【男の子の義務】(1)

目次
 
※本作品はフィクションであり、固有名詞は全て架空のものです。
 
 
9月。僕たちは小学4年生になった。4年生になると、3年生までの教科、国語・算数・理科・社会・体育・音楽・図工に加えて2つの科目が増える。
ひとつは家庭科で、将来良き家庭人になるため、お裁縫や料理などの勉強をする。もうひとつは保健でこれもやはり良き家庭人になるために必要なものと言われたけど、僕たちはよく分からなかった。
 
保健の時間は最初に男子と女子を分けられた。女子は別の授業を受けるらしく視聴覚教室に行った。僕たち男子はサイセイ室という所に連れて行かれた。
ズボンとパンツを脱いで並んで下さいと言われる。何するの?おしっこ?? 
おちんちん丸出しだから、人のおちんちんに触る子とか、大きさ比べしてる子とかもいる。僕の小さいから恥ずかしいな。何か凄く大きなおちんちん持ってる子もいる。あんなに大きかったら邪魔じゃないかしら?? 
看護婦さんがひとりずつおちんちんの大きさを定規で測っている。それからタマタマの大きさも、何かスパゲティの量をはかる板に似た道具で測っている。
僕もサイズを測られてから、奥のベッドに寝てと言われた。看護婦さんが僕のおちんちんを握って上下に動かし始めた。
 
何?これ?すっごく気持ちいいじゃん。
 
「これ自分でやったことある?」
と看護婦さんから訊かれる。
 
「いえ、無いです」
「じゃここから液が出たこともない?」
「おしっこなら毎日してますよ」
「おしっこじゃないものは?」
「何か出るんですか? うんこは別の所から出るし」
「うん。いいのよ。でもこれ自分で握って動かしたりするのは勝手にしないようにね」
「はい、分かりました」
 
結局、4年生になって始まったこの保健の時間で、僕たち男子は毎回おちんちんとタマタマのサイズを測られた上で、看護婦さんにおちんちんを握られて何だか気持ち良くなるということをした上で、余った時間は校庭の草むしりをしたり、体育館の掃除をしたりして過ごした。
 

12月。一学期が終わるので期末テストが行われた。普段あまり勉強してないのでテストは苦手だ。テストは2日掛けて行われる。1日目が国語・算数・音楽・図工、2日目が理科・社会・体育・家庭である。女子だけは更に保健のテストもあるらしかったが、男子には無かった。
 
そして3日後、成績発表が行われるが、これは4年生以上では男女別に一番の点を取った子といちばん悪い点を取った子だけが発表されるらしい。よけいな競争心・闘争心を起こさせないための配慮なんだって。
 
最初に女子の1番が発表された。
 
「1番。亜架音君。君はとても優秀なので、お嫁さんライセンスを発行する。
これを持っていればいつでも結婚ができるんだよ」
 
「わぁ!嬉しい!」
と亜架音は喜んでいた。お嫁さんになるということは結婚して「奥さん」になれるということである。奥さんになると、仕事はしてもいいししなくてもいいので、のんびりとした人生を送ることができる。
 
みんな亜架音に「おめでとう!」と言っている。今日は亜架音の家はお赤飯でも炊くかな。それともフライドチキンかな。いいなあ。
 
「赤ちゃん産んでもいいんでしょ。どうすんの?」
「私、子供3人くらい産みたいなと思ってるの。私一人っ子だったから、姉妹のいる家庭にあこがれていたのよね」
「それもいいよね〜」
 
亜架音は将来設計も描いているようである。頭のいい子だから、いい奥さんになるだろうな。亜架音って絵を描くのも好きみたいだし、家庭の奥さんしながらきっと画家としても活躍するのだろう。
 

「次に男子の1番を発表します。晃(あきら)君」
 
「やった!」
と晃君は喜んでいる。
 
「晃君は、とても優秀なので女性になることを許可します」
 
「おお、凄ーい!」
と級友たちから称賛の声が上がる。
 
「女性になるため、女性資格獲得手術を受けてもらいます。陰核・膣・大陰唇・小陰唇を形成します。陰核があると女の悦びを体験できますし、膣があるとセックスもより楽しめます。また、これらの器官を保護するため、女の子の象徴でもある大陰唇・小陰唇を設置します」
 
晃君はその意味が分かっているようで嬉しそうな顔をしているし、女の子たちも晃君に良かったね、などと言っている。でも僕は何を言っているのか、さっぱり分からなかった! 
「僕、割れ目ちゃん欲しかったんだぁ」
と本人は本当に嬉しそうだ。
 
「なお、それらの器官を設置する際、陰茎・陰嚢・睾丸は女性機能を使用するのにも邪魔なので撤去します」
と先生は言った。
 
「よかったね。女の子になったら可愛いスカートとか穿けるよ」
「女の子になったら、おっぱい大きくなるから、ブラジャーも付けられるんだよ」
「女の子は可愛くメイクアップとかできるんだよ。口紅とかアイカラーとか塗って」
「女の子であれば、そのうち可愛いお嫁さんになれるかも」
「女の子は穴の開いてないパンティ穿くんだよ。お股に変な物付いてないから要らないもんね」
「女の子はトイレは座ってのんびりとできるんだよ」
 
女の子たちから祝福の言葉を浴びて、晃君はほんとに嬉しそうだ。へー。女の子になるって、そんなにいいことなのか、と僕は彼女たちのことばを半分も理解できないまま、嬉しそうな晃君を見ていた。
 

その日は夜から絶食して、翌日が女性資格獲得手術ということだった。
 
「お母さんに何か言われた?」
「うん。お母さんに褒められちゃった。女の子になれるって凄く名誉なことだもん。昨日はお祝いにケーキ買ってきて唐揚げも作ったんだよ。おこづかいももらっちゃった」
「すごいねー」
「良かったねー」
 
「名前はどうすんの?」
「晃子(あきこ)にするんだって」
「へー。子の付く名前って古風だね」
「僕がもし女の子になったら、どういう名前にするか、ずっと考えていてくれたんだってよ」
「そのままアキちゃんでいいから便利ね」
「そうそう」
 
「じゃ手術終わったら、私たちの仲間ね」
「うん。楽しみ〜」
 
そう言って晃君はクラスの女の子たちに手を振って手術室に運ばれていった。
 

その日はビリの子の発表もされた。
 
「まずは女子のビリを発表します。多魔枝君。君は成績が悪かったので、出産奉仕を3回しなければならない」
 
「ちぇっ。大変そうだけど、私、あまり頭良くないし頑張るよ」
「多魔枝、落ち込まないでね」
「うん。また何かいいこともあるよ」
「赤ちゃん産むのって大事なことだもん。頑張ってね」
「うん。母ちゃんに叱られそうだけど、ちょっと覚悟はしてた。大丈夫だよ」
 
