【旅一夜(たびひとよ)】(1)

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「ね、青春18きっぷというのがあるの。11500円で5日間、全国のJR普通列車が乗り放題なんだよ」
「普通列車じゃ大した所まで行けないだろ?」
「それが1日で東京から九州まで充分行けるのよね〜」
「でも宿はどうするの?」
「1日は夜行列車を使うの。それから九州からの帰りは神戸までフェリー使おうと思ってるのよね。それから都会で泊まる場合はネットカフェ使えるし」
「ネットカフェとかぶっそうじゃないの?」
 
「ちゃんと女性専用コーナーとかあって、男の人は近づけない仕組みになってるから大丈夫だよ」
「それならいいけど」
「で、計画してみたら、1ヶ所だけ田舎の温泉地で宿泊しないといけないのよね。
そこは宿に泊まろうと思ってる」
「でもどうして急に一人旅なんて」
「いいじゃん。来年になると受験で忙しくなるしさ」
「そうだね、こないだから、あんた少し沈んでた感じだったし。そんな計画を立てただけでもいいことにしてあげようかね」
 
私は中学2年の時から足かけ4年付き合ったボーイフレンドと破綻して、しばらく意気消沈していたのだが、心機一転またクラブ活動や勉強で頑張ろうと思い、気分転換に夏休みの一人旅に出る計画を立てたのであった。
 
旅の費用は「青春18きっぷ」を使って食費込み4万円と見込んだ。お年玉が今年は手つかずで残っていたのでそれを3万使い、残り1万を親に援助を頼んだ。母は毎日ちゃんと定時に携帯で連絡を入れること、というのを条件に認めてくれた。母は「余ったら返して」といって2万円渡してくれた。
 
かくして私は一人旅に出たのであった。
1日目は水戸方面まで往復してきて、夜東京に戻り「ムーンライトながら」に乗車する。そのあと普通列車を乗り継いで2日目の夜に小倉まで辿り着くと、駅近くのネットカフェに泊まった。3日目九州管内の鉄道を乗り継ぎ、お昼には有名な観光地を訪れる。
 
2日目までひたすら列車に乗っていたので、ちょっと自分の足で歩いてみたい気がしてその公園を散歩する。日差しは強いが風が気持ちいい。池の中のあひるなど眺めていると心が和んだ。公園の近くの食堂でお昼を食べようとしたら混んでいた。
ああ、少し離れた所で探せば良かったかなとも思ったが、急ぐ旅でもない。今夜泊まる所まで行くのには充分ゆとりのあるスケジュールになっていた。
 
「相席でもよろしいですか」と言われ、私は同じくらいの年の女の子が座っている席の向かい側に案内された。「すみません」と挨拶すると向こうも軽く会釈した。
 
まだ向こうも食事が来る前のようだ。私はなにげなく彼女が読んでいる雑誌の表紙を眺めていて「あ」と思わず声を上げた。
「どうかしました?」
「あ、いえ、ついその雑誌の表紙見てて、○○△△の名前を見たものだから」
「ファン?」
「ええ。大好きで」
「インタビュー記事載ってるよ。見る?」
「ああ?いいの?  わーい、ありがとう」
 
私達は同い年くらいだなというのの気安さで最初から友達言葉で会話を交わした。
雑誌のインタビューの件で言葉を交わしたのをきっかけに、私達はいろいろおしゃべりを始めた。彼女は瑞穂と名乗った。
「へー、瑞穂さん、福井から来たの?一人旅?すごーい」
「春奈さんだって、東京からでしょ。ボクより遠くからじゃん」
「よく親が許してくれたね」と私達は同時に同じことを言って笑った。
彼女も18きっぷを使っていた。
 
