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(C)Eriko Kawaguchi 2010-12-10
「OPRSTUVW」
それが前夜に見た夢の中に出てきた文字だった。
その時はそれが何を意味するか、さっぱりわからなかった。
ただ、なぜQが無いんだろうと不思議に思った。
「オリー、まだ着替えてないのか?もう行くぞ」
トムの声がするが、ボクは困っていた。
「待って、衣装が残ってないんだよ」
「おまえ、遅刻してくるからだぞ。あ、そこの箱に何か入ってるじゃん」
確かにその箱には気づかなかった。
というか、そこに箱とかあったっけ?
「あれ、これ魔女の衣装じゃん。女の子用なんじゃないの?」
「女の子たちはもうみんな着替えてるぞ。それしか残ってないんだからもうそれ着ろよ」
女の子の服・・・・・それはボクにとっては特別な意味のあるものだった。でもそのことは誰も知らない。
「そうだね。これしかないなら、これ着るしかないよね」
ボクはそんなことを言いながら、手早くシャツとズボンを脱いで、その魔女の衣装。黒いドレスに先のとんがった帽子を身につけた。
トムはもう先に行ってしまった。
今日はハロウィン。近所の子供たちで集まって、家々を回り
「トリック・オア・トリート」
と言って、お菓子をもらうのだ。
ボクが着替え終わって外に出ると、子供たちもかなり人数が減っていて残っていたのは、リサ・ルイーザ・エマの女の子3人とマイケル・ハリーの男の子2人だった。
「あと誰が残ってた?」
「えーっと、ボクで終わり」
「あら?その声はオリーなの?女の子かと思った」とエマ。
「女の子が走ってくる感じに見えたから、女の子なら私たちと一緒に回ろうと思って待ってたのよ。じゃ、私たち3人で行くから」と、女の子3人はさっさと出発してしまった。
幼なじみのリサが「可愛い魔女さんになってる。似合ってるよ」と小さい声でボクの耳元にささやいてから、笑顔で手を振って行ってしまった。
「ちぇっ、のろまのオリーだったとはな」とハリーが不満そうに言う。たしかにボクは、男の子たちと遊んでいる時、いつもワンテンポ遅れてしまう。
「しゃーねえ。行くぞ」
「おまえ、ちゃんと付いて来いよ。はぐれても知らんから」とマイケル。
トムみたいに少しだけ親切にしてくれる子もたまにはいるけど、大半の男の子は、だいたいこんな感じで、ボクはいつもお荷物扱いだ。
でも今日はボクも頑張らなくちゃ。
マイケルたちが歩き出すので、ボクも歩き出した・・・とたん、人とぶつかってしまった。「あ、ごめんなさい」。
「あら、私の方もごめんね。あら可愛い魔女さん」と、言ったのは、上品な感じの24〜25歳くらいかな?という感じの女の人だった。黄色いコートを着ていたのだけど、ボクはその時なぜか彼女の「魔女」ということばに何か特別なものを感じた。
「おい、何やってんだ、オリー。置いてくぞ」とハリー。
「あ、ごめん」ボクは走って男の子たちに追いついた。
今夜のハロウィンはどうも不作だった。
当てにしていた家が「ごめん、もう先に来た子供たちにあげちゃって
もう残ってないよ」とかだったり、お留守だったり。
30分ほど歩いて、1軒でしかお菓子をもらえなかった。
「参ったな」
「こんなにもらえないとは」
「なあ、丘の上の新興住宅街はほかのグループ行ってないんじゃ?」
「でも校区外だぞ」
「かまうもんか。ハロウィンくらい知ってるだろ」
「じゃ少し遠いけど行ってみるか」
「おい、オリー、遠いから早く歩くぞ。付いて来いよ」
とふたりはさっさと歩き出した。
ボクはここまで30分歩き回って、かなり疲れていた。
「うん。頑張る」
といって、ふたりの後を追って歩き出したものの、どんどん離されていきとうとう見失ってしまった。
ボクはしばらく歩いていたが、いくら歩いていてもふたりの姿を見ることができず、途方に暮れて立ち止まってしまった。
「だめだ。帰ろうかな・・・・・」
ボクは簡単に諦めてしまい、集会所に戻ろうと、坂を降り始めた。
が、どこかで曲がり角を勘違いしたのだろうか。
いつの間にか全然知らない区域に迷い込んでしまっていた。
「まずい。夜だから道に迷っちゃったみたい」
「どこかのおうちで道を聞いてみよう」
そう思ったボクは、手近に見た灯りがともっているきれいな感じの
2階建ての家のベルを鳴らしてみた。
「はーい」
女の人の声がして、出てきたのは・・・・さきほど集会所前でぶつかった人だった。
「あら、さっき会った子ね」
「あ、はい」
「おうちを訪問したら、台詞を言わなくちゃ。ハロウィンでしょ」