女の子たちから慰められて、多魔枝も少し気を取り直していたようである。
 
赤ちゃん産むのって大変らしいもんねー。それを3回はしないといけない。
まあ22歳になってからだけどね。出産奉仕の義務のある女性は、36歳になるまでに3回産まなければならないのだが、多くの人が大学を卒業した後、22歳,24歳,26歳で妊娠して約10ヶ月後に赤ちゃんを出産する。
 
でも妊娠ってどうするのかしら?ちょっと怖い気もするなあ。
 

「次に男子のビリです。純一君」
「えーーー!?」
 
本人は凄く嫌そうだ。
 
「君は、成績が悪かったので、男性としての資格を剥奪する。男性資格廃止手術を施し、男だけに許される器官である陰茎・睾丸・陰嚢を除去廃棄します」
 
「嫌だ!チンコ取られたくないよぉ!」
と言っている。彼はこないだの保健の時間には「俺のチンコいちばんでかい」と言って自慢していた。彼のおちんちんは本当に大きかった。それを切られてしまうのは辛いだろうけど、ビリだったのだから仕方ない。
 
「おちんちんが無くなるのでおしっこは身体から直接出るようになります。
新しい尿道を保護するため小陰唇・大陰唇を形成します。性的ストレスを溜めて犯罪などに走ったりしないようにするため性欲解消のため陰核と膣を設置します」
 
と先生は説明を続けた。
 
「おまえもうズボン穿けないんだぜ。男じゃなくなったらスカートとか穿かないといけないんだぜ」
「胸が大きくなってくるらしいから、おとなになったら胸にはブラジャーなんて付けないといけないんだって」
「素顔で出歩くことが許可されないからいつもお化粧しないといけないし」
「もうお婿さんにもなれないな」
「男じゃなくなると穴の開いたパンツ穿けないんだぜ。穴に通すチンコ無いから」
「男じゃなくなると立ってしっこできないんだぜ。座ってしないといけないんだって」
 
クラスメイトの男子たちから言われて、純一君はほんとうに落ち込んでいた。
 

翌日、純一君は、泣きはらしたような顔で出てきた。
 
「お父さんから何か言われた?」
 
「お袋は泣くしさ、おやじは俺をぶん殴るし。昨日は晩飯も無かったんだぜ」
「わあ、可哀想」
 
「名前はどうすんの?」
「純一の一を取って純になるんだって。身体から棒を取っちゃうから、名前からも棒を取ってしまうらしい」
 
「へー。純か。まあ男の名前じゃねーよな」
 
やがて男性資格廃止手術の時間になる。純一君は看護婦さんたちが来ると逃げようとしたので結局ストレッチャーに縛り付けられてしまった。
 
「いやだー。やめてー。助けてー」
と叫びながら、彼は手術室へ連れて行かれた。
 
ああ。可哀想。僕ビリじゃなくて良かったなあ。
 

1月。2学期が始まる。
 
前学期1番の成績だったので女の子になることができた晃君あらため晃子ちゃんは可愛いブラウスとスカートを穿き、髪にもお花のピン留めをして出てきて、女子からも男子からも「可愛いね!」と言われ、嬉しそうにしていた。彼女は今学期からは体育や保健の授業を女子と一緒に受ける。
 
「女子トイレ慣れた?」
「慣れた。何だか楽しいね。座ってできるの楽だし。列に並んで前後の人とおしゃべりするのも楽しいし」
「でしょ?」
「お風呂入って自分のお股見ると、何だか楽しくなっちゃう。割れ目ちゃんっていいね。開け閉めする練習だいぶしたよ。クリちゃんも触ると気持ちいいし。
男の子のままだったら、あんな気持ちいいこと味わえなかったよ」
 
彼女は他の女子に連れられて、早速学校の女子トイレにも行っていた。その日は体育の授業もあったので、みんなと一緒に女子更衣室に行って着替えていた。
 

一方、ビリの成績だったので男性資格を剥奪されてしまった純一あらため純はお姉さんのお下がりだというチュニックと膝丈スカートを穿いて出てきていた。
 
「男じゃなくなったのに慣れた?」
「悲しいよお。漫画とか読んでてつい無意識に触ろうとすると無いからさ。
あれいじるのが楽しみだったのに。チンコ無くなっちゃって俺これからどうすればいいんだろう」
「自分の股間見てる?」
「お風呂で洗う時は見るけど、洗ってて泣いてしまう。ここにはこないだまでチンコあったのに。あの皮を剥く楽しみもなくなってしまった」
「おしっこできるようになった?」
「すごく変な気分。男子トイレに入ろうとして追い出された」
「まあ、チンコ無くなっちゃったんだから仕方ないね」
「男子トイレとか男子更衣室は使えないから、女子トイレ・女子更衣室を使うんだな」
「女子トイレに入ると、何かすごーく変な感じ。小便器が無いのって、どこか異世界にでも来た感じ」
「へー。女子トイレって小便器無いんだ?」
「俺も初めて知ったよ」
「あ、俺って言っちゃいけないんだぜ」
「そうそう。私って言えっていわれたけど、なかなかうまく言えないよ」
 
純の苦労はしばらく続きそうである。
 

2学期は4月に終了する。また期末テストが行われ、男女別の成績1番とビリが発表された。なお、女子では1度1番かビリになった人は、このランキングには関係なくなるらしい(但し過去に1度ビリだった女子で1番になった場合は対象になる)。
 
女子の1番になった緑はお嫁さん資格を獲得して喜んでいた。ビリになった日戸美は、出産義務を課されたものの「しゃあないなあ」と言い、みんなに慰められていた。
 
男子の1番になったのは秀雄君で、女性資格獲得手術を受けて女の子になれるというので凄く嬉しそうにしていた。お母さんからも喜んでもらえて、名前も秀美に改めるらしい。クラスメイトみんなに祝福されて手術室に運ばれていった。
 
一方ビリになったのは国三君であった。彼は試験の時に風邪を引いていたということで、今回のビリはもう覚悟していたらしい。
 
「男性資格廃止手術されて、男じゃ無くなるのは悲しいけど、それも人生だって母ちゃんから慰められたよ」
「名前はどうすんの?」
「ロミ」
「へー!」
 
「いや国という字から玉を取ったらロになるだろ?」
「ほほぉ」
「玉を取る手術を受けるんだから、そういうのもいいんじゃないかって」
「面白い名前の付け方するね」
 
「男の子じゃなくなっても自分の子供だからって母ちゃんに言われてちょっと泣いた」
「いろいろ辛いかも知れないけど頑張ってね」
「うん。まあ女みたいな身体になるだけだし、頑張るよ」
 