やがて食事が来る。私達は食べながらも会話が物凄く盛り上がった。
「私達、なんだか気が合うみたい。ね、携帯の番号とアドレス交換しよ」
「うんうん」
「今夜どこに泊まるの?」
「☆☆温泉」
「わあ、同じだ。宿決めてる?」
「□□荘ってとこ」「わー、同じじゃん」
「あらあ、すごい偶然ね。ね、ね、午後はどこか行く予定ある?」
「ううん。なーんにも考えてなかった」
「じゃ◇◇まで往復してこない?13:08の列車に乗れば◇◇まで行ってから18:20には☆☆温泉に辿り着けるんだよ。すごい連絡がいいの」
「へー。じゃ一緒に行こうか」
 
「でも春奈は何か旅行の目的とかあったの?」
「えへへ。実は失恋の傷を癒すための傷心旅行なのだ」
「わあ。ボクは恋愛の経験が無い。こちらはちょっと☆☆温泉に目的があってね」
春奈はちょっとボーイッシュな雰囲気を持っていて、一人称にもボクを使っていた。それをいうと「兄さんがいたから、その影響で小さい頃からボクと言ってたんだよね。私と言えってお母ちゃんからは言われてるんだけど、長年の習慣はなかなか直らなくて」
「へー」
 
彼女との旅は楽しかった。私達は興味のあるジャンルはけっこう重なっているのに、お互いの持っている情報が各々新鮮で、有意義な会話ができた。私達はいつしか「瑞穂」「春奈」と呼び捨てで呼び合うようになっていた。
 
ところが◇◇まで行った時のことだった。
「あれ。ボク、デジカメ持ってない。。。どうしたのかな」
「え?○○駅で写真撮ってなかった?」
「うん。そうなのよね。その後どうしたのかな。。。。」
「駅に忘れた?」
「あ、なんかそんな気がしてきた。あの時、財布出すのに、横にデジカメ置いてそのまま」
「ごめんねー、私も気付かなかったよ」
「いや、ボクが悪いんだし」
「じゃ、駅に忘れ物として届いてるかも。電話してみようよ」
「そうだね」
瑞穂は○○駅の電話番号を調べて掛けてみた。すると確かにデジカメが忘れ物として届いているという。
「よかったね」
「うん、帰りに取っていこう」
 
瑞穂は◇◇では携帯のカメラで記念写真を撮っていた。そして帰りの電車に乗りちょうど乗り換え駅になっている○○で駅員室に行き「さきほど電話したものですが、デジカメの忘れ物を」という。
「ああ、これね。一応身分証明書見せてください」
「はい」
といって瑞穂はバッグの中から学生証を取りだした。最後のページを開いて駅員さんに見せる。え!?と私は思った。
 
学生証の最後のページ、学生服を着て写っている瑞穂の写真があった。
 
嘘。。。瑞穂って男の子なの?女の子とばかり思い込んでいたから何も考えてなかったけど。待って、さっきトイレに行った時は一緒に女子トイレに入ったよね。。。。あ、もしかして最近流行りの『男の娘』ってやつかしら? 
そう思って瑞穂の服装を見ると、ゆったりしたポロシャツにジーンズで、そもそもユニセックスな服装だ。胸のあたりに注目するが、あまり目立たない。自分もわりと貧乳なので気にしていなかったが、そもそも胸が無いと考えてもおかしくないような曲線だ。瑞穂に聞いてみようかな・・・でも今更性別を尋ねるなんて・・・ 
やがて汽車は☆☆温泉に到着する。
私は瑞穂に性別のことを尋ねるきっかけがつかめないまま、普通の雑談をしながら宿に入った。
「予約していたものですが」とふたりとも言うと、一緒に入ってきたので連れと思われてしまったようであった。同じ部屋に通されてしまった。
 
「あ、ウェルカムクッキーに『鶴の羽根』。これ美味しいんだよ」
と言って瑞穂はお茶を入れてクッキーを1個こちらに手渡してくれた。
「うん、ありがとう」と言って受け取る。
「わあ、美味しいね」「でしょ」
 