「あ、えーっと、トリック・オア・トリート!」
「あらあら、可愛い魔女さんに魔法をかけられたら大変だから、トリートしてあげる。ちょっと待ってて。お菓子持ってくるわね」
「あ、いやその、すみません、実は道に迷ってしまって」
「あらあら」
「申し訳ありませんが、チェリータウンの集会所の方へ行く道を教えていただけないでしょうか?」
「迷子さんなら、車で送ってあげるわ。でもかなり歩いたんでしょ。
疲れてない? ちょっとおうちに上がって休んでいかない?」
「え、そんな」
「別に取って食ったりはしないから」と女の人が明るく笑うので、ボクはつい上がって休ませてもらってもいいかな、という気になってしまった。
「失礼します」といって靴を脱ぎ、中に入っていく。玄関入ってすぐのところに大きな鏡があり、魔女の衣装の自分が映った。そういえば、こんな格好だった。恥ずかし−。
ボクは真っ赤になるのを感じながら、彼女に案内されて家の奥に入っていった。
「座って休んでて。今暖かいスープ持ってきてあげる」
もう暖炉の入った居間は暖かかった。今年は例年より寒くて、外を歩いていると、けっこう辛かったのである。
女の人が持ってきてくれたスープを飲むと、生き返る感じがした。
「私も女の一人暮らしだから、男の子なら家に上げなかったかもしれないけど、こんな可愛い女の子なら、いつでも歓迎だわ。オリーちゃんだったわね。私はベス」
「え・・・・あの・・・・ボク、男の子なんですけど」
「え!?うそっ!」
「ハロウィンの衣装がこれしか残ってなかったものだから」
「えー、男の子には見えない。てっきり女の子と思ってた」
「ごめんなさい。すぐ帰ります」
「いいのよ、あなたくらい可愛ければ、男の子でもかまわないわ」
「すみません」
「サンドイッチでも召し上がれ。お腹すいてるでしょ」
「あ、はい。いただきます」
「ああ、なんか食べてる仕草も柔らかい雰囲気で、女の子っぽい」
「よく言われます」
「ねえ、君ほんとに男の子なの?実は女の子で私をからかってるんじゃないの?」
「女の子みたいとか、女の子だったらよかったのに、とかは言われますけど、ごめんなさい。女の子じゃないんです」
「うんうん。君、女の子だったらよかったのに」
「えへへ」
「自分でも女の子だったらと思ったりしないの?女の子になれたらとか」
ボクはちょっとうつむいた。
「あら、もしかして図星?」
そうなんだ。ボクはよく「女の子だったらよかったのに」と言われて
まんざらでもない気がして、実は自分が女の子だったらなあ、とよく
思っていた。
それでひとりで留守番している時に、こっそりお母さんのスカートとか身につけてみたりしたこともあった。
「少し女の子になってみる?」とベスさんが悪戯っぽい顔で言う。
「なってみるって?」
「嫌ではなさそうね。こちらの部屋にいらっしゃい」
ベスさんにつれられてボクは衣装部屋のようなところにつれてこられた。
「若い頃の服を捨てずにとってあってよかったわ。
うーん、これなんか似合いそう」
といって、ベスさんは可愛らしいライトグリーンのセーターと、同じく緑のチェックの巻きスカートを出してきた。
「ねぇ、ちょっとその服を脱いで、これ着てみない?」
「えっと・・・」ボクはちょっと照れ笑いをする。
「スカートはいてみたこと、あるんでしょ?」
「あ、はい。」
「じゃ、OK。はいてみよう」
ボクはどきどきしながらも、ベスさんにうまく乗せられた感じで、その服を身につけてみた。
「ほら。鏡見てみて」
(可愛いかも・・・・)
「こんなに可愛くなるとは思わなかったわ」
「ボクもちょっと驚きました」
「君、ぜったい男の子でいるのもったいない。女の子になっちゃいなよ」
「そんなこと言われても・・・」
「最近多いよ、女の子になっちゃう男の子」
ボクはちょっとうつむく。
「あ、そのうち性転換したいと思ってた?」
「ちょっと」
テレビに出てくる、元男だったという美人タレントさんの顔が思い浮かぶ。あんなにきれいになれるんだったら、性転換もいいかな、などと考えてみたりすることはある。でもお金かかりそうだし、お母さんに叱られそうだし。
「じゃ、今日はハロウィンだし、私があなたにトリックかけちゃう」
「え?」
「今度は私が魔女だからね」
ベスさんは、いつの間にか黒いドレスを着て、先のとんがった帽子を付けていた。
「ちょっとそこのベッドに腰掛けて」
「はい」
「セクハラタイムです。パンツ脱がせちゃう」
というと、ベスさんはボクの巻きスカートを開き、パンツを下げてしまった。一瞬でやられたので、ボクはされるがままになっていた。
