから、頑張りなさいよ」
 
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お嫁さんか。。。。女の子はいいなぁ。真也はふとそんなことを考えた。思えばそれが胎芽だったのかも知れない。
 
真也は週明けに自分が受けることにした高校のリストを担任の所に持ち込んで書類を作ってくれるように頼んだ。「よし。分かった。頑張れよ。倉橋、棚田、弥栄、森川、春菜、広山、っと。え?春菜!?お前ここも受けるつもりか?」
「ボクじゃ通りませんか?」「いや、通るとか通らないとか、そういう問題じゃなくてさ」担任は何か言おうとしたが、その時教頭から名前を呼ばれた。
 
「まあ取り敢えず書類作ってやるけど。門前払いになるとは思うけど。」
「そんな言い方はないと思います」真也は珍しくちょっと怒った。
「お前、本気なの?じゃさ、せめてここ受けに行く時は学生服じゃなくてセーターにジーパンか何かで行けよな。それと毛糸の帽子でもかぶっとけよ」
担任はそう言い残すと、教頭の方に行ってしまった。
 
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「セーターにジーパン!?なんでだろ。まぁいいか」真也は一瞬疑問に思ったものの、深くは考えないことにした。
 
真也が勉強しようとしてもほとんどできてない状態のまま1月が経ち2月が経ち、受験の日がやってきた。初戦倉橋。惨敗。どう考えても通る訳がないと自分で思える出来だった。二戦目棚田。同様。しかし試験慣れしたせいか少しだけ問題の解き方の糸口がつかめた気がした。三戦目弥栄。はじめて、手応えを感じた。試験会場で突然、問題の解き方が分かり始めたのだ。四戦目森川。かなり解けた気がした。こんなに問題を解けたのって初めて。合格に届いたかどうかは分からないけど。しかしなんだか調子が出てきた。このまま行けば、最後の高校ではなんとかなるかも。そんな気がしてきた。
 
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五戦目春菜。担任に言われたように、ここにはセーターにジーパンで出かけた。いわれた通り、毛糸の帽子もかぶっておいた。会場に行って少し驚いたのはものすごく女の子の受験者が多かったことである。というより自分以外に男子の受験生を見なかった。今まで受けた4校もどちらかというと女子の受験者が多かったが、これほど多いのは初めてだ。
 
問題は今までの4校よりも少し易しい気がした。かなり解けた気がした。これは行ける!初めてそんな気がした。午前中の問題が終わり、母が作ってくれた弁当を食べてからトイレに行って戸惑った。男女の表示がないのである。最初、トイレらしき所に女の子がたくさん入っていくので、そこは女子トイレで男子トイレはどこか近くにあるのだろうと思って探すのだが、見あたらない。そもそも、そこに女子トイレを示すような赤い印などは付いていない。ひょっとして男女共用?と思い、思い切って中に入る。入口付近から列ができていたので、ついつられて並んでしまった。奥まで進んでいってびっくり。小便器が見あたらない。全部ボックスだ。まさかここ本当に女子トイレじゃないよな?と不安に思ったが、女子トイレに男子が居たら騒がれているだろう。誰も騒がないところを見ると、やはりここは男女共用トイレなのか?
 
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自分の順番が来て開いたボックスに入る。洋式だ。しかもとてもきれいにしている。便座をあげて用をたっそうとしたのだが、なんとその便座が固定されている。「てことは座ってするしかない?」真也は少し戸惑ったが、座って用をたっしていると、なんだか落ち着いてきて、こういうのもいいもんだな、という気がしてきた。高校っておしゃれなんだな。並んで立ちションしてたら、横から変なこと仕掛けてくるやついるし、チンチン見られるし。真也は実はちょっとその部分に関してはあまり自信がなかった。全部個室ならのぞかれる心配もないから。高校のトイレって、そういうプライバシーが重視されてるのかな。やがて立ち上がると座っている間ずっと流れていた擬音が止まる。そして水をどこで流すのかな?と探していたら、勝手に流れた。全部自動になっている。すごい。真也はなんだか嬉しくなってトイレを出た。
 