にこにこしながら瑞穂はクッキーを食べている。その顔を私は微妙な心情で見つめていた。瑞穂は男の子なんだろうか?女の子同士なら、とても仲良くなれた相手だし同じ部屋になるのは全然構わない。宿代だって安く済むし。でも、もし男の子だったちょっとやばいよな、などと思ったりする。だいたい着替えとかどうしよう? 
「あ、そうだ。ボクちょっと1ヶ所行ってくるところがあるんだ。春奈は部屋で休んでいてね」
といって瑞穂はバッグだけ持って外に出て行った。
 
ふうっと私は息をついた。
 
でも瑞穂、男の娘なのかなあ・・・・考えてみるとそれも悪くないな、という気がしてきた。心が女の子であるなら、別にそばで着替えとかしてもいいような気もする。だってきょうずっと一緒にいて盛り上がっていたし。あれ?でも瑞穂は男女のつもりで私を見ていたりして?えー、もし向こうがそのつもりでいたのなら、今夜私は瑞穂とセックスしちゃうことになる?? だって男女のつもりでいて、同じ部屋に入るの同意したってことは、ほとんどセックスに同意したも同然じゃん。きゃー、そうなったらどうしよう? 
そんなことを考えていた時、母から電話が入った。
「こらー、定時連絡」
「ごめん、ごめん。☆☆温泉に着いて予定通りの宿に入って少し休んでた所」
「疲れてない?」
「大丈夫。今夜は温泉だし、ゆっくり休むよ」
「特に変わったことはない?」
「うん。何も。平穏無事」
 
私は母との電話を終えると、トイレに行きたくなり、宿のトイレまで行った。
 
「ふーん。トイレは男女共用か。。。田舎の旅館だしなあ」
と思って中に入る。個室の方に行こうとして、ふと小便器の所に立っている影を見た。え?「瑞穂!?」
その人物は振り返って「あ?春奈」と笑顔で答えた。振り返りながら、よく男の子がする、おちんちんを振るような感じの腕の動きを見せた。
 
「春奈もトイレ?じゃボク先に部屋に戻ってるからね」
私はぽかーんとしてその後ろ姿を見送った。
やはり瑞穂は男の子だったのか・・・・じゃ。やはり私今夜は男の子と同じ部屋で一晩過ごすの!?トイレを済ませてから部屋に戻ると瑞穂は何やら携帯でメールか何か打ち込んでいた。少しドキドキしながらその姿を見る。男の子としては美形だよなあ。私と同じ部屋に案内されて、特に何か誘うような感じもなかったけど。。。いわゆる草食系というやつ?いやむしろホントに男の娘ならそもそも恋愛対象は男の子でふつうに私は女の子同士のつもりでいればいいのだろうか。。。。
 
でも向こうが男女の意識でいた場合、夜中に襲われたらどうしよう。いや待てよ。
旅先の一夜の体験なんて悪くないかなあ。後腐れもないだろうし。私セックスしたことないし、一度経験しておくのもいいのかも知れない。。。。
 
私の思考は半ば妄想が混じったものになっていた。
 
「あ、春奈、夕飯前にお風呂に行かない?」
「あ、え?お風呂?」
「ここの大浴場、広いんだよ。ね、一緒に行こう」
一緒に行こうと言われても。。。。一緒に入る訳じゃないよね!? 
しかし私はなんだか瑞穂の勢いに押されて、着替えを持って瑞穂と一緒に浴場の方へ行ってしまった。通路の奥、突き当たりに「天然温泉大浴場」の看板があり左側に「姫様」、右側に「殿様」と染められた暖簾が掛かっている。
 
「じゃまた後で」と私が言いかけたところで瑞穂は「さ、入ろ、入ろ」といって、私の肩を押して、一緒に「姫様」の暖簾をくぐってしまった。なに〜?「ちょっと瑞穂、なんでこっちに来るのよ?」
私はたまらずそう尋ねた。すると瑞穂は「え?なんでって、こちら女湯だよね」と言って、きょとんとした顔をしている。
 