「うーん。こんなのが付いていると女の子になれないな。取っちゃうよ」
というと、ベスさんは、ぼくのおまたに付いているものをつかんだかと思うとさっと手を離した。
ボクは目を疑った。
「何もない・・・・」
「うん。男の子のもの取っちゃったからね」
おまたはほんとに何もない、平らな形になっていた。
さわってみて、ボクは信じられない思いだった。
「このままでもいいけど、これだとおしっこできなくて困るでしょ。
もう一度やるよ」
ベスさんは、ボクのおまたにもう一度手を当てると、何かをぐいっと
押し込んできた。
「うっ」ボクは思わず声を出した。
「あ、ごめん。痛くしないつもりだったんだけど」
ベスさんが手を離した時、そこには一筋の割れ目ができていた。
「その中におしっこ出てくるところあるから」
「あ、はい」
「女の子のものをつけちゃった」
「えっと」
「赤ちゃん出てくるところもあるよ。ヴァギナというの。知ってる?」
「図鑑では見たことあります」
「実物は見るの初めて?」
「ええ」
「もうそれはあなたのものだから、ゆっくり研究してみるといいわ」
「あの・・・・」
ボクはほんとに戸惑っていた。
何これ?ボク女の子になっちゃったの!?
「あなたいくつ?」
「10歳です」
「じゃ来年くらいになったら生理が来るわ。そしておっぱいも
ふくらんでくるから。生理ってわかる?」
「なんとなく」
「しっかり勉強してね。自分に起きることだから」
「名前、オリーって言ってたけど・・・・」
「オリバーです。O L I V E R」
「うーん。じゃ、あなたの名前は今からオリーブ O L I V E。Rを取っちゃいましょう。あなたの体から取っちゃったのはP ペニスだけどね。
Rという文字の中にPが入ってるから、いいことにしましょ。
オリーブでも愛称はそのままオリーでいいね」
「オリーブ。。。。。可愛いかも」
「可愛いあなたにとっても合う名前だわ」
「I removed your Orchis and Penis from your body, and
I removed R from your name.
Your Sex Transformed.
I gave you Uterus and Vagina.
Now you are already a Woman.
You have ovary instead of orchis, O.
You have pussy instead of penis, P.
You can wear red or rose, R.
You can wear skirt, S.
You can cry with tear, T.
Your urethra is shorten a little, U.
Your voice is heighten a little, V.
Your are a woman, woman, woman,......
Say, O P R S T U V, and W.」
ベスさんは優しくそう私の耳元でささやいた。
私はまどろむようにその言葉を聞いていた。
ふと気がつくと、私は集会所の前に立っていた。
「何してるの?オリー。寒いから中に入ろうよ」
声をかけたのはリサだ。
私はふと自分の格好を確認した。さっきのセーターと巻きスカートを着ている。きゃー。この格好をリサに見られるのは恥ずかしい。
「あなた、マイケルたちとはぐれちゃったんだって?」
「うん」
「ひどいよね。女の子なんだから少し配慮してくれればいいのに。
ごめんね、私たちといっしょに女の子のグループで回ればよかったよね」
「女の子??」
「ちょっと待って」
私はリサに背を向けると、スカートの上からそっと、おまたのところをさわってみた。無い・・・・・
やはり女の子になったまま?
「さ、入ろ入ろ、エリーのママが焼いてくれたクッキーもあるよ」
リサに腕を取られて私は中に入った。
歩く時のあの付近の感覚が違う!
たしかにもうあそこにぶらぶらするものは付いてない。
そして・・・・割れ目が存在している。
「オリーブ・ヤング、ただいま帰還しました」とリサが大きな声で言う。それ私の名前!?
ほんとに私はオリーブになっちゃった?
私は「ごめーん。迷子になって、大人の人に送ってもらった」と
明るく言うと、リサと一緒に女の子たちの輪の中に入った。
なんだか知らないけど会話が弾む。楽しい。
突然女の子になっちゃって、私うまくやっていけるかな。
少し不安もあるけど頑張ろう。
私はそう決意したのだった。
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