そういって彼は悟りきったような顔をして、みんなに慰められながら手術室に運ばれていった。
 

4年生の3学期は5月から8月までである。僕たちは毎度、保健の時間には男女に別れて授業を受けていた。おちんちんとタマタマのサイズを測られる時はちょっと緊張するけど、そのあと看護婦さんから気持ち良いことをしてもらうのは大きな楽しみでもあった。
 
6月に授業を受けていた時のことである。僕は看護婦さんにおちんちんを握られ上下されていた時、今までにない感覚を覚えた。
 
「あっ」
と看護婦さんが言って、何やらビニールのカバーのようなものを僕のおちんちんの先に取り付けた。何かがこみあげてくるような感覚とともに、おちんちんの先から液体が飛び出し、そのビニールの中に収納された。
 
「あれ?おしっこ出ちゃったのかな?」
と僕は焦って言った。でも看護婦さんは微笑んで 
「違うよ。これは赤ちゃんの元なんだよ」
「えー? だって赤ちゃんって女の人が産むんじゃないの?」
「産むのは女の人だけど、その元は男の子が生産するんだな」
「へー!知らなかった」
「君、これが出るようになったから、次からは毎回このカバーを取り付けてこの液を採取します」
「はい、お願いします」
 
看護婦さんはハンディ端末から出てきたシールをビニールの袋に貼り付けた。
 
「それどうするんですか?」
「検査して品質合格したら、妊娠したい女性に提供します」
 
「あ、それで赤ちゃんが生まれるんだ!」
「うん。そうなんだよ」
「知らなかった!」
 

僕の担当看護婦さんは次回の授業の時に検査結果を教えてくれた。検査した所こないだ取った液には、赤ちゃんの元は入っていなかったらしい。でもその内入るようになるよと言われた。
 
3学期。期末テストが行われて、女子の1番・マリアがお嫁さん資格を獲得。
ビリの莉魅が出産義務を課せられた。
 
男子の1番になったのは良太(りょうた)だった。彼も女性資格獲得手術を受けて女の子になれることを喜び、新しい名前として良美(よしみ)というのを付けてもらった。同じ字でも音読み・訓読みが変わると随分印象が変わるね、などとみんなから言われていた。両親は彼女の結婚式の積み立てをすると言っていた。
 
男子でビリになったのは広夢だった。彼は男性資格廃止手術を施されて男ではなくなることにショックを受けたようで、精神的に錯乱していたので両親がすぐに呼ばれ、その日の内に手術を受けた。ふつうは「男の子である最後の夜」を過ごして翌日男ではなくなる手術を受けるのだが、たまにこういうケースもあるという。
 
お父さんは広夢が男の子でなくなったことにがっかりし、夢が無くなったと言って、広夢から夢をとってヒロという名前を彼に付けた。でもこういう命名はちょっと可哀想だよね、と僕たちは言った。
 
良太の方はふつうに翌日、みんなに祝福されて、笑顔で手術室に行った。
 
「私、せっかく女の子になれるし、アイドル歌手を目指そうかな」
などと彼女は言って、「良美ちゃん、歌うまいから行けるよ」
「顔ももともと可愛いしね」
「そうそう。男の子のままにしておくのもったいないと思ってた」
 
などとみんなから言われていた。
 
一方のヒロの方は男性器を取られてしまってしくしくと泣いているということだったのでみんなでお見舞いに行き、元気づけてあげた。
 
「母ちゃんから新しいパンツ買ってきたからと言われて見たら、全部前の開きが無くて」
「仕方ないよ。そこから出すものが無くなっちゃったんだから」
「ちんちん無しで生きて行く自信が無いよ」
「女と同じと思えばいいじゃん」
「そうかなあ」
 
付いているお母さんも「あんた、おちんちん無くなって割れ目ちゃんできたんだから、今後はあんたのことは娘と思うことにするから」
と言う。
 
「そうか。娘のつもりになってみるかなあ」
「そうだよ。あんたちんちん無いから、お嫁さんにしてくれる人あるかも知れないしね」
「うん。少し考えてみる」
 
「あれ、おちんちんあったらお嫁さんになれないの?」
「お嫁さんにしてくれる人もあるにはあるらしいよ」
「へー」
「おちんちんが無い人がお嫁さんにしてくれるのでは?」
「あ、そういうのもあるかもね」
「うん。おちんちんの無いお婿さんと、おちんちんのあるお嫁さんってケースもあるらしいよ」
 
悩んだら気軽に相談してね、と彼には言って僕たちは病室から去った。
 

そしてこの日。僕は保健の時間に出した液に、はじめて赤ちゃんの元が入っていたよと言われた。
 
「自分でもしたくなることない?」
「実はあります。でもしちゃだめと言われたから我慢してます」
 
「もしどうしてもしたくなった時はこの袋何枚かあげておくから、これに出して翌日サイセイ室に持って来て」
「分かりました!」
 

9月から僕たちは5年生になった。
 
ヒロちゃんは沈んだ顔はしていたが、お母さんに買ってもらったという可愛い女の子用の服を着て学校に出てきて黙々と勉強していた。
 
そういえば男性資格を剥奪された人って、その後はたいていよく勉強するようになるらしい。ただ体育は苦手になることが多いんだって。
 
僕はヒロちゃんなどを見ていて、やはりビリになるとまずいなと思い、5年生になったら少し自分で勉強するようになった。3年生や4年生で習ったことでよく考えてみると理解していないこととかもあったので先生に教えてもらって、しっかりと理解できるようにしていった。
 
一方、おちんちんを気持ち良くするのは、何度かどうしても我慢できなくなり自分でしてしまったことがあった。でも言われた通り、ちゃんと渡された袋の中に出して、翌日サイセイ室に持って行った。
 
そういうことが5年生の1学期に数回あった。毎週看護婦さんにしてもらっているものも含めると、この学期に僕は15回の《サイセイ》をしたことになる。
 
「どうしても我慢できずにしてしまったので持って来ました」
と言うと「いいのよ。でも週に3回くらいまでで我慢してね」
「はい。頑張ります」
「この赤ちゃんの元を子供を産みたい女の人にあげて赤ちゃんが生まれるの。
だから、これを出すのは実は男の子の義務なんだ」
「へー。そうだったのか」
「君は立派に義務を果たしているよ」
「そうですか。良かった」
 