はぁ?私はどう反応していいのか分からず、そのまま脱衣場の中に進む。
すると瑞穂はロッカーの前で洋服を脱ぎ始める。あっけにとられて見ている。
え?ポロシャツを脱いだ下に瑞穂はブラジャーを付けていた。やはり女装趣味??ズボンを脱ぐと下には女の子パンティを穿いている。そのパンティの中にあれを収めているのだろうか?よくこぼれないな、などと考えた。
 
「ん?どうしたの?脱がないの?」と瑞穂は不思議そうな顔をしてこちらを見ている。そしてそのままブラを取ると、Bカップくらいの乳房が姿を現した。
もしかして豊胸済み?などと思っていると、瑞穂はパンティも脱いでしまう。
そこには・・・・何も付いてなかった。
「どうしたの?私先に入っちゃうよ」
「あ、私も脱ぐ」
といって私は瑞穂の隣のロッカーを開け、服を脱いでそこに入れた。
 
一緒に浴室のほうに行く。掛かり湯をし、あのあたりを洗ってから湯船につかった。瑞穂のそばに行き、あらためてその身体を見た。
「瑞穂って・・・・女の子?」
「えー?何を今更。ボク、男の子に見える?」
「いや、女の子だよね・・・・」
私はそれではさっきトイレで小便器の前に瑞穂が立っていたのは、幻か何かだったのだろうか?と思いたくなった。
 
お風呂から上がり、部屋に戻ると、ちょうど中居さんが晩ご飯の用意をしている所だった。最近は食堂で御飯を提供するところが多く、このように各部屋まで持ってきてくれるところは珍しい。
 
「焼き魚が、今焼いたばかりって感じだね」
「そうそう。ここのサービス凄いんだよね。ここまでするのって普通は1泊3〜4万取るところでしょ。1泊2食付き8000円の宿で、ここまでするって全国他に例がないんじゃないかな。ボクここに泊まるの3回目なんだけど、感心する。ここの温泉の宿の中ではいちばん好きな宿のひとつ。配膳の時間と人員配置まで考えて計画的に調理をしているのよね。だから作りたての料理を各部屋にきちんと配膳できるんだ。凄いプログラムが動いているんだって。
人間の勘だけでは無理だよね」
「へー」
「わあ、美味しい」
 
焼き魚にしてもトンカツにしてもほんとに作ったばかりという感じである。
それでいてお刺身も新鮮な感じだ。
「御飯も炊きたて!」
「うん。各部屋毎にその部屋用の炊飯器で炊いてるから。炊くこと自体は炊飯器に任せちゃうかわりに、ちゃんと炊きたてで持っていく。良い米を使うとか、プロの炊き方したりしても、炊いてから時間がたっちゃうと味が落ちる。少し等級の落ちる米を炊飯器で炊いたのでも、炊きたては美味しい」
 
「でもここ何度も来てるのね」
「うん。妹の命日に合わせてね」
「え?妹さんが亡くなったの?」
「もう5年前になるな。夏に家族で遊びに来ていて崖から落ちてね」
「それは・・・・」
「両親は辛いからここに来たくないというんだけど、ボクはこの時期に来ると妹と会えるような気がして、毎年来てるんだ。泊まるのはこの宿だったり、あるいは別の宿だったり、毎回いろいろだけどね」
 
その時私は急に眠気が襲ってきた。
「ごめん、なんだか眠くなって来ちゃった」
「ああ、少し寝るといいよ。残った御飯、起きてからまた食べるといい」
「うん、そうしようかな」
「膳を下げにきたら、あとでまた食べるから待ってと言っておく」
「ありがとう」
 
私はとにかく眠たかったので、そのまま布団に潜り込んでしまった。
瑞穂はまだ妹さんのことを言っていた。
「ずっと一緒にいたのに、事故の起きる30分くらい前にちょっと喧嘩しちゃって別行動してたんだよね。それが悔やまれて」
「そういうのって、なんか悔しいよね。でも瑞穂のせいじゃないよ」
「うん。そうは思うんだけど・・・でも兄1人妹1人の兄妹でさ、いつもは凄く仲良くしていたのに。ボクは兄として、何かできなかったろうかと悔やまれて・・・」
ん?兄!?ちょっと待て・・・・瑞穂って、やっぱり・・・・ 
と思った時、私は強い睡魔に襲われ、そのまま眠りの中に落ちてしまった。
 
