広告:メイプル戦記 (第1巻) (白泉社文庫)
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■OOが無いなんて・制服が無いなんて(1)

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(本作は2003年10月29-30日に、ファンタジーのかけら掲示板にhiroの名前で投稿したものをリライトしたものです)
 
¶制服が無いなんて
 
私は高校を出た後、最初紡績関係の工場に勤めていたのですが、そこが不況で閉鎖になった後、自動車の部品関係の工場に転職しました。
 
面接を受けて即採用しますと言ってもらい、工場長に紹介されたのですが、いざ作業服を支給という時になって
「あれ。男子用の在庫が無いや」
と言われます。
 
工場長さんが電話で問い合わせてくれたのですが、メーカーでも品切れで、入るのに1月くらいかかるということでした。そもそも男子工員は少ないみたいだし、それであまり在庫が無かったんだろうなあとも思いました。
 
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「君、身体が小柄だよね。しばらく女子用の作業服着てもらうわけには行かないよね?」
 
と聞かれます。
断ったら、採用自体取り消されそうな気がしたので
「あぁ、そういうの全然気にしませんから」
と言ったら工場長は
「助かった」
と笑顔で言って女子の作業服が支給されました。女子の服といっても工場ですから、スカートではなくズボンで、ただ色合いが男子のとは違うだけです。男子の制服は薄い紺色なのですが、女子はピンクっぽい色です。ちょっと恥ずかしい気はしたけど、気にしないことにして当日から作業をしました。私が言われた通りの工程をきちんと作業するので
「君なかなか優秀だね」
と褒めてもらいました。
「私、あまり気が利かないんで、お前コンビニに勤めたら半日でクビになるとか言われるんですけど、言われた通りのことをするのは得意です」
「まさにライン作業向きの人だ」
 
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¶穴が無いなんて
 
それで仕事を始めたものの、休憩時間にトイレに行った時、私は唐突に困った事態に遭遇しました。
 
女子用のズボンには前の穴が無い!
 
結果的に私は小便器が使えないので、個室に飛び込み、それでズボンを下げ、パンツも下げて便座に座っておしっこをしました。
 
女子用の作業着を着ると、こういう問題があるのか!と思い至りましたが、仕方ありません。男子用の作業着をもらえるまで、トイレは個室で乗り切るしか無いなあと思ったのでした。
 

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翌日、工場内で女子の作業服で仕事していた時のこと。この工場では約1時間ごとに15分間の小休憩があるのですが(それ以外に11時と14時に1時間の大休憩がある)、その何度目かの小休憩の時でした。
 
「はい、5班の女子はこっち来て」
などと呼ばれて、周囲の女子がそちらに行きます。私はそのまま座っていたのですが
 
「ほら何やってるの君。早く来なさい」
などと言われるので、ぼく男だけどと思いながらも、そちらに行きました。そして、お茶の準備したりとか、おやつの切り分けを手伝ったりとか、するはめに。
 
そんなことしているうちに女性たちの中で私がどうも女ではなさそうと気付いた人がいて、
「あんたもしかして男?」
と訊かれます。
「男ですー」
「なんで女子の服着てるの」
「男子の服の在庫が無かったらしくて」
 
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「あぁでも、あなた小柄だし女子でも通るかもね」
「顔立ちも優しい雰囲気だし、わりと細身で女の子に見えないこともないんじゃない?」
「眉毛細くすると女顔になりそう」
などと、すっかりおもちゃにされてしまいます。
 
そして気が付いたら、眉毛は細くカットされちゃって、お肌にいいからと化粧水・乳液付けられて、午後の作業をするはめになりました。しかしこれがまだほんの序章だったとはその時私は夢にも思わなかったのです。
 

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¶縁取りが無いなんて
 
まだ入って数日の頃。
 
トイレに行っていつものように個室でおしっこをし、個室を出たら、ちょうどトイレの入口から入ってくる男性工員さんが居ました。私は会釈します。すると私が女子の制服を着ているもので、彼はてっきりこちらが女子トイレと思ったようです。慌てて反対側に入っていき5秒後
 