僕はおちんちんで気持ちいいことするのが後ろめたい気もしていたので看護婦さんから言われて、ちょっと誇らしげに思えた。
 

そして5年生の1学期の期末テスト。
 
「男子の一番は理史(さとし)」
 
と僕の名前が呼ばれた。
 
「うっそー! ビリにならないように頑張っていたら1番になっちゃうなんて」
 
「じゃ女の子になれるんですか?」
と僕は訊いた。
「そうそう。陰核と膣を設置して、それを守るのに大陰唇・小陰唇、いわゆる割れ目ちゃんを作るから」
「嬉しい!!」
 
「それ作るのに邪魔なんで、陰茎・睾丸・陰嚢は除去するけどな」
 
「スカート穿けるんでしょ?」
「そうそう。可愛いの買ってもらうといいよ」
 
「わーい!」
 
僕はまさか自分が一番になれるとは思いも寄らなかったので、凄く嬉しかった。
 

その日、家に帰ると先生からもらった紙をお母さんに見せる。
 
「何何? 理史君は今学期の成績が一番でしたので、女の子になることを認めます。え?あんた女の子になれるの?」
 
「うん」
「良かったねー!」
とお母さんは凄く喜んでくれた。
 
中学1年の姉も「弟って面倒だなと思ってたけど、あんたが妹になるんだったら歓迎」
などと言ってくれる。
 
小学3年生の妹は「お兄ちゃん、女の子になるの?」
と言う。
 
「うん。だから明日からはお兄ちゃんじゃなくて、お姉ちゃんだからね」
 
「へー!すごい。3人とも女の子だったら、一緒に温泉に入れるね」
 
「そうだね。今まで僕だけ別になってたけど、これで姉ちゃんともお前とも一緒に入れるね」
「嬉しい!」
 

まだ会社にいるお父さんに連絡してケーキを買ってきてもらい、お母さんは冷凍ストックしている鶏肉でフライドチキンを作ってくれた。
 
それでお父さんが買ってきてくれたケーキをみんなで食べて、僕が女の子になることを祝ってくれた。
 
「理史も女の子になるのなら、今度は温泉にみんなで一緒に行けるね」
とお父さんは楽しそうに言う。
 
「僕だけひとり別だったからね」
 
「でも名前何にしようか?」
 
「それだけど私も会社から帰りながら考えていたんだけどね。こういう時は今の名前の1文字は残した方がいいらしいんだ。それで理史(さとし)の理の字は残して理花(りか)というのはどうかな?」
 
とお父さんが言う。
 
「あ、可愛い!」
と姉が言い、 
「読み方が変わっちゃうのね。それもいいかもね」
とお母さんも賛成してくれて、僕の明日からの名前は理花ということになった。
 

その夜は「このおちんちんは今夜が最後だから」
と言われて、裸にされておちんちんの写真を撮られた。
 
「明日からはみんなと同じ女の子だね」
「お兄ちゃん、良かったね。あ、お姉ちゃんだった」
「うん。今日まではお兄ちゃんでもいいよ。明日からはお姉ちゃんって呼んでね」
「うん」
 
「でも僕、女の子のこと、全然分からないや。おしっことかどうすればいいのかな」
「女の子になってみたらすぐ分かるよ」
 
「だよね」
「案ずるより産むが易しってね。大変なことは前もって考えていると不安になることもあるけど、なってみればたいしたことないんだよ」
「そうだろうね」
 
と言ってから僕は不安そうに言う。
 
「女性資格獲得手術って痛いのかな」
「麻酔掛けてくれるから痛くないよ」
「あ、そうか!」
「でも傷が治るまでは多少痛いよ。それは我慢しなきゃ。女の子になれるんだから」
「うん。頑張る」
 

夜9時以降は絶食なので、お腹もすくし早めに寝ることにした。朝起きたらお母さんが「手術が終わった後で着る服」といって可愛い女の子服を渡してくれた。楽しみ! 
男の子として最後の登校をして、クラスメイトからも「良かったね」とか「羨ましい」とか言われる。それで10時僕はみんなに見送られて手術室に行った。
 
「では女の子になる手術をします。いいですね?」
とお医者さんから言われ 
「はい。お願いします」
 
と受け答えした後は、麻酔で眠ってしまって何も覚えていない。目が覚めた時僕は病室に寝かされていた。おそるおそるお股の付近に触ってみるが、まだ麻酔が効いているようで感覚が無かった。目が覚めたらナースコールしてくださいと書かれた紙が貼ってあったのでボタンを押す。
 
お医者さんが来て「傷口のチェックをしますね」
と言い、その付近の包帯を外す。それで僕は初めて自分の新しいお股を見た。
 
「わあ、きれい!」
と僕は声をあげた。
 
「うん。女の子のお股ってきれいだよね。見たことなかった?」
「初めて見ます」
 
「これが大陰唇、その内側のここが小陰唇。ここに陰核、別名クリトリスがあるから。傷が治ったらいじってみてごらん。男の子だった頃におちんちんをいじっていたのより、ずっと気持ちいいから」
「へー!それは楽しみです」
 
医師は僕のお股に触りながら説明する。
 
「ここからおしっこが出てくるのよね。それからここが膣、別名ヴァギナ」
「何するところですか?」
「赤ちゃん産む時にここから出てくるの」
「そんな小さな所から出てくるんですか!?」
「いざという時は広がるから」
「すごい」
 

痛みは思ったほど無かった。夕方、お母さんとお父さんが姉と妹を連れてお見舞いに来てくれた。
 
「もうお姉ちゃんになったの?」
と妹が訊くので「そうだよ。私はもう女の子だから」
と答えた。
 
「へー。おめでとう」
「ありがとう」
 
「そして私たちの息子から娘になったのね」
とお父さんが言う。
 
「うん。娘になりたてだけど、よろしくお願いします」
「こちらもよろしくお願いします、お嬢さん」
 
「お嬢さんって、私のこと?」
「そうだよ。女の子なんだから」
「なんだか、くすぐったいような気分」
「すぐ慣れるよ」
 

3日目に包帯が取れたので、お母さんが買ってくれていた女の子用のパンティを穿いてみる。何だか不思議な感じだ。今まで、おちんちんのあるお股に男の子用のボクサーを穿いたら、お股の所におちんちんとタマタマの形の盛り上がりができていた。でも、女の子のお股はスッキリしている。前開きの無いパンティがピタリと股間に吸い付く。そこには何の突起も無い。
 
「ちょっと、スッキリしすぎたかな。でもこれいいな」
と私は独り言を言った。
 
スカートも穿いてみた。歩いてみようとしたらいきなり転ぶ。
 
なんで〜? 
と思ったが、要するに膝がスカートにぶつかってしまうのである。少し考えて、膝から上を動かさずに、膝下だけ足を動かして歩いてみたら、うまく歩けた。
男の子と女の子では歩き方から違うんだなあ、と私は思わぬ発見をした気分になった。
 
これまでは導尿していたのだが、もうふつうにトイレでできますよと言われたのでトイレに行ってみる。
 
最初トイレの男女表示のところで、うっかり男子の方に行きかけて、違った、違った。私、女の子になったんだったと思い出し、おそるおそる女子トイレに入る。話には聞いていたが、小便器が無くて、個室のドアだけが並んでいる。
なんか不思議〜。
 