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午後の問題も午前の問題と同様、スムーズに解くことができた。少なくともこの学校は通ってるんじゃないかな。真也は初めて希望が持てる気持ちがした。
 
そしてその週の最後、試験も最後の6校目広山。4校目と5校目が好調だったので、今度もその調子で行けると思って行ったのだが、。。。。。。この学校の試験は難しかった。今まで受けた中で一番難しい気がした。まともに解けた問題は少ない。こらあかん。と思った。しかし5校目の春菜は確実だろうし、4校目の森川もうまくすれば通っているだろうから、高校浪人ということはないだろう。真也はそう楽天的に考えた。
 
やがて各受験校から合否を知らせるハガキが来だした。倉橋×、棚田×、弥栄×。森川これが結局×だった。少しショック。しかし春菜○。合格だ。やった。そして広山×。これは仕方ない。ということで、結局真也は行くとしたら春菜に行くしかないことになった。
 
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そのことを母に告げると「え?お前春菜受けたの?」と言う。だって願書に印鑑押してくれたでしょ、と言うのだが、母はたくさん押していたので気付かなかったという。何か困ったような顔をしている。どうしてだろう。他の学校は?と聞かれたので全部落ちたと言うと、益々困ったような顔をした。
 
そういう母を放置して真也は学校に行き、担任に報告した。すると担任は「お前が春菜に合格した!?そんな馬鹿な」と言う。真也はまたカチンと来た。「ボクだって少しは勉強したんですから」。「うん。確かに何も勉強しないでは春菜でも通らないが、しかしそれ以前に....うーん」担任は何だか困っているような顔だ。どうしてだろう。
 
2月中旬に合格者への説明会があるというので母と一緒に行くことにした。母はどこから出して来たのか、赤いセーターを持ってきて、それを着るように行った。説明会の前に散髪に行ってこようとしたら止められた。受験勉強で忙しくて11月以来髪を切っていなかったのでかなり伸びていたのだが、そのままでいいと言われた。変だなと真也は思ったが特に理由などは聞かなかった。
 
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説明会に来ていたのはほとんど女の子だった。受験の時に女の子が多かったから、考えてみればそれも予想できることだ。「ここ女の子が多いよね」と真也がいうと母は「そりゃそうでしょ」と言ったが、またため息を付いて無言になってしまった。
 
理事長という60代くらいのおばさんが説明を始めた。「本校の校是は清く・正しく・美しくです」と言ったので、真也はつい「ふーん。まるで女子高みたいな校是」と言った。すると隣りの席に座っていた女の子が「ぷっ」と吹き出した。真也は訳がわからず「どうかしました?」と聞く。その女の子は「いや、面白いこと言う人だなと思って」と言う。自分は何か面白いこと言ったか??真也は首をひねった。
 
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校務主任という40代の女性が校則について説明しはじめた。「制服は昨年までは固定だったのですが、自由度を付けて欲しいという要望が多く、今年から、何種類かの組合せを選べるようになりました」と言う。「トップはセーラーとブレザー、ブレザーはチェックと紺が選べます。ボトムは紺のヒダスカート、チェックのフレアスカート、そして紺のスラックスも選べるようになっています」
 
「ふーん。じゃ、ボクは紺のブレザーとスラックスだな」とつぶやく。すると隣の女の子が「ふーん。確かにあなたスラックスがさまになってるね。スカートより似合う感じ。それに『ボク』なんて男の子みたいな言葉づかい」と言ってきた。男の子みたいって、ボクは男だからと言おうとしたら、近くにいた先生が「そこうるさい。静かに聞いてなさい」と注意してきた。仕方なく真也たちは口を閉じた。
 
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しばらくしてからその隣の女の子がトントンと腕をたたく。見ると小さなメモを渡してきた。「私は森田真琴。あなたは?」と書かれている。真也は彼女から渡された鉛筆で「竹田真也」と書いた。「ふーん。マヤちゃんか。可愛い名前ね。わたしはマコトなんて男みたいな名前だから」などと言う。「え?いやボクの名前はマヤじゃなくてシンヤ」と言おうとした所でさきほどの先生が「こら」とまた叱って鋭い眼光で二人をにらんだ。結局真也は自分の名前の誤解を解くことができなかった。
 
