【ミルなの座敷】(1)

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昔ある所に一人の若い男の猟師がおり、ある日山で道に迷ってしまいました。困っていた時、突然目の前が開け、一軒のお屋敷が現れました。
 
猟師は屋敷の玄関にいって、声を掛けました。中から一人の女の人が出てきました。「こんにちは。私は麓の村で猟師をしている者ですが、道に迷ってしまいました。申し訳ありませんが、麓に降りる道をご存じありませんか?」と猟師は言いました。
 
女の人は「私はあまり出歩きませんので分かりませんが、何時間かしたら夫が帰ってくると思います。そうしたら夫にお尋ね下さい。それまで少しうちでお休みになりませんか」と言いました。
 
猟師は恐縮して、家にあげてもらいました。女の人は彼にお茶など出してくれました。とてもおいしいお茶で、散々歩き回った疲れがすっかり癒されるような気分になりました。
 
しばらくして、どこかできれいな鳥の声がしました。すると女の人が奥の部屋から出てきて「申し訳ありません。ちょっと用事ができまして、すぐ戻ると思うのですが、家を空けなければなりません。しばし留守番をしておいていただけますでしょうか?」といいます。
 
猟師が「いいですよ」といいますと、女の人は「ではお願いします。あ、それからこの奥の部屋は決して見ないで下さいね」と言って出掛けました。
 
しばらく猟師がそのまま休んでいると、奥の部屋で何か泣き声のようなものが聞こえました。何だろうと思いましたが「見ないで下さい」という言葉を思い出して、じっとしていました。しかし、その泣き声はまたしました。そして次第に大きくなっていきます。
 
赤ん坊でもいるのだろうか。と思い、少しあやすくらいはいいだろう、と思って猟師は奥の部屋の戸を開けてしまいました。
 
すると、そこには小さな鳥の巣があり、卵が1個入っていました。猟師は不思議に思って近寄り、その卵をつい手にとってみました。ところがその時、手がすべって卵を落としてしまいました。
 
あっ、と思った瞬間、屋敷はかき消すように消えてしまいました。そしてあたりは真っ暗になり、どこからか先ほどの女の人の声が響いてきました。
 
『なんて人なんでしょう!せっかく家で休ませてあげたのに、私の子供を殺してしまうなんて。仕返しにあなたには、もう子供が作れないようにしてしまいます』
 
猟師は気が付くと、麓の村のはずれに立っていました。訳が分からないまま彼は自分の家に帰り、しばらくぼーっとしていましたが、そのうち尿意を覚えてトイレに行きます。そしてその時初めて「あっ」と声を上げました。
 
おちんちんもたまたまも無くなっていました。
 
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【ミルなの座敷】(1)