私はその個室のひとつに入り、取り敢えず便座に腰掛けてみた。女の子は座っておしっこするんだよと言ってたなと思う。でも・・・・おしっこ、どうやれば出るのかな? 
結構悩んだのだが、5分くらい奮闘した末にちゃんと出た。結果的には男の子だった時と大差無い感覚だよなと思う。しかしおしっこした後が大変である。
おしっこがあちこちに付着しているので、それをトイレットペーパーで拭く。
この作業がなかなか大変だった。男の子なら、おちんちんを振れば済むし、そもそもこんなに、おしっこ付かないもんね。
 
お風呂にも入っていいですよと言われたので入浴時間に行ってみる。これも最初男湯の方に入りかけて、違った違ったと思い女湯の方に入る。中に入ったら、算数の先生が入浴していた。
 
「あら、理史(さとし)君、女の子になったの?」
「はい。おかげさまで。女の子としての初入浴です」
「おめでとう。名前何になったんだっけ?」
「理の字はそのままで花の字を付けて理花(りか)です」
「おお、可愛い、可愛い」
 
浴槽に入る前にあの付近を洗うが、おちんちんやタマ袋を洗うのより楽だなと思った。ところが先生から注意される。
 
「割れ目ちゃんの中も洗った?」
「洗いました。膣の中まで洗わないといけませんか?」
「そこは大事な場所だから安易に指とか入れちゃだめよ」
「あ、はい」
 
「でも大陰唇と小陰唇の間、ひだの中をきれいに洗ってね。そこ汚れがたまりやすいから」
「わあ、そうなんですか。よく洗います」
「女の子のことで分からないことあったら、どの先生でもいいし遠慮無く聞いてね」
「はい。たくさん聞くかも」
 
先生は私のお股を見て 
「きれいに女の子になったね。良かったね」
と言ってくれた。私は嬉しかった。
 

2週間後に退院した。お母さんが洋服屋さんに連れて行ってくれて、私の新しい下着や女物の服をたくさん買ってくれた。靴も女の子らしい、可愛いのを買ってくれる。そういう服や靴を身につけると、あらためて自分は女の子になったんだ!というのを強く認識した。
 
すぐに2学期が始まる。私は真新しい女の子向けのキャラ物のセーターに女の子仕様のコートを着て学校に出て行った。
 
「理花ちゃん、すっかり可愛い女の子になってる」
と女子のクラスメイトたちから言われる。
 
「えへへ」
 
女の子になったのでおしゃべりも女の子たちとするのだが、みんな優しいし話題は楽しいし、やはり女の子になって良かったなと私は思った。
 
休み時間にはみんなに誘われて一緒にトイレに行く。冬休み中に女子トイレに入ること自体には充分慣れておいたものの、こんなに大量にみんなで行くのは初体験である。
 
「男の子だった頃から思ってたけど、なんで女の子ってみんなで一緒にトイレに行くの?」
「だってひとりで行くの恥ずかしいじゃん」
「そうだっけ?」
 
私はこういう女の子の感覚みたいなものを覚えていかないといけないなと思った。
 
しかしトイレの列に並んでいると、みんな噂話である。先生の噂話や、男の子の噂話はまだいいか゜、今ここに居ない女の子の噂話まで出てくる。きゃーっ。
女の子が優しいなんて幻想だったかもと私は改めて思った。
 
要するに女の子って表面を取り繕うのが上手いんだ! 

「泰絵ちゃん、しくしく泣いてたね」
「あとでみんなで慰めておげようよ」
 
泰絵(やすえ)というのは、1学期までは泰河(たいが)君と言ってたのだが、1学期の成績がビリだったので、男性資格を剥奪され、男性器も撤去されてしまったのである。今日は一応スカートを穿いて出てきているが、おちんちんを失ったのが悲しくて、まだ泣いているようだ。
 
「おちんちんなんて無くなっても慣れたら平気だし、女の子と似たようなものと思えばいいのにね」
などと昨年2学期にビリになったため、男性器を撤去されたロミちゃんが言う。
彼女はすっかり女の子みたいな顔をして暮らしているので、他の女子たちも、女の子に準じて扱ってくれている。
 
「でも、そう割り切れる子って少ないみたいだよ」
「ヒロちゃんもまだよく泣いてるね」
「おちんちんって、そんなに大事なものなのかしら?」
「私は付いてたことないから分からないなあ」
「理花はどう思う?」
「うーん。私は女の子になれたことが嬉しかったから、おちんちんなんて別に気にしなかったけどな。そういえば無くなっちゃったかなという感じ。だって女の子にはおちんちん無いし」
 
「だよねー。たぶんおちんちんなんて、そんな大したもんじゃないよね」
と元々からの女子は言うが 
「でも、私もおちんちん無くなったお股最初見た時はショックだった。もう慣れたけどね」
とロミちゃんは言う。
 

体育の時間には他の女子と一緒に女子更衣室に行く。
 
「わあ、みんなおっぱい膨らんでるね」
と私が言うと 
「個人差があるよ。加奈子みたいにまだ全く無い子もいる」
などと言われる。
 
「なぜ私を引き合いに出す?」
と当の加奈子。
 
「理花もすぐにおっぱい膨らんでくるよ」
「そうかな。期待しておこう」
 
男子たちは野球をしていたが、この日女子はダンスをした。今まで遠くから眺めているだけだったので、あれ楽しいのかな?と思っていたのだが、やってみると結構楽しくて、女子の体育って結構好きになった。
 

女の子になったので、保健の時間はサイセイ室で看護婦さんにおちんちんをいじられる授業ではなくなる。あれもちょっと気持ち良かったけどな、と思いつつ、他の女の子と一緒に視聴覚室に行った。
 
「この授業初めて受ける人?」
と先生から訊かれるので手をあげる。
 
この授業は4クラス合同なので、私を含めて8人の子が手を挙げた。今学期から女の子になった子と、男の子ではなくなった子である。
 
「じゃ、その子たちはよく見えるように前に出てきなさい」
と言われたので、最前列の席に移動した。
 
最初に先生は女の子の身体の仕組みを図を表示して説明してくれる。それで女の子の「性器」には「内性器」と「外性器」があることが分かる。
 
「外性器には、女の子のお股を見たらすぐ見える大陰唇、その内側にある小陰唇、割れ目ちゃんの中にある陰核、別名クリトリス、があります。内性器は割れ目ちゃんの内側のいちばん奥にある膣、別名ヴァギナにはじまって、その奥にある子宮、その奥にある卵管、その奥にある卵巣があります」
 