「きゃー」
「ごめん」
という声と共に慌てて飛び出してきました。
 
「やっぱりこっちが男便所か。おばちゃん、女が男子トイレ使うのはやめてくんない。いくら混んでてもさ」
「いえ。私、男ですが。男子の制服がないらしくて、女子の制服着てるんです」
「なんだ」
 
という事故が3回続けて起きてしまい、3度目は結構古株の人だったもので
「おまえ、紛らわしいからさ。今度から女トイレ入れよ」
などと言い出しました。
 
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「そんなことしたら私が痴漢かと思われます」
とさすがに抵抗していたら、私が所属している5班の班長を務めている女性が
 
「ああ。この子なら女子トイレ来てもいいよ。変なことしそうにないし。女子トイレは、ちょっと順番待ちで並んだりはするけどね」
 
と言います。フォローされてるのか何なのかさっぱり分からない。
 
しかしそれで
「じゃ君は女子トイレを使うということで決定」
 
ということになってしまいました。
 
「でも痴漢と間違われますー。社員証見ても男と分かるし」
と私が情けない顔で言うので
 
「じゃ社員証を交換しよう」
 
と班長さんは言って、
「あんた裕太だと男名前だから、女名前を付けよう」
と言われます。
 
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「普段から使ってる女名前は何?」
「女名前とかありません」
 
「うーん。じゃ裕恵にしようか」
「あ、可愛いんじゃない?」
と言われ、私は
「中川裕恵」
という社員証を作られ、周囲に赤い縁取りまでされました。
 
この工場では、女子の工員は社員証に赤い縁取りがあるのです。
 
「じゃこれ付けて」
と言われるので、私は今付けている社員証の中身を取り出し、班長に返し、代わりに今作られた社員証を、ケースの中に入れました。
 
「これなら、社員証見て女だと思うから、誰も騒がない」
と言われます。
 
「これじゃまるで女子社員になったみたいです」
「別に困ることは無いんじゃない?」
 
ということで、私は女性名が書かれ、女性を表す赤い縁取りまである社員証を着けることになり、それで女子トイレを使うことになってしまったのです。
 
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その日のおやつの時間にはみんなに班長が話を通してしまい早速
 
「じゃ少し慣れておこう」
などと言われて、同じ班の女性数人に一緒に女子トイレに連れて行かれ、順番待ちの列に並ぶはめになってしまいました。私はもう恥ずかしく恥ずかしくてたまりませんでしたが、待っている間にいろいろおしゃべりなどしていると少しは気が紛れました。
 
「でも女子トイレっていつもこんなに列ができてるの?」
「まあ女子トイレの名物かもね」
「へー」
「ああ、あまりこれまで女子トイレ使ったことなかった?」
「使ったことないですー」
「クローゼットさんだったのかな?」
 
などと言われましたが、“クローゼット”ってどういう意味だろう?と思いました。
 
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しかしそういうわけで私は会社の中では女子の社員証を着け、女子トイレを使うことになってしまったのですが、まだまだこれも序ノ口でした。
 

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入社してから一週間ほどした時、私が朝出社して、男子更衣室で女子制服に着替えていたら、出社してきた男性が更衣室に入り、私を見て
 
「あ、ごめん、間違った」
と言って、飛び出していきます。でもすぐ戻って来て
 
「君、ここは男子更衣室だよ。女が入ったら困るよ」
と言われました。
 
「私、男ですー」
「だって社員証も女の社員証じゃん」
 
それで私はこれまでの経緯を説明したのですが、この件が課長も入れて討議されたようです。そして私は言われたのです。
 
「君、紛らわしいから女子更衣室使ってよ」
「えー?それはさすがにまずいのでは」
 
と私は言ったのですが、ベテランの女子社員さんから
 
「あんたなら、無害そうだから女子更衣室使ってもいいよ」
と言われてしまい、私はその日の夕方から、女子更衣室を使うことになってしまったのです。
 
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それで私はロッカーの中身を男子更衣室内の私の名札の入ったロッカーから女子更衣室内に新たに割り当てられたロッカーに移動することになり、これは数人の女子社員が手伝ってくれました。そしてそこに私の名札も差されたのです。
 