説明会が終わって帰宅してから母が少し思い詰めたような顔で、真也に尋ねた。「あんた、本当に春菜に行くつもり?」「うん。だって、そこしか通らなかったし」と言ってからふと思って付け加えた。「もしかして入学金のお金が無い?」
「それは大丈夫よ。ちゃんと準備していたから。でもあんた、本当にいいの?」
「うん、もちろん」すると母は開き直ったかのような笑顔になると「仕方ないわ。応援してあげるから頑張りなさい。あんたがそういう気持ちがあったとは知らなかったけど、悩んだら何でもお母さんに相談するのよ。許してあげるから」
と言った。真也は何のことかわからず、ちょっと首をかしげた。
 
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翌日真也が家に帰ってきてから着替えようとすると、たんすの中が見慣れない下着で埋まっていた。「お母さん。ボクの下着が」「高校の合格のお祝いも兼ねて、新しいのをたくさん買ってきたから」と言う。しかし。。。タンスの中に入っていたのは、まるで女の子の下着みたいな派手な模様のパンツに、いやにスベスベとして肌触りの見慣れない素材のシャツである。しかも袖のないランニング型。「前の下着は?」と尋ねると「古いからもう全部捨てた」
と言う。真也は諦めて、そのスベスベした感触のシャツと、派手な柄のパンツを身につけた。しかもこのパンツ、前の開きが無い。困ったな、と真也は思う。
 
そして真也は、できるだけ地味な感じの下着をと思って探していて、大いに戸惑うものを見付けた。「お母さん。これお母さんの?」といって、タンスから取り出したのはブラジャーである。「あんたのよ。ブラジャーに興味ない?」
 
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実は友人のうちで、その友達がどこかから調達してきたものを触ったことはある。あれはドキドキする体験だった。でも。。。「付けてみなさいよ」
これは何かの罰だろうか?? 真也は訳が分からなかったが、堂々と触ってもいいブラジャーがあるというのは悪くない気もする。好奇心もあったのでちょっと付けてみようとした。。。。がホックを留めきれない!! 「もう何やってるの。これから毎日付ける練習。いいわね?」なんで!?と思ったが、母はこれまでも時々突然変なことを始めたことがある。真也はそういう気まぐれにはあまり逆らわないことにしていた。どういう趣味で息子にこんなものを付けさせるのか理解できないが、とりあえず母が飽きるまで付き合ってあげるか、と真也は思った。
 
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「それから今日から毎日、ご飯の後にこれを1錠ずつ飲みなさい」と言って、母は真也に小さな薬の瓶を渡した。「小池先生からもらってきたの」という。うちのかかりつけのお医者さんである。瓶には英語の名前が書かれている「エシニルエストラジオール」とでも読むのだろうか??「何の薬?」真也はさっそく1粒飲みながら訊いた。「あんたの身体に必要な物よ」という。強壮剤の類だろうか。確かに自分は身体が弱いから。高校は中学よりハードかも知れないし。しっかり飲んで身体を鍛えなくちゃかな、と真也は思った。
 
数日後、制服の採寸をしてもらいに指定の洋服屋さんに行く。さすがにブラジャーは外していきたかったのだが、母は「付けときなさい」と怖い顔で言う。どうにでもなれ、という気持ちになって真也はそのままの格好で出かけた。「バストはまだ小さいですが、これから大きくなるでしょうから」と洋服屋さんがいう。確かに胸の肉がなくてあばらが出てるからなぁ、と真也は思った。「で、どのタイプになさいますか?」と訊くと母が「チェックのブレザーとフレアースカートで」と言う。真也が慌てて「スカートなんか履けないよ。スラックスでなくちゃ」と言ったが、母は「みんなスカートばかりなんだからあなたもそれに合わせた方がいいのよ」と言って押し切ってしまった。
 