女の子の性器って、何だかRPGのダンジョンみたいと私は思った。
 
「だいたい11-12歳頃になると女の子の卵巣が活動を始め、1ヶ月に1個のペースで卵子が成熟して、外に出てきます。これに男の子が出した精子という《赤ちゃんの元》が結合すると、赤ちゃんができて、子宮で38週間育ってから外に出てきます。
これが出産です」
 
と先生は説明する。
 
「しかし精子とくっつかなかった卵子は約2週間後にそのまま排出されます。
これが生理、別名月経で、女の子はこれを11歳頃から50歳頃まで毎月体験することになります。大変ですけど、女であることの証しでもありますから、頑張りましょう」
 
そのあたりの話は女子たちのおしゃべりを聞いていて何となく知っていたのだが、きちんと教えられると、そうだったのか!と納得する。ちょっとこれは大変そうだなという気はした。
 

授業では前半に、そういう身体の仕組みや月経の話をして、後半は恋愛や結婚のことを話した。これはけっこう興味ある問題だったので熱心に聞く。
 
「基本的には結婚したカップルだけがセックスをすることが許されるのですが、実際には恋愛をしているカップルはお互いの合意のもとにセックスをすることが多いです。またセックスでお互い気持ちよくなれることが、恋愛の維持につながりますし、お互い結婚しようという気持ちが育って行きます」
 
と先生は説明する。
 
「実際のセックスは、お互いの性器の形により、いくつかの方法があります。
男性と女性のセックス、男性と男性のセックスはまたやり方があるのですが、最も基本となる女性と女性のセックスの仕方を今日は説明します」
 
と言って先生は実際に2人の女性がセックスしているビデオを上映する。何だか視聴覚教室の中の空気が変わる感じだ。みんな息を呑んで見ている。
 
「このように、お互いの気持ちいい場所を重ね合い、相互に刺激しあうことで高い満足感が得られます。最も感じやすい場所は、陰核、つまりクリトリスともうひとつは膣、ヴァギナの入口付近にあるGスポットと呼ばれる場所です。
これをお互いに刺激しやすい身体の使い方ができたら、とても気持ち良くなることができます」
 
と先生は説明するが、Gスポットって、そんな気持ちよくなれる場所があるのかと私は少し驚いた。
 

質問が出る。
 
「女の人同士は分かるんですが、男の人と女の人でセックスする場合、おちんちんやタマタマが邪魔になりますよね?」
 
「はい。それで男の人でも、邪魔なおちんちんやタマタマを体内に押し込んで固定して、女の子みたいなお股にする道具が売っていますので、そういうのを使ったりもしているようですよ」
 
「それ、手術じゃないんですか?」
「切っちゃうわけではなく、単に体内に押し込んでしまうだけですね」
 
みんな「へー」という顔をしている。
 
「ただ、男の人と女の人でのセックスでは、そのおちんちんを積極的に活用するセックスの仕方もあるのですが、これは6年生で勉強します」
 
と先生が言うと 
「私知ってる」
と亜架音が少しニヤニヤした顔で言う。
 
「えー? どうやるの?」
「ちょっとここでは言えないよぉ」
「じゃ後で教えて」
 
「学校で言ってたら叱られそうだから、あとでおうちに来てくれた子にだけ教えるよ」
 
わあ、私も行って教えてもらいたいと思ったが、私は恥ずかしくて言い出せなかった。
 

2学期の終わり。
 
昨年の1学期に男子で1番になって最初に女の子になった晃子が今度は女子で1番の成績を取り、お嫁さん資格を獲得した。
 
「やったね」
「晃子ちゃん、可愛いし、頭いいし、絶対いけると思ってたよ」
とみんなから祝福されていた。
 
「お嫁さんになる時はウェディングドレスにしようかなぁ、それとも高島田にしようかなぁ」
などと本人は衣装に悩んでいた。
 
男子の1番は康文君だった。女性資格獲得手術を受けて女の子になるので、新しい名前は康代になるということだった。みんなに祝福されて手術室に運ばれていった。
 
一方のビリは敏男君だった。男性資格廃止手術を受けることになるが、泣いていたのをお母さんに慰められたということで、手術室に運ばれていく時は涙をこらえていた。男じゃなくなるからというので「敏男」から「敏」になるらしい。
 
この頃になって僕はやっと乳首が少し立つようになってきた。おっぱいの膨らみはじめだよ、と体育の着替えの時間に他の女子から言われ、ちょっと嬉しい気分だった。
 

2学期は1月から4月までだが、4月29日から5月12日までの2週間は学校も会社も一斉に休みになり、黄金週間と呼ばれている。どこの家でも動物園や遊園地などに行ったり、旅行に行ったりするのんびりした2週間である。この黄金週間の初日は昭和の日といって、ずっと昔に居た偉大な天皇の名前を冠している。この黄金週間もその天皇の時代に始まったものらしい。
 
「あのあたりの古代史はよく分からないなあ」
「その頃、太陽電池や自動計算機も発明されたし、性別を変更する手術も開発されたらしいよ」
「それ以前って性別変更できなかったの?」
「そうそう。だから男の子が女の子になりたいと思っても男の身体のまま一生をすごすしか無かったんだよ」
「可哀想!」
 
「色々革新的な時代だったみたいだよね」
「太陽電池が出来る200年くらい前に蒸気機関が発明されているけど、当時は石炭とか石油とかを燃やしていたらしいね」
「そんな限られている資源を燃やしたら、その内無くなった時にどうにもならないじゃん」
「なーんにも考えてなかったんじゃない?」
 

今年の黄金週間、私たちの家族は温泉に行くことにした。お父さんとお母さんが交代で車を運転して、300kmほど離れた所にある温泉に出かけた。
 
前回までは温泉に入るというと、私だけ男湯で、他のみんなは女湯だったのだが、今年からは全員女湯に入ることができる。旅館に着いて荷物を置いたあと、全員でお風呂に行く。男と染められた青い暖簾(のれん)・女と染められた赤い暖簾が並んでいる。ちょっと気恥ずかしい気がしたが、姉に手を握ってもらって一緒に赤い暖簾をくぐった。
 
「小さい頃は、理花も女湯に入っていたんだけどね」
「まあ4歳以下は混浴してもいいことになっているから」
「全然覚えてないよ、それ」
 
お母さんが薄手のセーター、ポロシャツを脱ぎ、膝丈のプリーツスカートを脱ぐ。お母さんはDカップのブラジャーをしている。それを脱ぐと少しぽっちゃりしたお母さんのヌードがあらわになる。お母さんの裸を見たのって、幼稚園の頃以来だよなあ、と私は思っていた。
 