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¶下着が無いなんて
 
「でも女子更衣室広ーい」
 
そこは男子更衣室の5〜6倍の広さがある感じでした。男子更衣室には無い化粧直し台とか専用のトイレとかもありますし、お茶を入れる道具などもあり湯飲みが多数置かれていました。
 
「まあここに勤めてる人の8割が女子だからね」
「休憩時間の時はここで休んでもいいよ」
「へー」
「休憩室は狭いしね」
「そうか。皆さんこちらで休んでいたんですね」
「そうそう。おやつとか食べながら休んでる」
 
「で、でもぼく男物のシャツとトランクス穿いてるのに、女子社員の皆さんと一緒に着替えてもいいのでしょうか?」
と私が言うと、数人の女子社員が考えているようでしたが、やがて言いました。
「あんたも、女子用下着を着けてれば問題無いよ」
「そんなの持ってません!」
 
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「恥ずかしがらなくてもいいのに」
「普段は女の子下着を着けてるんでしょ?」
 
私なんか根本的に誤解されてない?と思ったのですが、
「本当に持ってないなら買いに行こう」
と言われ、数人の女子社員と一緒に、私は女子用下着を買いに行くハメになってしまいました。
 
「ブラジャーはどこのが好み?」
「そんなもの着けたことないから分かりません!」
 
それで結局、売場のお姉さんにメジャーで胸廻りを計られて
「あなたはA70でいいね」
と言われました。
「細ーい」
「やはり女の子らしい体型をキープできるように努力してたの?」
などと女子の同僚たち。
 

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それで結局A70のブラジャーを3枚買いました。1枚3000円で9000円もしたのですが、お金は班長さんが出してくれたからと言って、女子同僚が払ってくれました。
 
そして次にショーツを買いに行きます。これも売場のお姉さんにサイズを計ってもらったら
「Mでいいですね」
ということでした。
 
それでMのショーツを10枚くらい選んでと言われたのですが、見ていてクラクラときました。
 
レースたっぷりのものとか、可愛いお花の模様がプリントされたものとか、大きくベティちゃんの絵が入っているものとか。なんか頭の中の回路を破壊されるような気分でした。
 
「ちなみにあんたもうちんちんは取ってるんだっけ?」
「ちんちん取る?」
私は意味が分かりませんでした。
「まだちんちん付いてる?」
「付いてますけど」
「だったらハイレグは無理ね」
と彼女は言っていましたが、私はさっぱり意味が分かりませんでした。
 
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結局同僚たちが10枚選んでくれましたが、レース使いのおとなっぽいものや、小さな星とか花がプリントされた少し少女っぽいものなどが入っていました。
 

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「ちなみにあんた、足の毛は処理してるよね?」
と訊かれました。
 
「処理?」
「足のむだ毛は脱毛してる?あるいは剃ってる?」
 
足のむだ毛って、スネ毛のこと??
 
「そんなことしてません」
「だったら、それはちゃんと剃ってて」
「確かに足に毛が生えてたらまずい気はする」
 
「処理の仕方分かる?」
「分からないです」
「剃るならT字型が初心者にもやりやすい」
「T字??」
 
私が分からないようだったので、自分も剃刀派という同僚の北野さんがドラッグストアまで付き合ってくれました。
 
「これ高いけど剃りやすい」
と言って、替え刃2枚付き1800円の女性用剃刀を勧めてくれたので、それを買いました。こんなのひとりでは分からない所でした。
 
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OOが無いなんて・制服が無いなんて(1)

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