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うっそー!!スカート履いて学校に通えと言うのか!?確かに女の子の生徒が多いみたいだけど。真也はさすがに母の真意をはかりかねたが、最近は確かに男の子でスカート履く人もいるし、と思いなおした。大阪に出てアメリカ村付近を歩いていると時々そういう人を見る。そういえば何年か前にスカート履いた男の子のボーカルがいるバンドがいたっけ?あれなんて名前だったけ。。。真也は思いだそうとするが、その時は名前が出てこなかった。
 
母はその帰り道、真也を連れてスーパーを訪れると婦人服売場に連れていき「普段着もあったほうがいいよね」といって、スカートやブラウスを何着か買った。真也はてっきり母のものを買っているとばかり思っていたのだが、家に帰ってからそれが真也のものであると聞かされて、思わずウソ!?と叫んでしまった。ひょっとして、母は自分に女装させようとしているのか!?真也はやっとそういうことに思い至ったが、何のためにそんなことを始めたのかさっぱり分からなかった。しかし女装もなんだか面白い気がしたので、真也は母の言われるがままの服を着て春休みを過ごした。
 
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やがて4月になり新学期。真也は用意されたスカートタイプの制服を身につけると、ちょっとためいきを付いてから家を出た。ここしばらくずっとスカートをはかされていたので、今更スカートの制服を身につけてもそう気にならない。慣れというのはおそろしいものだ、という気がした。他の男子生徒もスカート履いているんだろうか?と考えてみたが、行けば分かるだろうと開き直りの気分である。
 
学校に着いて新入生受付と書かれた机に行き「たけだしんやです」と言う。すると「たけだ....まやさんね。わざわざ漢字まで教えてくれてありがとう。あなたは1年3組です」と言われた。どうも名前の「真也」を「まや」と誤読されているようだ。「まや」じゃまるで女の子の名前だけどな。と思うが、読み方だけの問題だし、まぁいいか、と真也は思い、入学式が行われる講堂の1年3組と書かれた所に並んだ。すると先日の説明会の時に隣りにいた子が声を掛けてきた「マヤ!」。そうだ。この子もボクの名前をマヤと思っているんだ。もう面倒くさいから、このままでもいいか。真也は思い直すと「マコト!」と彼女の名前を呼んだ。「マヤも1年3組?同じクラスになったんだ。仲良くしようね」「うん」。真也は少し曖昧に微笑んで答えた。
「あれ、でも結局スカートにしたのね。こないだはスラックスにしようかとか言ってたけど」「うん。お母さんがこれにしろというものだから。あまり慣れてなくて恥ずかしいんだけど」「あぁ、マヤは普段いつもパンツルックなんだ。スラリとしてるし、似合うよね」
 
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しかし、と思って真也は講堂の中を見渡した。他に男の子はいないかな?と思ったのだが、スラックスをはいている生徒は見あたらない。そうか。男子でも自分と同じようにスカート履いてる子もいるだろうし。と思い直した。スカート履いていたら、男子も女子も見た目では区別つかないよな、と思った。特に真也など、結局あのあと1度も髪を切ってない(母が切るなと言った)ので、かなり伸びて肩まで髪がかかっている。これだけ長いと女の子にも見えるかも知れない、という気もする。
 
まさか、ボクは女の子として登録されていたりして、などとふと思ってから「あれ?」と思い、願書を書いた時の事を思い起こしていた。そういえば、他の高校の願書には名前・生年月日を書いたあと、性別で男に○をしたのだが、この春菜学院の願書には性別欄がなかったのである。その時、どこにあるんだろうと少し探した記憶があった。しかし制服は男女関係なく、スカートを履いてもスラックスを履いてもいいということのようだったからそういう自由な学校では、そもそも性別はどうでもいいのかも知れない、という気もしてきた。ただ中学から行っている書類ではちゃんと男子になっているはずである。とすると、間違って女子として登録されていることはあり得ないだろう。真也はそう頭の中で結論づけてほっとした。
 