お父さんは少し寒がりだ。フリースを着ているが、それを脱ぎ、ブラウスを脱ぎ、ロングのペンシルスカートを脱ぐと細身のボディがあらわになる。お父さんはお仕事をしているが、会社勤めの人にはブラウスにペンシルスカートという人が多い。でも、お父さんのバストはお母さんより凄く大きい。たぶんFかGじゃないかという感じ。いつもお母さんが「お父さん、おっぱい大きくて羨ましい」なんて言ってる。お父さんもブラとショーツを脱いで裸になってしまう。
 
私もトレーナーを脱ぎ、膝下のフレアスカートを脱ぎ、それからキャミソールを脱ぐ。私はまだおっぱいが無いのでブラジャーはしていない。でもお母さんは私の乳首を見て 
「少し大きくなってきたね。下着ですれて痛くない?」
などと言う。
「今のところまだ大丈夫だけど」
 
「カップ付きキャミソールとか付けたら?」
と姉が言う。
「あんたも一時期使ってたね」
と母。
「そうそう2年くらいあれやってたよ。最初からブラジャーというのは胸を締め付けられる感覚だけが先行して快適じゃないと思う」
と姉。
 
「じゃ、温泉から帰ったら、ランジェリーショップに見に行こうか」
「うん」
と私は嬉しくなって答えた。
 
ランジェリーショップは男子禁制なので一度も入ったことがない。何だか可愛い下着が売っているなあと遠くから見ていただけだった。
 
私がショーツを脱ぐと「おちんちん無くなってすっきりしたね」と姉から言われる。
 
「うん。女の子のお股って、シンプルでいいよね」
「ただし体内に隠れている部分が複雑なんだけどね」
「うんうん。こないだ保健の時間に習ったよ。女の子の身体って神秘的だね」
 
「元々人間の身体って女の子の身体が基本形なんだよ。お母さんのお腹の中にいる間に、男の子の場合は男性ホルモンの作用で身体が変化して男の身体になるんだ」
 
「へー」
「だから男の子を女の子にする手術というのは、変化してしまった部分を元に戻す手術なんだよね」
 
「つまり私、本来の形に戻れたのか」
「そうそう」
 

のんびりと脱いでいた妹が服を脱ぎ終わるのを待って5人で一緒に浴室に移動する。
 
「わあ、広ーい」
と私は感動するように声を挙げた。
 
「ああ、男湯って狭かったでしょ?」
とお父さんが言う。
 
「うん。ここの旅館、以前にも泊まったけど、男湯は5−6人も入ればもう満杯という感じだったよ。ここ40-50人は入れそう」
 
「まあ男の人って、烏の行水(からすのぎょうずい)みたいな人が多いから、広くする意味が無いんだよ。女はのんびりと入るから、その分広く作るんだよね。浴槽も男湯はあまり無かったでしょ?」
とお母さんも言う。
 
「ひとつしか無かった。ここはいろんな浴槽があるんだね?」
「そうそう。その大きなのが美人の湯、その向こうが楊貴妃の湯、あっちにはクレオパトラの湯とか、ユミカオルの湯ってのもあるよ」
 
「ユミカオルって何だっけ?」
「古代、昭和の時代に、お風呂にすごく気持ちよさそうに入るというので有名になった女優さんだよ」
「へー!」
「50歳近くになっても凄く若い身体を維持していたらしいよ」
「それは凄い」
 

まずは身体を洗うが、洗い場で隣の席に座った姉から 
「ちゃんとひだの中まで洗ってる?」
と訊かれ「うん。ちゃんとしてるよ」
と私は笑顔で答えた。
 
それで身体を洗った後で浴槽に入ろうとあるいていたら 
「ちょっとあんた」
と呼び止めるおばさんがいる。
 
「あんた、男の子じゃないの? 小学生は混浴はダメだよ」
 
「あ、済みません。この子、こないだ女の子になったばかりなんですよ」
と近くに居た姉が弁明してくれた。
 
「え?そうなの? あら、そういえばおちんちん付いてないね」
「12月に女性資格獲得手術を受けたばかりなんですよ」
と私は言う。
「あ、そうだったんだ。体つきがまるで男だからさ」
「少しずつ女の子らしい体型になっていくと思いますよ」
と姉は笑顔で答えた。
 

お風呂からあがった後はみんなで御飯を食べに行くが、女性専用《美人御膳》なるものをみんなで注文した。
 
「この料理は女性ホルモン類似物質のイソフラボンを大量に含むから女の人しか食べられないんだって」
とお母さん。お母さんはお風呂の後なので可愛い金魚柄の浴衣を着ている。
 
「へー。でもすごく美味しいのに」
と私は柔らかいお肉を食べながら言う。
 
「世の中、けっこう男性は食べてはいけないものってあるよね」
とお父さん。お父さんは古典柄が好きらしく、手鞠やお花などの模様の浴衣を着ている。
 
「実は女性は食べられないものもあるんだけど、概して特殊な味のものが多い」
と姉が言う。
 
「特殊な味って、まずいって意味?」
「まあ深くは追求するな」
 

黄金週間が終わって3学期が始まる。
 
前学期で女性資格獲得手術を受けた康代は、ちょっとお嬢様っぽい服を着て学校に出てきていた。
 
「何だか清楚なお嬢様って感じ」
「こういうの着てみたかったんだよね〜。でも男じゃ着られないから」
「女の子になれて良かったね」
 
一方男性資格廃止手術を受けた敏は沈んだ表情ではあるものの、結構可愛い感じの女の子の服を着て出てきていた。
 
「可愛いじゃん」
「どうせ男じゃなくなっちゃったから、開き直って女の子のまねをしてみることにした」
と敏は言っていた。
「うんうん、いいと思うよ。その路線で行きなよ」
と言われて、敏は少し苦笑いするかのような表情をしていた。
 

6月の始め頃、算数の授業を受けていた時、私は下腹部に何か不思議が感覚が走るのを覚えた。
 
隣の席の秀美が、私の肩を叩くと「これ持ってトイレに行っておいで」
と言った。
 
渡されたのは・・・・ナプキンだ! もしかしてこれって。
 
私は先生に断り女子トイレに飛び込んだ。個室に入り座ってみると、あのあたりから血が出ていて、ショーツにも少し付いている。
 
とうとう来たのか。
 
私はそう思うと、取り敢えず血をトイレットペーパーに吸わせる。そしてショーツに秀美からもらったナプキンを取り付けた。ナプキンの使い方は保健の授業で習っているし、実習もしていたので問題無い。でもとうとうこれを使うことになったのかと思うと感慨深い。
 