目が覚めた時、私は部屋の中にひとりでいた。携帯の時刻表示を見ると1時間くらい寝ていたようだ。御飯が冷めているが、部屋は冷房が効いているし、痛んだりはしていないようなので、私は食べかけの御飯を少し食べた。冷めても美味しい。だけど。。。瑞穂はどこに行ったのだろう。お膳は1つだけ残っている。瑞穂の分は下げられたのだろう。そして仲居さんが下げに来た時、私の分は待ってと言ってくれたのだろう。
 
しかし眠り込んでしまう直前の瑞穂の話って。。。。。
 
その時だった。部屋のドアをドンドンと叩く音があった。
「はい、どなたですか?」
私はドアを開けないまま、ドアの向こうの人物に尋ねた。
「すみません。宿の者です。お連れの男の方が崖から落ちて大怪我して」
「え?」
私はドアを開けた。
 
宿の法被を着た男性2人が担架を持っていて、その上に瑞穂が横たわっている。
「ちょうど通りかかりの人が見つけて、うちの宿の浴衣を着ておられたのでうちに通報がありまして」
「あ、春奈。妹の落ちた崖のところでお祈りしてたら足すべらせちゃって」
「とにかく中へ」
 
担架が中に運び込まれる。
「今、お医者さんを呼んでますので、少しここで休ませてあげてください」
「はい」
 
宿の人が出て行く。私はドアを閉めて、それから瑞穂の所に駆け寄った。
「大丈夫?」
「うん。足折れたかも知れないけど、それ以外は大丈夫っぽい。あ、いたた」
「痛いのね。手握ってあげる」
「ありがとう」
そういえば瑞穂の手を握るのはこれが最初だ。暖かい手だなと思った。
 
そんなことをしていて5分も経った頃だった。
ドンドンドンとドアを叩く音がする。お医者さんが来たのだろうか??私はドアの所に寄ると「はい、どなたですか?」
とドアを開けないまま尋ねた。
「すみません。宿の者です。お連れの女の方が崖から落ちて大怪我して」
「え?」
私は驚いて、部屋の中にいる瑞穂のほうを振り向いた。
 
瑞穂が真っ青な顔をしている。
「だめだ!それはきっと妹の幽霊だ!開けちゃだめ」
 
しかし私はドアの方を見て、それを開けた。
 
宿の法被を着た男性2人が担架を持っていて、その上に瑞穂が横たわっていた。
「ちょうど通りかかりの人が見つけて、うちの宿の浴衣を着ておられたのでうちに通報がありまして」
「あ、春奈。兄さんが落ちた崖のところでお祈りしてたら足すべらせちゃって」
「大丈夫?」
「うん。足折れたかも知れないけど、それ以外は大丈夫っぽい。あ、いたた」
「今、お医者さんを呼んでますので、少しここで休ませてあげてください」
「はい」
 
その時、私は部屋の中を振り返った。
果たしてそこには誰もいなかった。
担架も無かった。
 
「とにかく中へ」
担架が中に運び込まれ、さきほど担架が置かれたのと同じ場所に瑞穂を乗せた担架は置かれた。私は瑞穂の手を取ってあげた。
暖かい手であった。なんかさっきと同じ感触がした。
「大丈夫だよ、瑞穂。私がずっと手を握っていてあげるからね」
「うん。ありがとう」
 
「ね、瑞穂。瑞穂の学生証、見せてくれない?」
「え?なんで?いいけど。そこの黄色いバッグに入ってるよ」
「じゃちょっと見せてね」
 
私は瑞穂の黄色いバッグを開け、中に入っている学生手帳を取り出し、最後のページを開けた。そこにはセーラー服を着た瑞穂の写真が貼り付けてあった。
 
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