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入学式が終わってから教室に入る。ここで改めて担任の先生から挨拶があった。中林慶子先生という20代くらいの若い先生だ。最初のホームルームということで先生がひとりひとりの生徒の名前を呼んでは自己紹介をさせられた。やがてボクの順番が来る。「タケダシンヤ....な訳ないね、マヤさんね。あらこの振り仮名間違ってる。直しておくね」と先生は最後の方は小声で言って、振り仮名をどうもシンヤからマヤに直してしまったようである。まぁいいか。真也はもう気にしないことにして「はい」と返事をして立つと「タケダマヤです。夕陽中学出身、乙女座です。趣味は読書です」
と言って座る。読書が趣味というのはあながちウソではない。もっとも、読むのは主として童話である。難しい本を読むと眠くなってしまう体質なのだが、代わりに童話は世界中の童話を色々かなりの数、読んでいた。
 
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真也は呼ばれる生徒の名前をずっと聞いていたが、どうも他の子はみんな女の子ばかりのようであった。男はこのクラスでは自分ひとりか。ホントに女子の多い学校なんだな、真也は思った。
 
自己紹介がひととおり終わった所で、中林先生は「さて」と言って「まだお互いに知らない同士ばかりとは思いますが、1年間このクラスで一緒に学んでいきますので、仲良くやっていってくださいね」と言い「それでは最初にクラス委員を決めたいと思います」と言った。「誰か立候補する人はいませんか?」あちこちで顔を見合わせるようなざわめきがあるが誰も名乗りでない。まぁ普通そうだろう。「誰もないようでしたら、1学期だけは先生の方から指名したいと思います」と言う。先の言葉はやはり儀式というものだろう。「森田真琴さん、どうでしょう?」真琴がびっくりした様子ながらも、割り切ったような顔をしている。たぶん中学でもそういう委員とかをしていたのだろう。「はい。私でよろしければ頑張ります」
「じゃお願いします」と先生が明るく言う。「では早速この後の司会をお願いします」というので、真琴は真也に手を振って、前に出ていき壇上で「森田真琴です。思いがけず指名を受けてしまいましたので、とりあえず1学期の間はクラス委員を務めさせて頂きます」と挨拶した。
 
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「それでは森田さん。すぐにも春の高体連が始まるのですが、春菜学院はバレーとバスケットが強いのはご存じですね。その応援のリーダーを各クラスから3〜4人ほど出すことになっているんです。その選出をしていただけませんか?」「あ、はい。応援のリーダーですね、誰かしたい人?」「いない?じゃ、リーダーは目立った方がいいだろうから背の高い人から3人選んじゃいましょ。てので、みなさんどうですか?」真琴はどうも独断専行タイプの委員のようだ。教室の中が少しざわついているが異論は出てこない。「先生、みんなの身長の一覧とかないですか?」
「まだ身体測定はしてないから」「そうか。じゃ私がここから見て目につく人で、川島淳子さん」「はい」「身長168くらい?」「ええ169です」
「それから、伊東春佳さん。身長167くらい?」「166です」驚くべき
ことに、真琴はさっき自己紹介しあったばかりのみんなの名前を記憶しているようなのである。すごい、と真也は思った。「竹田マヤさん」
「はい」真也は自分が呼ばれたのでびっくりした。「164かな?」ピッ
タリである。「ジャスト。すごい。どういう目をしてるの?」「では
この3人の方、背が高いし、応援のリーダーお願いできますか?」
 
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真也たち指名された3人はお互いを見合わせていたが、結局「はい」
と頷いてしまった。しかし背が高いというので選ばれたのなんて初めてだ。中学までは背の順で並ばされるといつも前の方にいたのである。
さすがに女の子の中に入れば、高い方に入るんだ、と少し感動した。
しかし応援のリーダーって何をするんだろう。詰め襟着るのかな?
などと思っていたが、リーダーに選ばれた川島さんがその疑問を解消
してくれた。「先生、応援のリーダーって要するにチアガールですよ
ね」「うん。そういうこと。少し過激な衣装着てもらうかも知れない
けど、よろしくね」と中林先生が答える。
 
チアガール!? なんでよりによって男のボクが? 真也は少し目の前が
クラクラとした。
 
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■ボクが女子高生になった理由(わけ)(1)

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