でもこれをこのあと50歳くらいまで毎月しないといけないって、女の子ってけっこう大変なのかもと思った。
 

昼休み、あらためて秀美に「ありがとね」とお礼を言った。
 
「そちらのおうちは家族共通のナプキン使ってるの?」
「みーんなバラバラ。お母さんはソフィア社のだし、お父さんはセンター社のだし、お姉ちゃんはエリー社なんだよね」
「じゃ、理花も自分の好きなのを買って用意しておくといいよ」
「でもどこのが自分に合うってどうすれば分かるんだろ?」
「お店に行けばサンプルセットくれるよ。それをひととおり使ってみるといいよ」
「そうする!」
 

「だけど敏ちゃん、すっかり女の子気分でいるみたい」
と私は言った。
 
「ああいう生き方もいいと思うよ。実際、女で通ると思うし、あの子」
と秀美。
 
「でもこれでトップ5人と下の5人とが抜けて、男子も最初30人いたのが20人に減っちゃったね」
と私は言う。
 
「4年生から6年生までの3年間に1学期に1人女の子になり、1人男ではなくなるから、合計18人の男子が消えるからね」
「男女比もずいぶん変わるよね。4年生の最初は女子10人と男子30人だったのが、男性資格失った子も女子に準じるとして一緒に数えると、6年生の終わりには女子28人と男子12人になる」
 
「元々小学校高学年の男の子を女の子に変えようというのは自然に産まれてくる子供の男女比がいびつだから、それを調整するのが最初の目的で始まったらしいよ」
「ああ、そうだったんだ?」
「生物学的には、オスの数よりメスの数が多い方が、群れは安定するんだって」
「それは何となく納得するな。逆だと悲惨だよ」
「ほんと昔は悲惨だったらしいよ。少ない女を巡って、男同士で血を見る争いをしていたって。レイプ事件も多かったらしい」
「こわいなあ」
 
「元々人数の少ない学校とかでは全員女の子になるか男子でなくなるかで、小学校卒業時には男子0という学校もあるらしいよ」
「それもいい気がするけどなあ。だって男のままおとなになるって可哀想」
「思う、思う。スカートも穿けないしさ」
 
「成績上位の男の子を女の子に変えるのは、頭のいい男は戦争を始めがちというのが科学的に証明されたかららしい」
「へー」
「逆に成績下位の男の子から男性器を撤去するのは、頭の悪い男は犯罪をおかしがちという統計結果があったかららしい」
「ふーん」
 
そこにロミちゃんがやってきて言った。
「今、国会で小規模クラス制度ってのが審議されているよ。小学校の学級は30人以内で、そのうち男子は18人以内にしようという話」
「それって・・・」
「うん。4年生から6年生の各学期の成績でトップは女子生徒になることを許可され、ビリは男子生徒ではない状態にされるわけだから、小学校を卒業する時には男子はゼロになる」
 
「要するに男の大人はほとんどゼロになっちゃうのか」
「元々手術対象外の朱徳院小学校出身の子と、あと外国人の男とかはいるけどね」
 

私はここ数ヶ月の女の子生活をしている内に疑問に感じてきたことをふたりに投げてみた。
 
「気のせいかも知れないけど、女性資格獲得手術と、男性資格廃止手術って実際問題として同じものってことない?」
 
「その問題については100年ほど前に提出されたユキコの仮説というのがあって、実は同じものではという説はある。でも多くの人が検証したところでは、同じものであるということを証明することができなかったんだ」
と秀美は言う。
 
「そうなんだ!?」
「でも実はロミちゃんと、お互いのお股を見比べたんだよ」
「へー!」
 
「違いが分からないよね、という結論に達した」
と秀美。
 
「でもおかげで私も自分はほとんど女の子であるという確信を持てたんだよ」
とロミ。
 
「それで最近ロミちゃん元気なのかな」
「密かに女子1位を狙っている」
「へー!」
 
「女子1位になれたら、お嫁さん資格を得られるから、戸籍上の性別も女にしてもらえるもんね」
「そうなんだよ」
 
女性資格獲得手術を受けた人の性別は戸籍上「女」になる。一方、男性資格廃止手術を受けた人の性別は「男」と書かれていた性別のところが消されるだけで、何も書き込まれない。事実上法的な性別は無い状態になる。
 

「もっとも今のままでも私は男じゃないから徴兵に行かなくて済むけどね」
「それはいいよね」
 
男子の場合は中学を卒業したあと10年間の兵役に行かなければならない。その10年間に1%ほどの兵士が戦死する。
 
「だけど小規模クラス制度がもし成立して男の子がほとんどいなくなったら、軍隊はどうするんだろう?」
「徴兵が居なくなるだけだから問題無いと思うよ。実際問題として現在軍の7割は志願兵だもん。自然減に任せてもいいと思う。実際うちの国は、もう800年戦争やってないからね。軍役は全部海外の紛争地の管理だもん」
 
「事実上社会を女だけで運用しているのが長期の平和につながっているとも言われているね」
 
「でも野党は対案を出しているらしい。さすがに男をゼロにするのはまずいのではないかということで、小規模クラスはいいけど、女性資格獲得手術と男性資格喪失手術をするのは、1学期と2学期のみにしようと」
 
「なるほど」
「すると18人の男子のうち6人は女の子になって、6人は男の子ではなくなって、6人は男の子のままということになる」
 
「まあその程度は男がいてもいいかもね」
「うん。おちんちん付けたまま一生を送りたいって人もいるだろうし」
 

「何かさ、礼央(れお)君、今学期はビリを狙うらしいよ」
「うそ。何で?」
「あの子、本当は女の子になりたいんだって。それでずっと勉強頑張ってたけど、どうしても1番になれないから、いっそビリになって男性資格喪失手術を受けちゃおうという魂胆」
 
「いいの〜?」
「お母さんも賛成してくれたって。それで男じゃなくなった時の名前も付けてくれたって。礼央美(れおみ)にするらしい」
「ああ、彼なら礼子(れいこ)かなと思ってたけど、そういうパターンもあるか」
 
「お母さんから言われたらしい。男の子を育てる楽しみのひとつは、その子を女の子に変える時にもういちど名前を考えられることだって」
 
「確かに女の子から男の子に変わろうという子は少ないからね」
 
性別を変更することなく18歳に達した人は1度だけ自分の性別を変更することが認められているので、年間数百人、女から男に変わる手術を受ける人もあるらしい。女性資格放棄手術と呼ばれるものである。
 
(男から女になりたい場合は女性資格認定試験に合格する必要がある。但し国立大学に入る程度の学力が必要である。女から男になるのは本人の希望さえあれば自由である) 
「うん。男の子だと、だいたい7割くらいの確率で、女の子になるか男の子ではなくなるかだから。礼央ちゃんは礼央美になれたら、お母さんたちは女の子扱いするつもりらしい」
 
「それもいいよね。私たちも女の子として扱ってあげようよ」
「賛成賛成」
 
私たちは礼央ちゃんが良き《女の子ライフ》を送ることができることを祈った。
 
 
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